2005年09月27日

高橋秀実:「はい、泳げません」 このエントリーをはてなブックマークに追加

はい、泳げません
はい、泳げません
posted with amazlet on 05.09.27
高橋 秀実
新潮社 (2005/06/23)
売り上げランキング: 2,546
おすすめ度の平均: 4.75
5 おかしくて先がよめません。
5 クスクス笑いのツボを強く刺激する本
4 水泳ってなんでしょうね。


高橋秀実さん作品一覧

りょーち的おすすめ度:お薦め度お薦め度

こんにちは。ホキ徳田です(嘘です)。

突然ですが、あなたは25m泳げますか?
全く関係ないがりょーちは小学校3年生まで殆ど泳げませんでした。クロールを練習していたのですが、息継ぎとやらがまるで出来ず、どこで息をするのか空気が読めず子供心に「これは一生泳ぐのは無理?」とカナヅチの烙印を押されるのを感受していたのですが、平泳ぎという泳ぎ方を知り、更に知ったその日に50mくらい泳げるようになったので、「もう、クロールはいいっす」と挫折した口です。
平泳ぎなら疲れるまで延々と泳ぐことができるのですが、クロールでは未だに25mは無理っす・・・orz

本書、「はい、泳げません」の作者も今まで泳ぐことが出来ずにこれまでの人生を過ごしてきた。で、「泳げるようになるぞ!」と、何故か一念発起してスイミングスクールに通うことになる。
この作者、40代にもなって何故泳ぎを覚えようとしたのか・・・
そもそも作者は「地震でもないのに、ゆらゆらするのは普通ではない」とたくさんの水があるのを目の前にすると足がすくむ人。
気持ちは分からなくもないが少し大げさだなあと思い読み始めたのだがかなり感情移入できた。本書はタイトル買いだったのだが、かなり面白かった。只者ではないっす、この高橋秀実(たかはしひでみね)という人。
高橋秀実は間違いなく、現在世界で生きている人の中で最も「泳ぎ」について考察しただと思う。
この本は作者が「泳ごうとするまで」から「実際に泳ぐまで」の体験記でもあるが40代の男性が何か新しいことにチャレンジするという奮闘記としても読み取れる。

作者の語りがかなり軽妙で面白いことと、水や泳ぎに対しての様々な比喩(言い訳とも言う)を読むだけでも抱腹絶倒モノだ。りょーちとしてはノンフィクションでは今年1番の収穫だった。そしてこの作者を知ることができて少し得した気がした。(自動販売機で120円入れてコーラを買ったけど実は110円だったので10円おつりが来た気がする程度のお得さ加減かもしれないが・・・)

作者はスイミングスクールに通い、泳ぎを練習する。スイミングスクールにはインストラクターの先生がいて泳ぎを教えてくれる。本書を読んで最も感心したのがインストラクターの女性コーチ高橋桂先生(この人も高橋さん)の行動・言動である。
この桂さん、かなりすごいっす。TBSで昔放映していた「笑ってポン」の桂プロデューサ(謎の番号209)とは天と地との差もあると思われる。(謎)
作者が水が怖いことを桂コーチに告げると、コーチは「胎児の頃、お母さんの羊水の中で。その時のことを瞑想してみて」などと少し哲学的な発言で切り返す。この桂コーチ、泳ぎに対しての教え方・比喩・表現にかなりの語彙を持ち、生徒一人一人に適したアドバイスを投げかけてくれる。
時には押し、時には引くという駆け引きのようなものも随所に読み取ることができる。
桂コーチの哲学的とも言える「泳ぎ」に関する考え方を読むだけでも勉強になる。

本書はこの桂コーチがいなければ成立しないほど重要な鍵を握っており、この桂コーチと作者高橋秀実の小気味よい会話のキャッチボールが本書の読みどころである。

「溺れる人は藁をも掴む」というが、作者も泳ぎに関して様々なアプローチを見せてくれる。時に、「それは少しベクトルが違うのでは・・・」と突っ込みたくなるのだが、そこがまた痛快。
作者の掴もうとする藁は藁の中でも水を十分に吸った沈みかけた藁だったりする。(何故に日本泳法に手を出す・・・)
お読みいただくと分かるのだが読んでいくにつれ作者が泳げるようになるかどうかについてはどうでもよくなり、水泳指導論や泳ぎについての考え方などに興味が沸いてくる。読者を最後まで飽きさせない高橋秀実の筆力にも注目っす。

そして、スポーツインストラクターという方々の仕事は凄いなあと感じる一冊でもありました。インストラクターの方は(おそらく)その殆どの方々がスポーツが得意だったり好きだったりしているのではなかろうか?
そんなスポーツお得意集団の懐に私のよーな運動神経が皆無のシロートが「泳ぎたい」などとノコノコやってくるわけだ。で、インストラクターの人はおそらくいろいろ教えてくれたりすると思うのだが、心の中では「お前は何故、そんな簡単なことさえもできないのだ」的な岸壁を這うフナムシを見るような目を一瞬してしまい、ふと我に返り、「いやいや、彼も人の子。ここはビジネスと割り切って」などと日々葛藤されているのではなかろうか?(全く違うか?)
そんな、りょーちのよーな人々にも優しく手を差し伸べて小学生に九九を教えるが如く文字通り手取り足取り教えてくださる。アガペーがないとできないっすよ、インストラクターのお仕事ってのは(きっと)。
で、できない生徒を持ってストレスが溜まると、スポーツで発散したりするということなどをしているのでしょうか? プログラマーに例えれば「A社のなんとかシステムのプログラミングの納期が近づいてストレスが溜まったので、現実逃避でちょいと趣味のプログラムでも書いてみるか」的なオカルトな行為に近いものがあるのでは?(これも想像)

なお、あとがきに記載してあったのだが作者の通ったスイミングスクールは東京・南青山にある リビエラスポーツクラブ のスイミングレッスンらしいがWebサイトを見た限りでは、今は桂コーチのお名前はないようである。本書が登場して有名人になっているかもしれないので意図的に名前を出していないだけかもしれないっす。

って、ここまで書いて、ふと「高橋秀実ってどんな顔してるのかな?」と思い、ぐぐってみたところ、 おすもうさん | Web草思 にて写真発見。

インパクトある風貌っす・・・
本書の印象からはかなりダメ人間っぽい面貌を予想していましたが、中学校の音楽室かロシアのブルジョアっぽい邸宅内に飾られていそうなご立派なお顔立ち。(そ、そんな。そーだったんですかー)

本書は「水泳のマニュアル」ではないっす。どちらかと言えば「人生を楽しく謳歌するためのマニュアル」という位置づけだと思う。人間何事もチャレンジが必要だったりする。年を重ねるごとにそのチャレンジ精神は失われがちになる傾向にあるが、そんな人にも是非本書を手に取り、爆笑して何かにチャレンジしてほしいっす。
posted by りょーち | Comment(10) | TrackBack(4) | 読書感想文

2005年09月22日

貫井徳郎:「被害者は誰?」 このエントリーをはてなブックマークに追加

被害者は誰?
被害者は誰?
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貫井 徳郎
講談社 (2003/05)
売り上げランキング: 60,957
おすすめ度の平均: 3.75
4 貫井氏の新たな一面
3 じっくりと読み解くミステリー
4 ユーモア感溢れる作品です。


りょーち的おすすめ度:お薦め度

こんにちは。あした順子・ひろしです(嘘です)。

本書、「被害者は誰?」は貫井徳郎の「明」の部分が表に出た小説だな。下記4編が収録されている。

・被害者は誰?
・目撃者は誰?
・探偵は誰?
・名探偵は誰?

「慟哭」や「修羅の終わり」などの暗く沈んだ世界観とは全く違う引き出しを見せてくれた。本書の「被害者は誰」であるが、購入していない方でもSo-netの e-NOVELS で販売されている貫井徳郎さんのコーナーで冒頭の文章が読めちゃいます。(Acrobat Readerが必要)

売れっ子作家である吉祥院慶彦とその友人、警視庁捜査一課の桂島刑事とが繰り広げる探偵小説である。表題作と合わせて計4編からなるこの小説。短編(中編?)とはいえ、そこは貫井徳郎。キチンと仕事をしてくれている。
貫井徳郎の性格なのか、吉祥院慶彦の性格なのかは不明だが、読者をいい意味で悉く裏切ってくれる。
サブタイトルが必ず「○○は誰?」って形なので、本書は推理小説の中でもフーダニット【Who (has) done it ?】というカテゴリであろう。通常のフーダニットでは勿論犯人を推理するのだが、本書では犯人以外の登場人物を推理する(ようにみせかけて実は犯人を捜すのだが)形式になっている。

●被害者は誰?
慟哭を読まれた方なら貫井さんの叙述トリックを一度は体験されているはずなのだが、ここではっきり言ってしまうとこの「被害者は誰?」も叙述トリックです。しかしそれを分かって読んでもかなり上手く出来ていると思う。不倫の末路はこんな感じなのか?
亀山俊樹の庭から死後10年以上は経過している女性の白骨死体が発見される。犯人は亀山俊樹なのだが、肝心の被害者の身元が分からない。
桂島は吉祥院にこの事件についての見解を聞きに行く。吉祥院は被害者の手記から思いがけない結論を導き出す。

●目撃者は誰?
推理小説に出てくる探偵は必ず事件を解決するものだが、実はこの「目撃者は誰?」では事件が解決されていない。ミスリードのまま終わっているというちょいと珍しいパターンである。不倫相手の女性のあっけらかんとしたキャラクターに救われた感がある。意図的なディレクション(結果的にはミスディレクションなのだが・・・)と吉祥院慶彦の快刀乱麻を断つ推理によって一応の解決はみるものの、その真実は意外な内容であった。
これを読む限りでは探偵小説は決して犯人が誰という正解を出さなくてもよさそうである。そこを小説としてキチンと読ませるところに貫井徳郎の上手さが伺える。

●探偵は誰?
これは、劇中劇のような感じになっている。吉祥院慶彦はモデル並みの美貌を持っているようだが、学生時代にホントにモデルクラブに所属していたようだ。そこで起きた殺人事件を見事に吉祥院が解いたというエピソードを小説にしてみたらしい。実話を元に書き起こしたこの小説。吉祥院が勿論この謎を解いたわけだが、桂島に小説の途中まで読んで誰が自分(吉祥院)かを推理しろという難題。勿論登場人物などは全て架空の名前を使っている。
モデルクラブに所属する4人の青年が事務所の社長の誕生パーティーのため社長の別荘に招待される。しかし、その夜に何者かに社長が殺害されてしまう。外界からの侵入者もなく、別荘内に招待されたメンバーの中に犯人がいる。果たして犯人は誰か? また、探偵は誰か?
犯人探しと探偵探しという二つの「フーダニット」。途中途中で作中の小説が何度か途切れて桂島くんの迷(?)推理が繰り広げられるのだが、お約束で全く見当違いの解答を披露する。

●名探偵は誰?
最後のこの一作は「おまけ」的な内容になっている。(ボーナストラック的なものと思ってもらえればよい)
先に記載した「探偵は誰?」に続き今度は「名探偵は誰?」かというタイトル。上記の3作品とは異なる手法でこれは書かれている。
事故により入院している「先輩」と語り部となる「僕」。加害者の若い女性は見舞いに来るが病院でなにやら怪しい行動を取っている。読んでいて直ぐに気づくと思うので、もうここで言ってしまうと、上記の3作品の「先輩」と「僕」との関係とは異なるものである。しかし、それが分かったからといって面白みが減るわけでもない。
最後は吉祥院が見事な推理を披露するのだから。


総論としては、貫井徳郎さんだけに商業小説としてある一定のレベルはキープしている。しかし、もうちょっと唸らせて欲しかった。再読ということもあり「騙されるために読む」ような姿勢で読み始めたのが原因か?
吉祥院と桂島のコンビはこれだけで終わらせるのはもったいないので、是非シリーズ化を希望っす。

#貫井徳郎さん、りょーちとしては明詞シリーズの続編を希望です!
#って、貫井さん、見てないか・・・orz


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2005年09月05日

椎名誠:「本の雑誌血風録」 このエントリーをはてなブックマークに追加

本の雑誌血風録
本の雑誌血風録
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椎名 誠
新潮社 (2002/01)
売り上げランキング: 100,579
おすすめ度の平均: 4.33
5 すばらしき青年期
4 ナントカナルダロ、ガハハ!
4 大人になってゆくシーナ



りょーち的おすすめ度:お薦め度


こんにちは。ツーツーレロレロの東国原英夫です(嘘です)。

この本を読むのはもう3回目くらいなのだが、毎回この冒頭の文章を読み、嬉しくなる。
本の雑誌血風録である。
まったくもって勇ましい題名でありますが、殆ど冗談なので、どうか笑ってお許しねがいたい。

もう「オレ、椎名誠の本、読んでいるんだなー」と一行目から幸せを感じるのだ。
本書は椎名誠さん曰く「超零細企業実録小説」らしい。現在の作家(冒険家?)に就く以前につとめていた ストアーズ社 で、 ストアーズレポート を書いていたが、そこに勤める目黒孝二と出会い、ストアーズ社をやめ、「本の雑誌」の編集長になり、活躍(?)するに至るまでの話しである。

この本は椎名誠とその仲間達を通じて昭和の時代を懐かしむという西岸良平の三丁目の夕陽的なほのぼの感が味わえる。また、小説にも関わらずサーノヒトシのやる気のない4コマ漫画も楽しめる。

本の雑誌はストアーズ社に入社してきた目黒孝二が書きなぐっていた「目黒ジャーナル」がその大元となる。目黒孝二は暇さえあれば本を読み、本を読む時間がなくなるから会社を辞めてしまうほど本好きである。誰しも趣味と実益を兼ねることができればこれほどよいことはないのだが、多くのサラリーマンはそれを実行できていない。
椎名誠はストアーズ社で自らが編集を手がけるストアーズレポートが軌道に乗り始め会社の上層部からも一定の評価を受けていた。
既に椎名誠は「さらば国分寺書店のオババ」を出しておりサラリーマンと文筆業という二束の草鞋を旨く履きこなしていた。しかし、椎名誠は本の雑誌に掛けてみたのだ。既に結婚し子供までいた彼にとって、一定の収入が見込めるサラリーマンと全く行き先も分からない「超零細企業」への立ち上げは正に人生の岐路であった。
「本の雑誌社」への就職は現在で言うところのベンチャー企業として捉えることができそうである。 厚生労働省:平成16年雇用動向調査結果の概況 を見ると若者の離職率が高い傾向にある。しかし、これらの若者全てが現在の仕事が単純にいやだから辞めたわけではなく、若き日の椎名誠さんのように夢を抱いて別の会社で頑張っている人もいるのであろう。

本書は何処までもポジティブである。椎名誠がどのようにして本の雑誌へ携わってきたかがここに書かれている。
本の雑誌は軌道に乗るまでには、幾多の試練があった。その当時からも本の流通システムは非常に複雑で、書店に本を置いて貰うためにはどうしたらいいのかも全く分からないメンバーが集まり、御茶ノ水の書店あたりにやっと本を置いて貰えることになるまでの経緯や、少数の読者に認知されはじめ、本の雑誌を書店に配本するためのアルバイト達の奮闘振りなど、読んでいて「頑張れ」と応援したくなる本である(意外と読者が応援したくなる本って少ない気がする)。配本部隊(通称助っ人)については配本部隊を取りまとめていた目黒孝二の 本の雑誌風雲録 や、群ようこの 別人「群ようこ」のできるまで を読んでみると面白い。また、この2冊を読んでから 本の雑誌血風録 を購入することをお薦めする。

椎名誠には愛すべき家族と仲間がいて、彼自身がやりたいことが明確でそれに向って突き進むだけのエネルギーと行動力を持っていたからみんなに愛されるのかなと感じた。
「類は友を呼ぶ」というが、椎名誠の周りに集まる人はみんな楽しそうである。
・生涯読書人、目黒孝二。
・謎の絵描き職人、沢野ひとし。
・かあちゃん弁護士、木村晋介。
・最強事務員、群ようこ。
うーむ、この時代は良かったねぇ。

臨場感溢れ、気取った文章ではなく、非常に好感の持てる一冊である。
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2005年08月31日

新堂冬樹:「溝鼠」 このエントリーをはてなブックマークに追加

溝鼠
溝鼠
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新堂 冬樹
徳間書店 (2005/03/19)
売り上げランキング: 59,964
おすすめ度の平均: 4
3 ちょっと...
5 久しぶりに熱中した本
4 ある典型


こんにちは。大阪百万円です(嘘です)。

新堂冬樹の小説は何時も救いようのない人物が登場する。
本書「溝鼠」では救いようのない家族の物語である。生理的に拒絶するようなストーリーにも何故か惹かれて次へ次へとページを繰ってしまう自分がいた。

自己の愉しみをそのままビジネスとする復讐代行屋「幸福企画」の経営者、鷹場英一はカネのためならどんな事でも行う。社員は英一を含め八木、中丸、沙耶の4名。幸福企画へやってくる客はみんな「金を払っても復讐したい人間がいる奴ら」ばかりがやってくる。
人の不幸とカネが何より大好きな英一にとって趣味と実益を兼ねたビジネスであったが、赤富銀行の田代から依頼されたハニーピーチのデート嬢の藤木安菜への復讐代行を請け負ったことにより事態がかなり転換する。田代を裏で操っていたのは英一の実の父の源治であった。
英一は源治を幼少の頃から忌み嫌っていた。幼い英一に数限りない暴力を振るい、しかも英一が愛する実の姉の澪にまで手を出す始末であった。
英一は現在は行方不明となった姉の澪を一人の女性として愛し続けていた。その澪の消息を源治は知っていると聞き英一は源治から持ちかけられた怪しい儲け話に乗ることになった。
しかし、実はこの儲け話を始めに持ちかけたのは澪であったのだ。澪は現在暴力団組長の宝田の情婦となっていた。澪は偶然知った医大教授の坂峰が大京大学医学部へ裏口入学の斡旋をしていたということを握り、それを逆手に儲けようと企んだ。そして自分が自由の身を手に入れるためにでもあった。

物語は坂峰から脅し取るためのカネを中心に回り始める。
源治、澪、英一の三者は表面上は坂峰のカネを奪い取るとために協力しているように見えるが、彼ら三人は家族とは思えないほど、互いを信用していない。唯一英一だけが澪を信頼していた。いや、信頼しようとしていた。そして場面場面でことごとく裏切られるのだ。

この小説で最も嫌悪すべき人物を一人挙げろと言われれば間違いなく、「澪」を挙げる。澪の自己愛は徹底している。また、元を正せば全ての現況は澪であり、英一も源治も澪の手の中で結果的に踊らされていた感もある。
宝田の子分で澪に密かに思いを寄せているある本郷に至っては、本来組長の女に横恋慕することはこの世界ではあってはならないことと知り、澪に騙され組長を裏切ってしまう。自分がこの世の中で最も美しいと信じて疑わない(って凄いことだが・・・)澪は全てを思いのままにしなければ気がすまない。

源治に至っては幼い澪と英一に鬼畜ともいえる行為をし続けてきた。そして9年ぶりにあった実の子供に向かっても親と思えぬ行動を繰り返す。この親にしてこの子達ありである。りょーちはホントにこの家庭に生まれなくて良かったよ。

本書には特にどんでん返しを狙ったストーリーはない。(いや、あるといえばあるが、おそらく殆どの読者が読んでいる最中に気づくと思われる)

ストーリーよりもこの変態的とも言える描写や目を覆いたくなるような過激な行為が脳裏に焼きつく小説である。逆に言えばこれらの「気持ち悪さ・気色悪さ」が強調されすぎたことは小説としては失敗なのではないかと感じてしまう。
しかし、これはおそらくストーリーを読ませるような小説ではないのだろう。登場人物の狂気の行動を共有するための文字列(呪文)なのだと感じた。
しかし、この呪文の効力は恐ろしいほど効果があり、それが新堂冬樹の小説を読ませる原動力になっているのではないかと思う。

ラストに見せる英一の動きは実はりょーちにはなんとなく「あ、こうするんじゃなかろうか?」というのは予感できた。ただ、全く当たって欲しくない予感だっただけに「おいおい、ホントにその終わり方?」と自問自答してしまった。

なお、新堂冬樹を未読の方はこの本を始めに買うことを薦めません。

なんと・・・・
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2005年08月04日

貫井徳郎:「光と影の誘惑」 このエントリーをはてなブックマークに追加

光と影の誘惑
光と影の誘惑
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貫井 徳郎
集英社 (2002/01)
売り上げランキング: 49,737


りょーち的おすすめ度:お薦め度

こんにちは。木ノ葉のこです。(嘘です)
本書を読むのは2回目。短編(中編かな?)4作からなる「光と影の誘惑」は貫井徳郎という作家の実力を知るのに丁度良い作品だと思う。
表題作の「光と影の誘惑」を含め下記の4編が収録されている。

■長く孤独な誘拐
■二十四羽の目撃者
■光と影の誘惑
■我が母の教えたまいし歌

この4つの作品。小説になる前のアイデアレベルでも秀逸である。こうやって短くまとめて作品にすることにより、貫井徳郎のプロットの上手さが更に光るから不思議だ。

■長く孤独な誘拐
りょーちは知らなかったのだが、本作はなんとTBSでドラマ化されたらしい。
TBS 2004年2月2日放送 サスペンス特別企画 『長く孤独な誘拐』
知らなかった・・・orz

原作とドラマでは少しストーリーが違うようだが、登場人物の名前は同じようである。不動産会社で働く森脇の元に息子を誘拐したという電話が掛かってくる。誘拐犯からは、なんの面識もない羽村公彦という人物の子供、羽村裕貴也を誘拐しろという奇妙な要求を受けた。犯人に言われるがままに裕貴也誘拐に手を染め始めてしまう森脇。息子の耕平のために文字通り東奔西走する。果たして誘拐犯の本当の目的は何か?うーむ、なんだかネズミ講のよーな話しだなと思ったが、最後は貫井徳郎らしさが現れた小説だなと感じた。

■二十四羽の目撃者
所謂密室モノなのですが、こういう密室殺人はりょーちはあまり読んだことないです(ってそんなに密室殺人関連の推理小説を読破しているわけではないのだが)。
舞台はなんとアメリカのサンフランシスコ。探偵役は保険調査員のオレ。オレは上司のマルガリータ(女性)には何時も理不尽な要求を突きつけられていた。そんな中、二月前に保険を掛けたばかりの客が動物園で何者かに発砲され殺されたという。部下をこき使うことに長けているマルガリータはオレに調査を命じてきた。
調査にあたりサンフランシスコ警察の知り合いのロナルドに状況を聞きに行く。このロナルドとのオレの会話が妙に軽く面白い。オレの推理は見事に全否定されてしまう。
被害者の殺害状況だが、どうも腑に落ちない点がある。事件現場は動物園の通路で前後に客、両サイドには白熊とペンギンの檻があった。犯人の逃げる姿は前後の客も見ていないという。抜け道が動物園にあるとも思えない。
調査の進展もあまりなく会社に戻るとマルガリータはいつものように何の根拠もない推理を押し付けてくる。彼女の推理に裏打ちされているのは何時も「女の感」の一言である。被害者の身辺を調査していくとどうやら周囲の親戚達から借りたかなりの借金があることが判明する。
果たして真犯人は誰なのか?
うーむ。終始軽いノリで書かれた本作品。いつもの貫井さんはどこへやら?
本書収録の4作品のうちこれだけ浮いている感じがするけど短編集だから統一しなくてもいいのかな?

■光と影の誘惑
競馬場で知り合った銀行員の西村勝巳と小林吾郎が現金輸送車襲撃を計画する。ターゲットは西村の勤めるで銀行の現金輸送車。二人の立てた計画は実行され、見事襲撃に成功しカネを手に入れる。そこまでは順風満帆だったのだが・・・
ストーリーといい、トリックといい「貫井徳郎っぽい作品」といえなくもない。ラストを読んだ時点で「え?どういうこと?」とわけが分からなくなって思わずもう一度読み直して「あー、そういうことかー」とやっと分かった・・・orz
りょーち的には競馬絡みというわけではないのだが、なんとなく岡嶋二人さんが(井上夢人さんがではない)書きそうな小説だなあと感じた。
まあ、そんな感じの内容である(どんなだ?)
騙されたときの爽快感が「貫井徳郎っぽい」と感じたのかもしれない。

■我が母の教えたまいし歌
りょーちが編集者だったとしたら「この4編の中で、どれをラストに持ってくるか」と聞かれれば、きっとこの「我が母の教えたまいし歌」をりょーちも選択してしまうだろう。もうちょっと膨らませれば、東海テレビのお昼1時30分からのドラマっぽい展開になりそう?
所謂、戸籍に関してのトリック。最後のほうまで皓一・父・母・初音の関係がりょーちの中でごちゃごちゃになっていた。
ストーリーやトリック(?)としては以前どこかで読んだことがありそうな感じもするのだが、そうは言ってもりょーちの予想は見事にはずれました。



短編小説や中編小説はよほどアイデアとプロットがしっかりして、且つ流れるように読ませる文章力が必要かと思う。貫井徳郎さんは、そのどちらも持っている作家さんの一人だと思う。かなり固定ファンも増えていると思われるので今後の貫井さんの新作に是非期待したいところだ。

新作はまだですかねー。早く読みたいっす。
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2005年08月02日

アレックス・シアラー:「スノードーム」 このエントリーをはてなブックマークに追加

スノードーム
スノードーム
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アレックス・シアラー 石田 文子
求竜堂 (2005/01)
売り上げランキング: 44,592
おすすめ度の平均: 4.43
4 現代のホラー風童話
5 憎らしくて愛おしい人物
4 んっ??ってカンジでした。

りょーち的おすすめ度:お薦め度

こんにちは。ミスター梅介です。(嘘です)

「チョコレート・アンダー・グラウンド」を執筆したアレックス・シアラーの新作、「スノードーム」を読んで見た。本書はおそらく「チョコレート・アンダー・グラウンド」よりも少し上の年齢層がターゲットなのではないかと感じる。
冒頭部分を読み始めると「お、これはSFっぽい話しなのか?」と思って読み始めたがSF的要素は殆どない。まああるにはあるのだがそれは本書の中でのエッセンスのひとつに過ぎない。
本書で語られているのは「愛」についてである。まあ、こうやって文章にするのも恥ずかしいのだが、テーマがそうなのだからしょうがない。(どう言う顔して書いているんだ?オレ?)
登場人物はかなり少なく非常に限定された場所での話になる。
主要登場人物は下記の5名。(本の栞に書かれている内容を抜粋)
・クリストファー・マラン:若い物理学者。ある日突然失踪する。
・エルンスト・エックマン:醜い姿の芸術家
・ポッピー:若く美しいダンサー
・ロバート・マラン:クリストファーの父。画家。
・チャーリー:クリストファーの同僚。

科学者(物理学者)のクリストファー・マラン(通称クリス)はある日突然失踪した。クリスの同僚のチャーリーは失踪したクリスの置手紙をオフィスで見つける。そして手紙と共にクリスが書いた原稿を見つける。そしてそこに書かれていた内容は俄かには信じがたい内容であった・・・
本書のコアな部分はこのチャーリーがクリスの原稿から書き起こした劇中劇のような形で紹介される。チャーリーはこの書き起こしたものにタイトルをつけた。「The Speed of the Dark(闇の速度)」と。

小さな少年、クリスは父と二人暮し。クリスの父、ロバートは売れない画家である。ロバートは芸術家が集まる町の一角で何時も似顔絵などを書いて生計を立てていた。
一方エックマンは自分で小さな美術館を運営している。彼の展示する美術館には世界でただひとつしかないものを展示していたからだ。彼は指先が(おそらく世界の誰よりも)非常に器用で虫眼鏡や顕微鏡などでしか見ることができないくらい小さなものを作ることができた。勿論展示物を見るときにも虫眼鏡や顕微鏡を使う。その所為でエックマンの美術館は小さいが人気があった。
エックマンは商売の分野では成功者だったが、自分の風貌が小さく醜い存在であることにコンプレックスを抱いており、世の中の全てを憎んでいるような暮らしぶりであった。そんなエックマンにも恋焦がれる女性がいた。それがダンサーのポッピーであった。ポッピーは町の片隅で観光客にダンスを見せて生計を立てていた。ポッピーが何時も立っている場所にある小さな箱に観光客が僅かばかりのコインを入れるとポッピーはバレエを踊りだすのだ。コインを入れるまではポッピーはじっとしている。
エックマンはポッピーの踊る姿を遠くから眺めるのが唯一の楽しみだった。
エックマンは気難しい人物として知られていたがクリスとは何故か仲良くしてくれた。クリスはエックマンの主催する美術館を見るのが好きだった。クリスはエックマンを友人として見ていたがそんな中、状況が一変する。
クリスの父、ロバートとポッピーが良い仲になりそうな感じだったのだ。
エックマンは常日頃、自分の作品に足りないものは何か考えていた。肉眼ではおいそれと見えないほどの小さなものを作り、自分の住む町まで作ることができたがその町には誰も生き物が住んでいなかった。
そしてある日エックマンは自分の内に秘めた恐ろしい計画を実行する。
暫くしてロバートはポッピーと突然連絡が取れなくなってしまったことをクリスに告げる。クリスに心当たりがないか聞いて見たのだ。勿論クリスはポッピーがどこにいったかなど知る由もなかった。そして、こともあろうに、更にクリスの父ロバートが行方不明になる。クリスが町中を探し回ったが、父はどこにも見当たらなかった。
クリスはエックマンのところに行き、父がいるかどうかを確認したが部屋の中にはどこにもいる形跡はなかった。部屋にあるのはこの町の非常に精巧にできたミニチュアだけだった・・・
結局ロバートはどうやっても見つからず、一人ぼっちになったかわいそうなクリスを引き取って面倒を見たのがあのエックマンだった。
エックマンは(血こそ繋がってはいないが)クリスという家族を手に入れたのだ。

そして物語がクライマックスに近づき、クリスは全てを知ってしまう。そのとき、クリスはどういう行動を取るのか。エックマンはどうするのか。
ティーンズ向けに書かれた(と思われる)このスノードーム。かなり奥が深いです。
本書ではエックマンが終始「悪人」として記述されている。それもかなり意図的に読者に同情を与えないような書き方がなされている。読み終えたときにはやはり「エックマンはダメ人間だな」と感じたが、人はみな少なからずエックマンのような独占的支配力を手にしたいという願望があるのではないだろうか? 今現在そのような「力」を持っていないため現実的に想像できないだけであって、「何でも自由にできる力」(本書のエックマンの持つ能力とは違いますよ)を与えられたなら「私利私欲のために使っちゃうんじゃないのかな?」と思う。

さて、サブタイトル(おそらく原文はこっちがホントのタイトル)「The Speed of the Dark(闇の速度)」の表す「闇」とは何か? 文中にも「闇」について登場人物が語っているところがあるが、なんとなく人の心に宿る「よろしくない部分」と解釈するのが一般的なのかなとも思う。勿論、そう考えても辻褄が合うのでアリだと思うのだが、そうすると「速度」はなんだろう? クリスは物理学者であり、光の速度について研究していたがそういう物理学的な「速度」ではないような気がする。この答えは実はりょーちとしてはまだよくわからない。この本を読んだ方に「闇」の表すものが何かということについていろいろ聞いて見たいなと思った。

予想以上にちょいと悲しげなお話であった。片思いの若者(若くなくても良いのだが)の方に読んでいただきたい一冊である。

なお、購入して気になったのがこの「スノードーム」の出版社の「求龍堂」という会社。この会社の販促戦略が実に興味深い。
Webサイトなどで、書籍の紹介 をしたり、スノードーム -読者の声- などで読者の感想を掲載する方法は結構ありきたりなのだが、書籍を購入すると「読者カード」と呼ばれるハガキが付いてきたり、その出版社の新刊や最近の出版物の紹介用の小さな宣伝がよく挟み込まれている。
求龍堂の宣伝用販促物は読者から寄せられた「読者カード」のコピーをそのまま宣伝用販促物に利用している。なので読者の手書きの文字をそのまま読めるようになっている。
このパターンはあまり見たことなかった。手書きのコピーを見るとなんだか読者と出版社との間の距離が意外と近く感じられた。うーむ、おもしろい試みだな。
千紫万紅:一冊の本の価値 を拝見するとりょーちと同じよーに感じられている方がいらっしゃった。求龍堂、好印象っす。

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2005年07月27日

村上龍:「半島を出よ」 このエントリーをはてなブックマークに追加

半島を出よ (上)
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半島を出よ (下)
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村上 龍
幻冬舎 (2005/03/25)
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りょーち的おすすめ度:お薦め度

こんにちは。リーガル天才・秀才です(嘘です)

以前から感じていたが村上龍という作家については、分類するのが難しい。小説のジャンルも様々だし、エッセイなども書いている。作家を分類することに意味はないのだがりょーちとしては面白い本が読めればそれでよい。
若かりし頃はじめて読んだ村上龍の小説は「コインロッカー・ベイビーズ」で、次が「愛と幻想のファシズム」。暫くして「限りなく透明に近いブルー」「69 Sixty nine 」と続く。
最初の2作品が如何にも破壊的な作品だったのでかなりインパクトがあった。世界観としては「五分後の世界」「ヒュウガ・ウイルス」に近い印象を受ける。
「半島を出よ」というタイトルだがこの「半島」というのは朝鮮半島のことである。本書は2011年という時代背景となり近未来小説というカテゴリーになるのだが、特にSF的な趣向はなく、ホントに現在の延長線上にある物語となっている。ジャパンマネーは世界に通用しなくなり、日本は世界に何の影響力も持たなくなっているような設定(よくわからないけどありえそうな気もする)。変にSF的要素を取り入れないおかげでより作品のリアリティが増している。
登場人物のカテゴリーとして大きく3つに分かれる。一つは北朝鮮から福岡にやってきた高麗遠征軍、もうひとつは政府関連のメンバー、最後に福岡でイシハラと行動を共にする通称イシハラグループ。
非常に簡単にストーリーを紹介すると、高麗遠征軍という北朝鮮の反乱軍が開幕戦が行われている福岡ドームを占拠する。日本政府はドーム内の数万人を人質に捕られ対応は後手後手となる。ドーム選挙後更に北朝鮮の特殊部隊が飛行機で追加でやってきて高麗遠征軍は更に武力的にも脅威となる。実は反乱軍と称されていた高麗遠征軍は北朝鮮政府内で容認されたもので、この武力制圧は完全な国としての作戦であったのだ。
報道各社は勿論一斉にこの事件をメディアを利用し報道し始める。
本来は福岡ドームを占拠した段階で福岡ドーム毎攻撃をする。3万人の犠牲者は出てしまうが国家保安とはそういうものらしい。しかし、勿論そのような選択はなく、指をくわえてみているだけであった。
政府の対応は官房副長官の山際清孝を罷免しただけで何も打開策はない。
政府は更に自分達が攻撃できない理由を「反撃すると、高麗遠征軍は液化天然ガス基地がテロ攻撃を受け、更なる犠牲者が増える」としていたが、言って見れば状況を打破できない人間の言い訳に過ぎなかったりする。
日本政府が下した決断は、九州を福岡から切り離し、独立させるという苦渋の決断だった。
そうなると、福岡に残された人々はどうなるのか?
福岡市内で共同生活を送っていたイシハラグループのメンバーもこの報道を目にする。彼らは世間から見放された若者達であり、何処にも居場所がなく自然にイシハラ(自称詩人)という人物の元で暮らすようになった。

・ブーメラン使いのタテノ。
・手先が器用なヒノ。
・爆弾に異常に詳しいタケグチとフクダ。
・テロに憧れを持つカネシロ。
・昆虫や爬虫類、毒を持つ生き物を多数自分で飼育しているシノハラ。
・十二歳のときに祖父の日本刀で新幹線をハイジャックして車掌を切り殺したトヨハラ。
・元銀行員でイスラム武装ゲリラグループに参加し武装組織から大量の兵器を購入し隠し持っているタケイ。
・互いに弱い存在だったが、施設で知り合い、ミッキーとミニーの刺青を入れ、刺青の力で大量殺人鬼になろうとしたヤマダとモリ。
・悪魔と出会い悪魔教と呼ばれる秘密教団に入信させられたという事件で話題になった、悪魔教のメンバー(実際は親から酷い虐待を受けていた少年達)である、オリハラ、コンドウ、サトウ、ミヤザキ、シバタ。

イシハラは「高麗遠征軍は悪い奴だから敵と見做し駆逐しちゃうもんね」的な非常に軽いノリで敵と見做す。
物語の後半部分では「イシハラグループvs高麗遠征軍」という戦いとなる。イシハラグループの個々人の得意分野を駆使した高麗遠征軍との戦いはスピード感、焦燥感などが上手く表現されており、読み応えがある。

その戦う相手でもある高麗遠征軍については実はりょーちはあまり思い入れはない。読んでいても名前が頭の中になんだか入ってこなかった。
パク・ミョン/キム・ハッス/リ・ヒチョル/チェ・ヒョイル/チョ・スリョン/ハン・スンジン/キム・ヒャンモク/リ・キヒ・・・ キミ達誰が誰なんだっけ?と何度も冒頭の登場人物説明まで戻って読み返していたが次第にどうでもよくなってきた。
地理的な事柄については、 備忘録:「半島を出よ」の地図 さんのページを見たらイメージが沸くかも。(読む前にこのページを知っておきたかった・・・orz)
ちなみに、キム・ヒャンモク/リ・キヒは女性戦闘員である。この本だけ読むと北朝鮮の人は男性も女性も恐ろしい人々って感じに書かれているけれど実際はどーなんだろうと思った。
こないだ、世界水泳のシンクロナイズドスイミングの北朝鮮の選手の演技を見た。北朝鮮の選手がインタビューに答えているシーンが流れていたがなんだか普通の女性であった(まあ、そりゃそーだわな)。ただインタビューの中で「食事は口に合いますか?」との記者の質問に「全く合いません。北朝鮮のモノが一番です。早く帰ってキムチを食べたい。」などと異口同音に語っていたのを見て「ホントにそうなの?」と思ったりした。

と、別々に三者(「高麗遠征軍」「政府関連」「イシハラグループ」)についての思いを書いてみたが、小説を読んでいて思ったのはどうもこの三者が上手く絡み合えていないのかなーとも思った。
読後感は「おー、大作を読んじゃった。すごい面白かった。やるなー村上龍」と確かに思ったのだが、なんだか勢いで読まされた感覚がある。しかし、勢いでもこれだけの分量を読ませる村上龍は確かに只者ではないのであろう。ひとつのシーンを描くのにどれだけの資料が必要か考えて見ると、状況の特異性や登場人物の持つ特殊性を表現するためにかなりの資料が必要だと思われる。イシハラグループのシノハラが飼っている毒虫などに関する件(くだり)も専門的な資料が必要になるし、銃器に関しての資料、北朝鮮に関しての資料など数え上げると枚挙に暇がない。
ディテールはしっかり書かれているのだが些か冗長だった気もしないでもない。でも、読んでいるときにはランナーズ・ハイではないが、村上龍が紡ぎだす世界観にどっぷりと浸れた。
まあ、それだけでも読む価値があったのかなーと感じた。
「半島を出よ」を読んだあと、口直しというには忍びないが、村上龍の「コインロッカー・ベイビーズ」「愛と幻想のファシズム」などを再読したくなりました。
続きを読む
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2005年07月15日

服部真澄:「ディール・メイカー」 このエントリーをはてなブックマークに追加

ディール・メイカー
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服部 真澄
祥伝社 (1998/09)
売り上げランキング: 404,895
おすすめ度の平均: 4
4 視野を広めるには良い作家です。
4 現実世界に置き換えて読める面白さ
4 著作権をめぐる熱い闘いを描いた力作

りょーち的おすすめ度:お薦め度
ずいぶん前に2回ほど読んだが、もう1回読んでみた。最近の読書感想文の傾向を見てみたら、
福井晴敏:「亡国のイージス」 2002/07
平谷美樹:「エリ・エリ」 2000/11
真保裕一:「奇跡の人」 2000/01
横山秀夫:「陰の季節」 2001/10
貫井徳郎:「鬼流殺生祭」 2002/06
霧舎巧:「ラグナロク洞」 2000/11
霧舎巧:「カレイドスコープ島」 2000/01

うーむ、新書があまりないね。決して貧乏で本が買えないわけではないのだが(と言っても裕福でもないのだが・・・)何故か昔に読んだ本をもう一度読み返したい衝動に駆られて、読み漁っているのだ。
で、この「ディール・メイカー」もそのひとつ。服部真澄さんの本は年に何度かダンボール(自宅に本棚ないっす・・・)から取り出して読み漁る作家の一人だったりする。
りょーちの貧乏自慢は置いといて、感想なのだが、服部真澄の海外への目の向け方は非常に良いのではないかと何時も思う。
「龍の契り」では香港返還をテーマにイギリスと中国の交わした謎の契約を巡り繰り広げられる。そして「鷲の驕り」ではサブマリン特許をテーマに日本の自動車会社とアメリカの特許王との間で熾烈な戦いが行われる。
印象としては高村薫さんの書かれる世界観に近いかなーとよく感じる。最も異なる点を挙げるなら、高村薫さんの小説には「悲壮感」が前面に押し出されていることかなぁ。その分、服部真澄さんの小説の方が「読みやすさ」という点で分があるかな(内容で差があると言っているのではないことに注意)。
今回の題材はM&A(企業買収)がテーマになっている。初版が1998/09ということなので、まさに現在を先取りしたテーマである。1998年頃にM&Aが大きく取り沙汰されることはなかったですよね。
登場する企業も現実世界に存在する企業が一瞬で頭に浮かび上がる設定になっている。
・「ハリス・ブラザーズ」=「ディズニー
・「マジコム」=「マイクロソフト
・「ネッティ」=「ネットスケープ社
だったりして読んでいる人にも分かりやすい。マジコムのCEOのビル・ブロッグなんてりょーちの中では100% ビル・ゲイツ でした・・・orz
しかし、この本、今読んでいてもホントに時代を先取りしていたんだなーと思う。
キーワードとしては「著作権」「敵対企業買収(M&A)」「人工授精」「コーポレート・ガバナンス」など盛りだくさんの内容である。

非常に簡単にストーリーを述べると、こんな感じ。
ハリス・ブラザースは人気キャラクター「クマのデニー」により多大な利益を得ている。しかし「クマのデニー」がハリス・ブラザースのものでなくなったら大変なことである。(ディズニーのキャラクターのミッキーマウスは「実はマイクロソフトが著作権を保有しています」ってなったら大変だと思いませんか?)
ハリス・ブラザース商品部門担当副社長である、シェリル・ハサウェイとインターネットのチャットで知り合った反健斗がマジコム社長のビル・ブロックが仕掛ける敵対企業買収に立ち向かう。
こう言えば非常に簡単な構図に思えるが、実際はかなり込み入った状況になっている。
今でこそ日本もストックオプションと言って自社株を社員が保有する時代になりつつあるが、アメリカでは当時から当たり前にストックオプションが行われていた。そのため、単純に自社が買収されることが自分にとって不利益にならない場合がある。それは自社内に不穏分子を飼うことと同値である。
クマのデニーを手にするのは最終的には誰になるのか?

この小説、一筋縄ではいかないっす。服部真澄の小説は二転三転と凄いスピードでストーリーが変わりまくる。その流れに任せて読んでいくとよいと思われる。世界観に浸るだけでも心地よい気分が味わえるであろう。

この小説を読んで、著作権ってのはとんでもない武器なんだねーと思った。

#でも、催眠術って反則っぽい気がする・・・
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2005年07月11日

福井晴敏:「亡国のイージス」 このエントリーをはてなブックマークに追加

亡国のイージス 上  講談社文庫 ふ 59-2
福井 晴敏
講談社 (2002/07)
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おすすめ度の平均: 4.65
5 著者に印税を払う価値はある。
5 怒涛の興奮、間違いありません
5 日本発のエンターテイメント作品!
亡国のイージス 下  講談社文庫 ふ 59-3
福井 晴敏
講談社 (2002/07)
売り上げランキング: 1,220
おすすめ度の平均: 4.67
4 文庫だからこそ
3 微妙に不満が残る
5 あっ!と驚く結末

りょーち的おすすめ度:お薦め度お薦め度
この本を読むのは既に4回目くらいなのだが(って読みすぎ?)名作は何度読んでもいいですな。読むたびに感動を与えてくれます。それだけにいろいろ感想を書きたいのだが、如何せん、壮大過ぎます、この作品。もう書ききれないのですよ。ホント。
作者の福井晴敏さんの作品は「 goo 亡国のイージス 」をはじめ、「 戦国自衛隊1549 」「 ローレライ 」などと映画界でもその名はとどまるところをしらない。今や最も勢いのある作家ではなかろうか? ( 亡国のイージス in 花やしき 闇市 などという謎のイベントや、作品の世界が壊れないか心配でしょうがないネーミングの「 こんなにしゃべってイージスBLOG 」などもあるよーですが・・・)。あと全く関係ないが、戦国自衛隊の原作である半村良さんのペンネームはイーデスハンソンさんからGetしたらしいっす。(「いいです(良)はん(半)そん(村)」←まじかよ・・・)
この「亡国のイージス」ですが、 週刊モーニング でも「亡国のイージス」が連載されているよーである。
と、予備知識はこのくらいにしておいて「亡国のイージス」の感想なのだ。
正直今までblogで読書感想文めいたものをそこはかとなく書きつくっていたけれど「亡国のイージス」の感想はかなり難しい。ストーリーが長いということもあるのだが、一番の原因は中心となる人物が読む度に変わっていくからである。
今回、仙石の目線を中心に読み始めたのだが、途中でヨンファに思い入れが強くなったり、やはり如月行に目線が変わったりとストーリー同様に激しく変化していく。

如月行という青年のキャラクターはどこかで読んだことがあるなあと考えていたら、福井晴敏さんの「 川の深さは 」に登場する保に似ている。そして、仙石は差し詰め桃山という図式になっているような気がする。仙石は桃山ほど自分の内に引きこもってはいないようだが、保と行はかなりオーバーラップしているような印象を受けた。

ストーリーについて簡単に触れると(って簡単には無理か?)日本政府は、北朝鮮の工作員が最悪の生物化学兵器「GUSOH」を手に入れたことから始まる。元々「GUSOH」はアメリカの研究者が偶然開発したもので、本来地球上にあってはいけないものである。その殺傷能力はたった数滴で何万人もの人間を死に至らしめることができる最悪の生物兵器である。その「GUSOH」は沖縄で起こった「辺野古ディストラクション」と呼ばれる原因不明の爆発事故ですべて消失したはずであった。
時を同じくして、海幕人事課長である沢口が電車に飛び込んで自殺した。沢口は誰かに強請られている可能性があり、公安では沢口をマークしていた。それにも関わらず、沢口は自殺してしまった。
北朝鮮の工作員は「GUSOH」を盾に日本政府にビデオでメッセージを送っていた。日本政府では防衛庁情報局の渥美や内閣情報調査室長の瀬戸などが対応しはじめていたが「GUSOH」という兵器を持つ彼らに太刀打ちできる有効な解決策などまるでなかった。
今回の工作では、ホ・ヨンファという北朝鮮の伝説的な工作員がの中心となっている。日本政府はヨンファの顔すら確認できていない。ヨンファたちは海外への逃亡を希望した。何の策も取れないまま、結局日本政府は彼らのパスポートを発行し、海外へ逃がす術を与えることとなってしまう。オーストラリア行きの飛行機に乗る工作員たちを指をくわえて見ることしかできない。更にその飛行機は何故か墜落してしまう。
墜落先付近で演習中の「いそかぜ」は本部からの指令を受け、海上捜索に向う。そこで奇跡的に生存者を発見する。「いそかぜ」乗組員は生存者がいることに驚き、更に救出してみて生存者が女性だったことに驚く。
このあたりから、かなり物語がヒートアップしてくる。
登場する人物は行・仙石・宮津・ヨンファ・宮津の息子など殆どが不器用な生き方しかできない人間ばかりだ。行は自分の親を殺害したという過去を持つ。ダイス(DICE)に入ってからも行は自分を責め続け、他人に心を開くことはない。そんな行が「絵」という媒体により仙石に心を開き始める。行はダイスから送られた諜報部員でその存在を公にすることは出来ず、一人で活動を続けていたが、仙石から疑いの目を向けられてしまう。そのとき、行は「あんただけには信じて欲しかった」というようなことを呟く。一度は失いかけた信頼を行と仙石が取り戻し共通の敵に対して立ち向かうその様は読んでいて非常に心が躍るようであった。その臨場感といい、スピード感といい、これぞ正にエンターテイメントである。この後半の仙石と行のコンビネーションによるヨンファとの戦いの描写は本当に素晴らしい。
また、いそかぜの艦長である宮津の心情も痛いほど分かる気がする。宮津の息子は国家により殺されたのだ。これだけでも造反の理由としては十分であろうと思われるがヨンファにその心の隙を狙われたことにより、今回の事件が不幸にも起こってしまう。
更にそのヨンファでさえも彼の言い分も分からなくもないと思う。ヨンファのいる北朝鮮の置かれている状況や生い立ちなどを聞けばこちらも(あまりよくはないのだが)同情の念を禁じえない。
小説としてかなりのボリュームがあるこの「亡国のイージス」は単なる戦争ものではない。イージス艦や海上自衛隊に関する緻密な描写により強烈なリアリティを紡ぎだすことに成功しているが、外部のリアリティは環境を補完するのではなく、個々の登場人物のリアリティを増幅させ、読者を登場人物に感情移入させやすくしている。
更にストーリーも二転三転どころか何回転んだのか分からないくらいのどんでん返しを披露してみせる。このあたり、ホント「福井晴敏の頭の中はどうなってるの?」と頭の中を見せて欲しいと思われるほどのプロットである。
更にここまでその存在のために国家の存亡を揺るがすことになった「GUSOHの正体」を彼らが知ったとき、その徒労感は想像することができない。ここは本書の読みどころのひとつなのかなとも思った。(いい加減にしろよ、アメリカと突っ込みたくなること間違いないのである)
また、脇役として登場する、田所や菊池。「うらかぜ」の衣笠や阿久津。内閣総理大臣の梶本(総理大臣でも脇役です)。彼らのキャラクターもかなりいけてました。人間を書きすぎじゃないの?とも思いましたが細かい描写により小説としての深さがかなり増したのではないかと思います。自衛隊関連の専門用語もかなり多いのですが、読みきれないほどではなく、返ってイメージを補完するよい材料になったのではないでしょうか?
海上の主役が行と仙石であるならば、陸上の主役は渥美なのではないかと思う。渥美は所謂エリート官僚と呼ばれる部類に属すると思うのだが、この物語は渥美の心情にシンクロした形でストーリーが進んでいくと言っても過言ではない。渥美の心情の移り変わりに焦点を当てて読んでみるのも面白いと思う。物語の終盤に書かれる渥美と宮津の妻との会話は渥美の心情の描写だけにとどまらず、この物語を締めくくる上で欠かせないエピソードになっているのだと感じる。渥美の決意は日本の将来の決意表明に他ならないと感じた。

しかし、登場人物良し、プロット良し、リアリティ良し。これ以外何を望むと言うのだろう。
本書を読み「国と国との戦い」=「個人と個人の戦い」なのかなと感じた。国家による政治とは国民のために何を為すかを多数決で決めるということである。世界に国がひとつしかなければ戦争などは起こらないと思うかもしれないが、実際こんなことを書いている今も世界のどこかの国で戦争や内戦などが繰り広げられている。幸い日本は現在戦争状態ではないのだが、一度そのターゲットとして選ばれてしまったなら政府は、自衛隊はどう動くのか? 「亡国のイージス」を読んでいやでもそのようなことを考えずにはいられなかった。

なお、福井晴敏さんの「 川の深さは 」では行の所属する「ダイス」がどのようにして発足したのかが書かれている。こちらもかなり読み応えがあるので、「亡国のイージス」を読まれて感銘を受けた方は一度手にとってみてもらえると良いかも。

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2005年06月30日

平谷美樹:「エリ・エリ」 このエントリーをはてなブックマークに追加

エリ・エリ
エリ・エリ
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平谷 美樹
角川春樹事務所 (2000/11)
売り上げランキング: 195,567
おすすめ度の平均: 4
4 ハードSFですねぇ
2 新しいものは何も感じられないです。
5 力作


りょーち的おすすめ度:お薦め度

扱われているテーマが非常に壮大である。未来の小説のようでもあるし、過去の小説でもある。主題は「神」についてである。本書は第1回小松左京賞の受賞作でもある。小松左京の小説から鑑みれば第1回に相応しい内容だと言える。
本書のテーマは「神は存在するか?」という「神探し」の旅についての物語である。

題名となっている「エリ・エリ」とは新約聖書で書かれているイエスが発したと言われる言葉で「我が神、我が神、なぜ私を見捨てたもう」(エリ エリ レマ サバクタニ)」 から来ている。

主人公の榊和人は東北の小さな町の教会の神父。時代は21世紀の半ば過ぎ。人類は神への帰依を忘れ、ありとあらゆる宗教が形骸化しつつあった。榊も神父の身でありながら神の存在を半ば疑い始めており、自分が神父として不適格であることに気づき始めていた。
地球の知的文明はとどまるところを知らず、他の惑星へとコロニーを増やしつつあり、近場である月や火星の基地を建設し木星にもその足を伸ばし始めていた。
人類は無人探査船による地球型惑星衛星の発見のためにデータ収集を行う目的の「ホメロス計画」は、アイデンティティを失った人類が地球外にそのよりどころを求める自然な流れであった。

と、序盤は非常にいい感じで話しが進んでいく。りょーち的には「お、これはあのダン・シモンズのハイペリオンシリーズに匹敵するほどの渾身の一作か?」と途中までは思った。
しかし、どうも後半の展開に疑問を持つ。主人公と思われた榊があっけなく死んでしまうところくらいから「むむむっ」と首を傾げ、更に、精神科医でインプラントを埋め込まれた記憶を持つタウト。お前、どーしてそうすぐに騙される? 8時だよ全員集合で、「志村ー、後ろー」と叫ぶ小学生並みに声を出して突っ込みたい衝動が湧き上がる。
天才科学者クレメンタインに至っては「恋人のことはもういいじゃん」と突っ込みたくなったりもした。

レスレクティオ」「黄金の門」と続く3部作のはじめの作品。
「エリ・エリ」にのめりこむことができた人にはきっと続編を読むに値すると思うが、どうもすんなりと世界に入っていくことができなかったのは何故なのか。与えられた命題に対してあまりにも証明が長い数学の定理のような印象をこの作品に受けた。

比べるのは酷だとは思うが、先に挙げたダン・シモンズの「ハイペリオン」シリーズを再読したほうがよいのかなあとも思った。

#そのうち、気が向いたらもう一回くらい読むかもしれません・・・

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