りょーち的おすすめ度:

なかなかよかったです。やはり貫井ワールドとでもいいましょうか、一筋縄ではいかないヒネリが加えられています。
若者の自殺のニュースを見ても最近は「あー、またかー」などとちょっと感覚がマヒしていて「いかんよ、キミ」と窘められそうだが、それほど多くの人が世を儚んで自ら命を絶っていく。
いろいろ理由はあるのかもしれないが、本書の登場人物の青木優馬も中学2年という若さで自殺をする。自殺の数時間前に父親の青木と若者が自殺したというニュースを見ていて「自殺する奴はバカだ」と言っていた優馬の自殺に青木は悲しみと同時に困惑していた。何故、優馬は自殺したのか? 息子の死に疑問を抱いた青木は優馬の友人などに話しをいろいろ聞いてみるが優馬の友人も後を追うように自殺していく。
優馬のクラス担任の女性教師の光岡や優馬と親しくしていた同級生の常盤暁子などの情報からも芳しい成果は上げられなかった。
そんなとき、自宅に「郵便受けを見ろ」という不審な電話がかかってきた。郵便受けを青木が確認するとそこには生前の優馬が女性と絡み合っている衝撃的な写真が送られていた。電話の主はその写真の状況を移したビデオを100万円で買えという。強請りの電話だった。
青木は指定の場所に行き電話の主と遭遇するが逃げられてしまう。
りょーちはここまで読んで「優馬の死の原因はこれだったのかー」と思ったが、真実は「○○○」だったことが明かされ「そーなのかー」とちょっぴり感心してしまったのだが、同時に「実際、本当にそーなるのか?」とも思ったりした。
でも、物語の完成度はかなり高いと思うし、小説内での論理の破綻も勿論ない。
リアリティがあるかどうかといわれれば「はい」とも「いいえ」ともいえないが、問題は本書を読んだ大人が若者の自殺や若者だけのコミュニティ若者の考えを汲み取ろうとしたりわからないなりに考えたりすることが重要なんじゃないのかなと思った。
ってことで一時は「そんなことあるか?」と思ったけど本書を読んでいろいろ考えさせられるところがあった。小説とはそういうものではないかなぁ・・・ だからリアリティがあろうがなかろうがこれでイイのである。
貫井徳郎さんは結構時代に沿ったテーマや今思えば時代を先取りしたテーマを取り上げており社会に対して良質なアンテナを持っている。そして良質なアンテナから得た情報に自分なりのエッセンスや解釈を付与し世の中に送り届けている。小説家だったらあたりまえじゃんとも思うが、アンテナの質やそのアウトプットの方法によって作家としての質が決まってくるわけで、貫井徳郎さんがここまで様々な世代の人々に受け入れられている理由として貫井徳郎さんというフィルターを通して見た社会が世の中の本質的な部分をかなり言い当てていることの表れなのかなとも思った。
あと、BlogPeople上にトラックバックピープルとして貫井徳郎さんの話題を立ち上げていますので、http://member.blogpeople.net/TB_People/tbp_1047.htmlも見てくださいねー。
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です。
今後も期待していいですよね。貫井さん。