2004年11月01日

上田早夕里:「火星ダーク・バラード」 このエントリーをはてなブックマークに追加

火星ダーク・バラード (ハルキ文庫)
上田 早夕里
角川春樹事務所
売り上げランキング: 50356

りょーち的おすすめ度:

今年は肉眼で火星が見えるほど地球と火星の距離が近づいた年だった。
空を見上げて一際明るい赤く輝く星に昔の人は恐怖や憧れなどを抱いたのだと思う。SFの世界では身近な惑星である火星にはもちろん蛸の姿をした火星人はいない。近未来に人類は火星へとその居住範囲を広げた。火星はテラ・フォーミングという技術により地球人が住める環境へと作り変えられ火星の開発が進められている。
この物語は、人類が火星に進出後かなりの月日が経った時点での物語である。

事件はその火星を舞台にして起こる。PDの水島烈は後先考えずに突っ走って組織に馴染めないタイプ。ある日、女性のみを狙う殺人犯のジョエル・タニをめでたく逮捕したが、あろうことか護送中の電車に絶滅したはずの恐竜が出現する!凶暴な恐竜に水島は立ち向かうが相棒の璃奈を殺され、ジョエルは逃走してしまう。更にジョエル逃亡幇助、璃奈殺害の罪で身柄を拘束されてしまう。真実を暴くため水島は自力で捜査を開始するが調査が進むにつれ、同じ電車に乗っていたアデリーンという美少女に出会う。アデリーンは「超共感性」という特殊な力を持っており、自分は90%以上が人為的に組み替えられた遺伝子から作られた人間であると話す。
アデリーンの話しから類推すると「超共感性」とは他者の力を吸収・増幅し実在化させるような力のようである。
アデリーンのような力を持つ別の人類であるプログレッシブは他にも何名かいるようであるが、アデリーンは特に強い力を秘めている。プログレッシブを作り出す計画は地球政府主導ではなく火星政府の独自の判断によるものであり、更に真の主導者はアデリーンの父、グレアムである。
グレアムが何故プログレッシブの計画を進めたかなど読んでいて、「うーむなるほど」と思う場面もあった。本書は、水島とアデリーンが主人公といえると思うが、りょーちはこのグレアムなるおっさんに結構興味をひかれた。もしグレアムと同じ経験を受けたなら、十分な知識と資金力・技術力・政治力があればグレアムと同じ道を辿ってしまうかもしれない。
また、彼女の「超共感性」を開発するための学校の教官のジャネットの卑屈さや、水島を助けるつもりがあるのかないのかわからないユ・ギヒョンの言動など、魅力あるサブキャラも見逃せない。
また男性が女性を守る時代は終わったなーとも思った。このあたりは作者が女性だからとかそういうことでもない気がするばい。

本書は第四回小松左京賞を受賞している。ラブストーリーっぽいSFって感じである。(でもしっかりSFしてますよ)
2004年11月1日時点で次回作の「ゼウスの檻」の刊行が決定しており、ちょっと買ってみようかなーという気になっている。
今後の活動が楽しみな作家さんである。頑張ってくださーい!

あ、あと一言。ジョエルの名前は本文中では「ジョエル・タニ」と記載されていたが、帯の解説には「ジョエル・タキ」と書かれていた(細かい?)。校正よろしくお願いいたします・・・

上田早夕里オフィシャルページ

人気blogランキングに参加中です。読み終わった際は、えいっと一押し → 人気blogランキングへ




posted by りょーち | Comment(0) | TrackBack(1) | 読書感想文
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


上田早夕里
Excerpt: Counter: 0, today: 0, yesterday: 0 上田早夕里 † 名前:上田早夕里(うえださゆり) 【blogmap】 生年月日: 出身地: 受賞歴: 公式サ..
Weblog: PukiWiki/TrackBack 0.1
Tracked: 2005-01-05 11:28