りょーち的おすすめ度:

こんにちは、ミスDJでお馴染みの千倉真理です(嘘です)。
やっと、彼奴(きゃつ)が戻ってきましたよ! 待ち遠しかったなー。
「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」で登場した伊良部一郎が今度は有名人を診察? 名前は勿論ズバリとは書かれていないが、有名人との夢のコラボレーションが実現です。相変わらず、医師と思えぬ発言および傍若無人且つ傲岸不遜な態度のこの伊良部一郎。有名人を目の当たりにしてもマイペース。隠れた名医として
ベストドクターズ に掲載されるんじゃなかろーか?
本書は表題の「町長選挙」の他に「オーナー」「アンポンマン」「カリスマ稼業」という4つの作品が収録されている。
最後の町長選挙だけは東京都管轄のとある離島内での選挙の話しだが、それ以外は普通の日本人が読んで、登場人物のモデルとなる人物が直ぐにわかる。一応書いておくと
・「オーナー」:読売新聞グループ本社社長の渡辺恒雄(ナベツネ)
・「アンポンマン」:livedoor前代表取締役社長兼CEOの堀江貴文(ホリエモン)
・「カリスマ稼業」:元宝塚歌劇団女優の黒木瞳
うーむ。この面々と伊良部の一騎打ち。考えるだけでも恐ろしい・・・
以下に4つの作品を触りだけちょいと紹介してみよう。文章中の固有名詞の後の()内はモデルとなったと思われる固有名詞・人物名を記載してみるよ。
「オーナー」東京グレートパワーズ(読売ジャイアンツ)のオーナーである、大日本新聞(読売新聞)社長の田辺満雄(渡辺恒雄)は新聞社の社長というだけでなく政財界に幅広く影響力を持つ。自身がマスコミの社長ではあるが、マスコミに諂うことを嫌い、1リーグ制導入を容認する発言で選手会およびファンにも嫌われていた。ナベマンというどっかの料亭のよーな渾名を付けられ連日マスコミの取材攻勢に合っていたが、ある日突如として暗闇が怖くなってしまった。
医者に見てもらうことを決めたナベマンは知り合いの日本医師会の委員長でもある伊良部総合病院の医院長に連絡を取り付けた。てっきり自分のレベルなら自宅まで往診してくれるものと信じて疑わなかったのだが「いやだよーん」と拒否されてしまう。
普通なら通院などありえないのだが、外出先の通り沿いに伊良部総合病院があったため顔を出してみることにしてしまった。
伊良部の元を訪れたナベマンは伊良部が自分に敬意を示さないどころか、命令口調で問診をすることに立腹していた。更に「例の」マユミちゃんの「とりあえず注射」を不覚にも打たれてしまう。
当然のように伊良部に憤りを覚えたナベマンはパニック障害を忘れようと努力するが症状は更に悪化する。
そして、旧知の会社社長の退任パーティに参加した際、会場で伊良部の姿を見かける。伊良部は大勢の前で「パニック障害、なおった?」とわけのわからないことをごちてナベマンをあたふたさせる。が、パーティの帰り取材にあった際、またもやパニック障害に・・・
果たしてナベマンは病気を治せるのか?
エンディング付近はいつの間にか「イイ話し」になっているところが上手いよ。
「アンポンマン」ITベンチャー企業ライブファスト(ライブドア)社長の安保貴明(堀江貴文)は今や飛ぶ鳥を落とす勢いでその事業を拡大しており、テレビでその姿を見ない日はない。安保貴明という名前より、世間的にはアンポンマン(ホリエモン)(≠アンパンマン)という呼び名が浸透している。そんな安保は「稼いで悪いか?(
稼ぐが勝ち )」のサイン会でひらがなの「ま」が書けない自分に気づいた。秘書の美由紀(乙部綾子)は字が出てこない安保の様子を以前にも見ており一度治療を受けるように勧めていた。
美由紀の進言もあり、安保は伊良部総合病院に出向いた。キーボードがなければひらがなさえも書けなくなった安保への伊良部の診断は若年性アルツハイマー。IT業界の寵児とも呼ばれるアンポンマンは診断内容を甘受できるわけもない。非生産的な作業は安保は最も不快視するため、ひらがながかけなくても何の問題もないと判断し、業務を続けるが公開討論テレビ番組に参加しても文字が浮かばない安保。状況はますます悪化している。
そして治療のため(?)に伊良部が安保を連れて行ったところは・・・
最後にキチンとアンポンマンが自信を取り戻すのはこのシリーズの定番なのだが、ホリエモンの現況を考慮すると今となっては、ある意味自信を取り戻さない方がよかったのかも・・・
「カリスマ稼業」主婦の間でカリスマ的な存在となっている、白木カオル(黒木瞳)はこのところ寝つきが悪く、マネージャーの久美に精神安定剤を貰うように依頼した。久美はバンド仲間で精神科の看護婦を務めている友人がいるので貰ってくることにしたが、その友人こそがなんとマユミちゃんなのだ(あーあ)。久美はクスリを貰ってくるため伊良部総合病院にいったのだが、注射を打たれて帰ってきた。自然体が売りの白木であったが、寝付けないのと同時に最近痩せなくてはいけないという強迫観念に囚われていた。午前中人前で過食気味に食べたお菓子を消化すべくどこか運動できるところを探していた。そしてたどり着いたのが伊良部総合病院だった。
白木は早速エクセサイズマシンを病院内で組み立て運動を開始する。普通なら「何やってるの?」というところであるが、伊良部はこともあろうにそのマシンを白木から取り上げて自分で運動しはじめた。伊良部に暴言を吐いて病院を辞した白木だったが、ふと我に返ると自分でも精神的におかしいなあと思い始めていた。
数日後、白木に熱血大陸(
情熱大陸 )の取材が舞い込んでくる。自然体であることを見せようとした白木だったが、ひょんなことから伊良部総合病院の精神科に通っていることがばれてしまう。白木は次回の役作りのためと取り繕ったが是非とも取材したいとのオファーを断りきることができず、撮影クルーと一緒に伊良部の元を訪れてしまった・・・
このラストもなかなか秀逸である。白木もこれで肩の荷が下りたことであろう。
でも、伊良部の功績というよりもマユミちゃんの活躍じゃないのか?
「町長選挙」この町長選挙のみ、有名人っぽい人が登場してこない。
東京から数時間かけて船を乗り継いでやっとたどり着く離島、千寿島。ここでは小倉と八木という農業と土建屋という二者が有力者であり、日々熾烈な戦いが繰り広げられている。その千寿島に東京都の職員として就職した宮崎は離島研修ということで赴任してきた。
千寿島では町長選挙の真っ只中であり、役場でもその話題で持ちきりである。この島では小倉か八木かどちらについているかによってその後の待遇も変わってくる。宮崎もその例に洩れず、両陣営からどちらにつくのかはっきりしろと言われ困惑気味である。
そこに、父の意向(と見栄)により2ヶ月間千寿島に赴任することになった伊良部と日給3万円で離島赴任を受け入れることになった、マユミちゃんがやってくる。小倉、八木両派は伊良部の父が医学会での重鎮であることを知り、実弾(賄賂)攻撃に走る。
宮崎も両陣営から実弾を掴まされ、悩んでいたが、貰えるものは貰っちゃえという伊良部の発言に少なからず心が揺れる。
前回の選挙結果は5票差という僅差だったため、小倉・八木も死に物狂いだった。選挙で重要となる浮動票として両者で読めていないのは島に住む老人達であった。千寿島の老人達はしたたかで「自分達に最終的に利益をもたらす公約を掲げる方に投票する」と最後までどちらに着くか表明していなかった。一方老人の心を最も掴んでいたのは、実は伊良部だった。伊良部は病院で特に治療をするわけでもなく、老人達の話し相手になっていただけであったが、それが老人達には嬉しかったようだ。小倉、八木達は老人達の浮動票を確保すべく、更に伊良部に接触を図る。
ヒートアップした島を伊良部は治療できるのか・・・
「総論」伊良部と時の人達の会話も想像していてかなり可笑しかったが、やはり表題の町長選挙のノリが本来の(?)伊良部なのかなーと思う。
5年後に再度「町長選挙」を読んだときには()の中の人が置き換わっているかもしれないっすねー。
しかし、伊良部一郎の産みの親、奥田英朗は凄いっす。このキャラをどう見せるかというところにかなり神経を割いているのではなかろうか?伊良部は既に奥田英朗の机の上から飛び出して一人歩きを始めているように思う。
全編一話完結のお話しなので、今まで「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」を読んでいなかった人でもこの「町長選挙」から読んでみても全く問題ないっす。
兎に角オススメです。
「伊良部先生、お帰りなさい!」という気持ちで一杯っす。
■他の方々のご意見:(みなさん、満足度はかなり高い?)
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