りょーち的おすすめ度:

こんにちは、青空トップ・ライトこと、コロムビア・トップライトです(嘘です)
作家の印象は初めて読んだ一冊に左右されることが多い。なかなか良い作品を書くと評判の作家でも、その一冊で「うーむ、なんだか・・・ どうしたものか?」と一度訝しがってしまった作家の本はその後、手にすることはあまりない。逆に「おっ、この本いいじゃん!」と思った一冊に出会えたときは「またこの人の小説を読んでみようかな?」という記にさせる。人間と同じように第一印象が作品を含めた作家の印象を左右する。さて、浅倉卓弥という作家はどうか?
「四日間の奇蹟」を読んだりょーちの第一印象は「この人は綺麗な文章を書くねえ」であった。綺麗な文章で書かれたこの小説。ホントに素敵な一冊である。
「四日間の奇蹟」は映画化もされ、世間的にもかなり注目を集めた作品である。
ストーリーは凄く簡単に書くとこんな感じ。
楠本千織という障害を持つ少女と、事故により指を負傷し、ピアノが弾けなくなった如月敬輔が山奥の診療所で体験した奇蹟の物語である。(簡単すぎる・・・)
楠本千織は先天的な障害により、知識・言語能力が幼稚園の子供にも劣るのだが、ピアノの才能だけは突出していた。所謂サヴァン症候群なのであろう。サヴァン症候群については、「なぜかれらは天才的能力を示すのか―サヴァン症候群の驚異」という書籍があるようなので詳細はそちらに譲るが、本書のモデルになった(と思われる)書籍に「奇跡のピアニスト」があるので興味のある人はそちらをご覧頂きたい。
本書が数多くの読者から高い評価を得ている理由として幾つか挙げられるが、ひとつはこの小説は敬輔の視点から見た物語であり「僕」という一人称で全て語られていることだろう。なので、厳密に言えばここで起こった奇蹟は敬輔が体験した奇蹟と捕えてよいだろう。
敬輔と千織が出会ったのはオーストリアだった。日本人の親子を狙った強奪犯と遭遇した敬輔はその少女を庇い銃で撃たれ手を怪我してしまった。そのときの少女が千織なのだ。千織さえいなければ自分は指を失うこともなかった。ピアニストとしての道を絶たれることもなかった。何度もそう思った。
帰国後、敬輔は事故で両親がいなくなった千織の面倒を見ることになった。そして敬輔は一度聞いた曲を間違うことなく弾くことができるという千織のピアノの才能を眼にしたのだ。以降、千織のリハビリも兼ねていろいろな場所で千織にピアノを弾かせて歩くようになったのだ。
千織とその日向かったのは山奥にある小さな診療所だった。そこでは偶然敬輔と同じ高校にいたという岩村真理子が働いていた。真理子のことを敬輔は知らなかったのだが、天才ピアニストとして注目されていた敬輔のことは、真理子以外の殆どの生徒がその存在を知っていた。当時、真理子は他の女生徒同様、敬輔に憧れていたようだ。真理子は一時結婚していたのだが、自分が子供を生むことができない体であることが原因で離婚していた。
真理子と敬輔が出会ったその日、事件は突然起こった。
千織と真理子が診療所の外で話しをしていたとき、突如、雷鳴が轟き、上空を飛んでいたヘリコプターが千織たちを目掛けて墜落してきたのだ。真理子の方は全身に火傷を負い、意識不明の重体だった。幸い千織は軽い怪我で済んだようだが、千織も医務室へ運び出された後、意識が戻らなかった。
先に覚醒したのは千織だった。意識を取り戻した千織と話した敬輔は千織に言い表せない違和感を覚えていた。そして千織は敬輔に驚愕の事実を話し始めるのだ。「自分は真理子だ」と。
自分を真理子だと主張する千織の話しは俄かに真実とは受け取ることはできなかった。ヘリコプターの事故の衝撃で真理子と千織の心が入れ替わってしまうなど実際はありえないはずなのだが、敬輔は千織がここまで言葉を巧みに操り、しかも真理子しか知らない事実などが話されているため、この事実を受け入れるしか選択の余地はなかった。そしてその事実を仮に受け入れるのであれば千織の心は重症の真理子の体にあることに気づいた。
残された時間は少ない。重症の真理子の体は助かるのか? 真理子と千織の運命は? そして最終日に起きる奇蹟とは・・・
序盤、千織と真理子の心が入れ替わるまでのストーリーの運び方が実に見事だ。新人離れした筆力で最後まで感動を伴って読ませてくれる。浅倉卓弥はこの「四日間の奇蹟」で2002年度に行われた「このミステリーがすごい!」の金賞を受賞している。本書が凄いのは映画化されたとは言え、演歌並みのロングセラーを誇っていることだ。
しかし、ちょっと異論を唱えたい部分もある。
これって「ミステリー小説か?」
確かにストーリーは素晴らしく、感動もした。泣けるツボも押えていた。文章も非常に上手く「小説」としては問題なく傑作だといってもいいであろう。しかし、「ミステリー小説」としては殆ど反則すれすれ(いや、反則?)ではなかろうか? ただたとえ「このミステリーがすごい!」に選ばれていなくても読んでおいてよかったなと思わせる一冊である。(ある意味この作品がミステリーとして受賞されるという「このミステリーがすごい」も凄いよ)
なお「人の心が入れ替わる」という部分だけに着目すると、大林宣彦が映画化した尾道三部作の中の「 転校生 」が有名だ。原作は山中恒の「 おれがあいつであいつがおれで 」である。地元の高校生一夫(尾美としのり)と転校してきた一美(小林聡美)のが神社の階段から転げ落ち、心と体が入れ替わってしまうストーリーだった。「 転校生 」では一夫と一美の二人は入れ替わったことに悩みながらも最後は二人は入れ替わった自分を受け入れてそのまま生きていこうとする。最終的に二人の心と体は元に戻り一夫こと尾美としのりが今度は転向していくのだった。
「四日間の奇蹟」では二人のうち一人が死の間際に立たされている。一人が入れ替わった体の人生を生きることを選択したとしてももう一人はこの世から心が消滅してしまうのだ。このあたりのシチュエーションが読者を釘付けにし、エンディングの感動へと誘う下地となっているようだ。
浅倉卓弥は1966年、札幌生まれ(東京大学文学部卒)。本書を書き上げるまでに費やした日数は骨子が3ヶ月くらい、作品としては半年くらいで書き上げたらしい。全く以って凄い。
なお、全く関係ないが 社団法人 落語芸術協会 によると、本日2006年1月16日、ローカル岡さんが、肝硬変のため死去されたようです。いい芸人さんだったのに・・・ 謹んでご冥福をお祈り致します。


確かにこの本って「ミステリー?」って感じですよね。
私も同じところに疑問を感じました。
「このミス」の大賞になるには、あまりふさわしくないような気がします。(^_^;)
作品としてはとてもよかったですよね。
きれいな言葉と雰囲気で、とても楽しめた一冊です。
他の作品も読んでみたいと思わせる作家さんですよね♪
コメントいただきましてありがとうございます。
文章が綺麗なんですよねー。新人離れしていてホントに上手いと唸らされます。
もうブームも過ぎ去った今頃読んだのですが、何時読んでも、良いものは良いと感じさせる一冊でした。
ではでは。
小説はあまり読まない方なのですが、映画を見てから原作を読んで、やっと納得がいったという感じです。映画では最後に千織の両親が療養所に寄付をしたときのモチーフが描かれているんですが、原作読んでいないと分からないので、原作を読んで納得行きました。
映画も角島の風景が綺麗で、見終えた後はなにかもっともっと美しい者を求める求道者のような気分になりましたよ。
また、寄らせてもらいますね。ではでは。
コメントいただきありがとうございます。
映画をご覧になってから原作を読まれると後から、「ああ、そういうことだったのか」と納得することが出てきたりしますよね。
>見終えた後はなにかもっともっと美しい者を
>求める求道者のような気分になりましたよ
そーなんですかー。りょーちは映画の方は拝見していないので機会あったら是非DVDなどでみてみたいと思います。
ではでは。