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こんにちは、ヒライケンジです(嘘です)。
宮部みゆきさんの「楽園」はあの「模倣犯」で登場したフリーライター前畑滋子の話し。しかし、模倣犯とは全く関係のない話しである。ただ、模倣犯の話しが幾つか出てくるので、読んでおいたほうがより楽しめると思われる。
で、読みはじめて「これは、『模倣犯』と『龍は眠る』を足したような作品なのかな?」と思った。
本書は「模倣犯」のあの事件で、犯人のピースと戦った後の前畑滋子の後日談というふうに読めなくもない。「模倣犯」の事件で一躍有名人になった滋子だが、滋子はあの事件の後「模倣犯」に関する本などは出版していないらしい。風評被害というわけでもないのかもしれないが、あの事件で燃え尽きたような滋子がそこにいた。現在は知人の出版社で働かせてもらっている滋子を一人の女性が訪ねてきた。その女性、萩谷敏子は死んだ息子の等が残した絵について調べて欲しいとのことだった。
正直、今の滋子にとっては乗り気とはいえない依頼であった。
しかし、等の残した絵の一枚には9年前の山荘でのあの事件関係者と警察しか知りえるはずのないものが書かれていた。等ははたして超能力者なのか?
更に事件を調べていくうちに、等の絵に残された蝙蝠の風見鶏が元になり、土井崎茜の事件に遭遇する。実の娘を殺め、娘の亡骸を自宅の地下に埋め、16年間そこで生活してきた、父、土井崎元と母、土井崎向子はどういう気持ちだったのだろうか。
土井崎茜は手の付けられない不良娘だったことは事実のようである。
しかし、茜の妹の誠子には実の親がどういう思考で姉に手を掛けたのか理解できなかった。
等の絵を中心に、萩谷敏子は息子を、土井崎誠子は姉の死を、前畑滋子はあの山荘の事件を夫々の思いで振り返る。本書は犯人が誰とかそういうストーリーよりも、この三人の女性が過去の事件を自分の中でどうやって受入れ、未来へと進むのかというのがポイントのよーな気がする。
本書ではこの三人の内面、心理描写にかなりのページを割いている。
多分、普通の推理小説であれば、上巻だけで完結するくらいのボリュームだと思う。しかし、読み終えてみると「1冊で終わる話しを2冊に薄めた」という感覚はあまりない。
しかし、長すぎるなあというのが正直なところ。「楽園」は、産経新聞に連載されていた新聞小説らしいが、それにしても些か冗長すぎやしないだろうか?
「模倣犯」の登場人物が何人か登場しますが、「模倣犯」を読んでいない人でもこの「楽園」から読み始めることはできるっす。逆に「楽園」から読み始めて滋子の前の事件についていろいろ知りたいようであれば、「模倣犯」を読むってのもありだと思われる。
しかし、最近リアルで物騒な事件が多く「現実が小説を越え始めた」という感じが本当にし始めました。不可解かつ不条理な事件が起こるたびにこういう話題が取り沙汰される。警察における日本の犯罪の検挙率もこのグラフ h19.1-9hanzai.xls を見る限りでは上がっているようには見えない。難しい問題じゃのぅ。
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