奥田 英朗
角川書店 (2005/06/30)
売り上げランキング: 1,302
角川書店 (2005/06/30)
売り上げランキング: 1,302
おすすめ度の平均: 

やっぱりすごい人だ……。
無駄な正義感をお持ちの方へ
奥田の筋の通し方りょーち的おすすめ度:

こんにちは。ネーネーズの古謝美佐子です(激しく嘘です)。
前回感想を書いた藤崎慎吾の「ハイドゥナン」に続き、またもや沖縄が舞台のお話し。「ハイドゥナン」が沖縄の神秘的な「陰」の部分を表現していたのに対し「サウス・バウンド」は沖縄の「陽」の部分をみせてくれる。どちらにも沖縄の古い歴史について書かれたページがあり、沖縄に行ったことのないりょーちとしては非常に興味深い。この寒い季節、沖縄が舞台の小説を読むことでちょっと暖かい気持ちに・・・(ならないか?)
2004年に「空中ブランコ」で直木賞受賞後の第一作ということで奥田英朗も気合が入っていると思われる。岐阜県出身の奥田英朗にとって沖縄という地は興味深く映ったのではなかろうか? ご存知の通り岐阜県は周囲を別の県に囲まれ海がない。少年時代に海のない土地で過ごしたと思われる奥田英朗が何故こんなに巧みに少年の視線から見た沖縄を表現できるのか?全く以ってスバラシイ。
上原二郎は中野付近に住むフツーの小学生。年頃の小学生を惹きつけて止まないアイテムが沢山あり、プチ秋葉原とでも呼べるほどのカルトなもので溢れかえっている中野ブロードウェイが二郎の遊び場だ。そんな都会的な小学生の二郎の家族はなんとも複雑である。
父の一郎は自称フリーライターだが元過激派のリーダ的存在。この父、一郎は小説の中で存在する分にはよいが自分の周りにいるとちょっと困るかなと思われる特異なキャラ。体制に与することなく生き、二郎には「学校なんぞ行かずともよい」と命令する始末。母のさくらは実は逮捕歴があることが判明。姉の洋子は職場の上司と不倫中。小学四年生の妹の桃子のみが唯一一般的な観点から「まとも」と呼べるだろう。
この小説、何がスバラシイかと言えば二郎のキャラクターであろう。一見、風変わりな父一郎のキャラに目がどうしても向いてしまうが、普通であることを表現するのは意外と難しい。二郎はどこにでもいる小学生なのだが、この二郎が中学生の不良のカツに立ち向かう様子や、いやいやカツの仲間になっている同級生の黒木との男と男の会話など、この年代の少年が一度は立ち向かうと思われる壁を乗り越える描写がスバラシイ。
物語後半には、二郎親子は沖縄に移住することになる。前半部分の父、一郎はどちらかと言えば「口先だけで行動が伴っていない」ような印象だったが、後半の一郎の活躍はなかなかである。そしてその母さくらもこの夫にしてこの妻ありといった胆の座った一面を見せる。
はじめに読んだときは「前半部分の東京の話しがかなり良く、後半部分はなくてもよかったのじゃないかな?」と思ったりしたのだが、2回目に読んだときには、この後半が家族の絆を一層深めるよいエピソードだったのかな?と思ってきた。
後半の二郎が中野で気になっていた女の子のサッサに書いた手紙や、沖縄の学校で「アカハチ物語」を朗読するシーンは二郎の成長を垣間見た気がしてホロリとさせられます。
そういえば、琉球の地からパイパティローマにむかったさくらと一郎のシーンは藤崎慎吾のハイドゥナンのエンディングに重なるよーな気がするね。
ちょっと気分が滅入ったときに読むと元気になれる一冊であろう。

