2004年11月09日

角田光代:「キッドナップ・ツアー」 このエントリーをはてなブックマークに追加

キッドナップ・ツアー (新潮文庫)
角田 光代
新潮社
売り上げランキング: 117121


りょーち的おすすめ度:

こういった本を読むと心が洗われます。
本書はジャンルとしては児童書に分類されるかと思いますが、大人の人にも是非読んでいただきたい一冊です。お子さんのいらっしゃる家庭では親子ともども読んでみてもいいかもしれません。

登場人物は小学校5年生のハルという女の子とお父さん、お母さん、その周辺の人々。この物語は夏休みの初日にハルが「誘拐」されるところから始まる。いきなり何の前触れもなく出てきた犯人に「いまから君を誘拐するよ」とにべもなく告げる犯人。ハルは抵抗するでもなく、寧ろ面白がって誘拐犯に着いていく。この物語はハルと誘拐犯のひと夏の思い出旅行として綴られていく。
分別もある小学校5年生がいとも用意に誘拐されちゃうのには理由がある。誘拐犯は自分の本当のお父さんだったのだ。ここ最近帰ってこないお父さんが乗りなれないレンタカーでやってきて、自分の子供を誘拐して逃避行しちゃうのだ。

このお父さん。全くダメ親父である。物語の大半はハルの視点で書かれている。ハルは以前から「冴えないお父さん」という印象を持っていた。お母さんが貝にあたって腹痛に苦しんでいるときにも「お、おめでたか? でもオレには記憶がない。誰の子だ?」とデリカシーのない発言をしたり、間違って燃え残ったタバコの灰をゴミ箱に入れて部屋中煙だらけにしても「ファッションショーだ」などとふざけている、尊敬できないお父さんなのだ。

こんなお父さんとの数日間における逃避行のお話し。お父さんは行く先々でも無計画な行動(本人はキチンと計画しているつもりなのだが・・・)を取り、やっぱりダメなお父さんなのだが、ハルはそんなお父さんに一種母性愛のようなものを抱きはじめる。
このあたりのハルの微妙な心情の変化は読んでいて心洗われます。
この本は結果ではなくプロセスを感じ取って欲しいです。「誘拐したあとどうなるのか」「犯人(お父さんだけど)の要求は何か」とかそういったものはどーでもいいのです。
どっちかといえばりょーちは、このお父さんにそっくりな無計画且つだらしない人間なのでどうしてもお父さんに感情移入しちゃいます。
子供は両親を選べない。ならば、両親も子供も歩み寄って家庭を築くべきなのはわかりますが、どーしても立ち行かない場合もあります。この物語のお父さん、お母さんが離婚したとしてもハルは元気に育って欲しいし、たまにはだらしないお父さんとも会って「あ、またこんなことしてる」とだらしなさを確認するだけでもいいので、会話をしてほしいと思いました。
ラストもほろりとさせます。とてもキレイな気持ちになる作品でした。

角田光代さん、素晴らしい作品をありがとうございました。



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posted by りょーち | Comment(10) | TrackBack(6) | 読書感想文
この記事へのコメント
りょーちさん
初めまして。TBありがとうございますー。こちらからもTBさせて頂きました。
よかったですよねー。キッドナップ・ツァー。
活字中毒ではあるんですが、最近ミステリーから離れていたんですが、りょーちさんの感想文読んでミステリーが読みたくなりました。また読みにまいります。
Posted by ミメイ at 2004年11月09日 14:44
はじめまして。
この度は、トラックバックありがとうございました!
角田光代さん、いいですよね。
中でも、私もこの作品は一押しです。
これからも、よろしくお願いします。
Posted by ゆう at 2004年11月09日 19:36
ミメイさん、こんばんは。はじめまして、りょーちと申します。

>よかったですよねー。キッドナップ・ツァー。
久々にかなりの「アタリ」でした。ホントによかったです。

>活字中毒ではあるんですが・・・
活字中毒と聞くとりょーちはどーしても、椎名誠さんの「もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵」を連想してしまいます(^^; これもカナリよかったです。

あ、あと、ミメイさんのページのプロフィールのところにあります「最近のニュースなこと」のリンクがちょっとおかしなことになってます(^^;

作家さんだけあってミメイさんのページのレビューは素晴らしいですよね。お薦めされている本はどれもホントに読みたくなってしまいます。

今後もちょくちょく(コッソリ)拝見させていただきます。
ではでは。
Posted by りょーち at 2004年11月09日 19:53
ゆうさん、こんばんは。りょーちと申します。はじめまして。

>角田光代さん、いいですよね。
>中でも、私もこの作品は一押しです。

ふむふむ。
角田光代さんの書籍を拝読させていただくのは初めてなのですが、はじめての本がこの本でとてもよかったです。

あと、ゆうさんのページで奥田英明さんの「邪魔」を読まれているのを拝見いたしました。
こちらはキッドナップツアーの対極にあるような小説ですが、これもかなりよかったです。後ほどまたもや(勝手に)トラックバックさせていただくやもしれません(^^;

Blogをはじめて一番嬉しいことは、見知らぬ方々と同じ本を読んだ感想の一部を共有できることかなと思いました。

今後もちょくちょく(コッソリ)拝見させていただきます。(って先ほどのコメントと同じだ・・・ うーむ)
ではでは。
Posted by りょーち at 2004年11月09日 20:01
りょーちさん。
プロフィールのリンクのこと、全然気づいてませんでした(汗)教えてくださってありがとー。感謝します!
Posted by ミメイ at 2004年11月10日 14:00
こんにちは。
「邪魔」は思いのほかよかったですね!
今、とても旬な作家さんなので他の作品も読んでみたいと思ってます。
トラックバック?どーぞどーぞ!!!

私も同じ本を読んでみなさんがどんな感想をお持ちなのか非常に興味があります。
三者三様、感想が自分と両極端であってもそれはそれでおもしろいですよね!

これからも、どうぞよろしく!!

Posted by ゆう at 2004年11月10日 14:32
>プロフィールのリンクのこと、全然気づいてませんでした(汗)
>教えてくださってありがとー。感謝します!

直ったようでよかったです(^^;
創作活動頑張ってくださいね。

ではでは。
Posted by りょーち at 2004年11月11日 16:01
ゆうさん、こんにちは。

>トラックバック?どーぞどーぞ!!!
ということでトラバさせていただきました(^^;

>私も同じ本を読んでみなさんがどんな感想をお持ちなのか非常に興味があります。
>三者三様、感想が自分と両極端であってもそれはそれでおもしろいですよね!

そーですね。実は今自分で書評を書くよりも他の人の書評を読むのに忙しい感じです。
人の書評を読むのは自分が書くより数倍楽しいです(^^;

さて、googleでまた書評検索の旅にでかけるか・・・
ではでは。
Posted by りょーち at 2004年11月11日 16:06

わたしも読みました!
今年の読書感想文に書くつもりです。
すばらしくいい文章ですねわーい(嬉しい顔)
少し参考にさせてもらいます。
Posted by のぞみ at 2009年08月31日 21:14
のぞみさん、こんにちは。りょーち@管理人です。
>すばらしくいい文章ですね
そ、そーですか(^^;
おほめいただきまして光栄です。
読書感想文の参考にはならないかもしれませんが、なんだか家族の大事さを再確認したくなる一冊でした。
ではでは。
Posted by りょーち at 2009年08月31日 23:13
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