受験のシンデレラ (小学館文庫 わ 8-1)
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和田 秀樹
小学館
売り上げランキング: 6317
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おすすめ度の平均: 





りょーち的おすすめ度:

受験勉強を題材にした漫画や小説は結構ある。漫画で言えば「ドラゴン桜」が思い浮かぶ(WikipediaにCategory:受験漫画ってのがあるのか・・・)。(とどろけ!一番はちょっとすごいな・・・)。ドラマだと「中卒・東大一直線 もう高校はいらない! 」とか「家族ゲーム」とかも受験が中心となった構成だね。
本書もカテゴリーとしては「受験小説」という位置づけなのかもしれない。読むと分かるが結構現実の受験事情に近いと思われるリアリティを上手く出している。
余命僅かな有名塾講師と高校中退で母子家庭で貧乏生活を送る女の子が東大合格を目指すっていうストーリー。著者の和田秀樹は東京大学医学部医学科を卒業し、医師国家試験を取得し、精神科医を営んでいるという面もあり本書では「受験」というテーマだけでなく「終末期医療」という別のテーマも持っている。
五十嵐透はミチター・ゼミナールという大学入試向けの塾を経営している。ミチターゼミナールでは毎年東大合格者を何人も輩出しており、五十嵐は受験生の中で「受験の神様」と崇められる存在にまでなっている。ビジネスとしてもかなり儲かっており、順風満帆と思われた五十嵐だったが、がん検診により、がんの疑いがあることを同級生から告げられる。
一方、もう一人の主人公、遠藤真紀は両親が離婚し、金銭的な面から高校を中退していた。
真紀の母は生活保護目当てで働く気は全くなく男と遊び歩き酒をかっ喰らう毎日。家のことは全て真紀がやらなければならず、生活費も真紀がアルバイトで稼がなければならない。
貧乏な真紀は99円ショップで商品を3つ買おうと思ったが、手持ちには310円しかない。99円ショップでも消費税がかかるので、合計は
( 99円 × 3 ) × 1.05 = 297円 × 1.05 = 311.85円 ≒ 311円
なのだ。つまり1円足りない。で、どーするかといえば、3つ別々に買うのだ。
99円 × 1.05 = 103.95円 ≒ 103円
103円 × 3 = 309円
消費税は切り捨てで計算するので、こういうことがおこるのだが、これを瞬時に思いつくほどの頭のよさはあったのだ。今後、この方法を使えば99円ショップで常に安く商品を買うことができると気づいた真紀は再度訪れた99円ショップで店員ともめていた。そのとき、偶然マーブルチョコレートを買いに来ていた五十嵐と出会うのだ。時間のない五十嵐は店員と真紀がもめているのに腹を立て、真紀の分まで代金を払うといい、店を去って行く。しかし、真紀はそんなことをしてくれと頼んだつもりはないと五十嵐を叱責する。これが二人の初めての出会いだった。
真紀と五十嵐の二度目の再会も偶然だった。
真紀の彼氏の雄太は「20万円貯めると結婚してくれる」約束だったが、貧乏の真紀にそんな大金を用意できるはずがないと思った雄太の口実だった。真紀は雄太にとって「便利な女」でしかなかった。結局真紀は雄太に捨てられてしまう。落ち込んだ真紀は母と離婚した父の元に足を運ぶが父には既に新しい女がいた。更にショックを受けた真紀は自棄になり、売春行為に走る。
一方五十嵐はがん検診の結果が悪性だったことを告げられる。五十嵐も自棄で女子高生を買おうとしていた。そこでまたもや偶然二人は会う。
五十嵐は自分の短い命をこの真紀に託し、真紀を東大へ合格させようと決めるのだ。
東大を目指す理由は貧乏から抜け出す。これしかない。五十嵐は残り少ない命を真紀を東大に合格させるために、自分の持つ受験テクニックを教え込むことにした。
翌日から二人の勉強が始まる。五十嵐の考えはこうだ。真紀が東大に入るための勉強時間を2000時間とする。東大に入れれば、平均5億の生涯収入を勝ち取れると見積もる。今の真紀では今後どんなに働いても生涯収入は1億円を下回るだろう。つまり、真紀が今から2000時間勉強するという行為は差額の4億円を勝ち取る行為であり時給20万円のバイトなのだと。
果たして真紀は東大に受かるのか?
受験テクニックに関する多くの薀蓄も読みどころの一つだが、真紀と五十嵐の絆が試験が近づくにつれ深まっていく過程がラストの涙を誘うね。
なお、この「受験のシンデレラ」は映画化もされている。
和田秀樹 初監督作品『受験のシンデレラ』公式サイト
遠藤真紀:寺島咲
五十嵐透:豊原功補
主題歌:星野みちる『ガンバレ!』(元AKB48)
五十嵐役は豊原功補ってのは結構あっているような気がしてよろしいね。病魔と戦う五十嵐の角が丸くなってやさしくなっていくところがいいね。
寺島咲ってどっかで見たことあると思ったら宮部みゆきの「理由」に出ていたんだねー。「片倉ハウス」の長女片倉信子役だったんだね。ふむ、あれは確かによかったな。
作者の和田秀樹さんが監督をやるらしいがどうなんだろうなぁ。小説は結構よかったので是非映画も成功してほしいところである。