2008年04月03日

服部真澄:「エクサバイト」 このエントリーをはてなブックマークに追加

エクサバイト
エクサバイト
posted with amazlet at 08.04.03
服部 真澄
角川書店
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りょーち的おすすめ度:お薦め度
久々に服部真澄の作品を読んでみた。「龍の契り」「鷲の驕り」「ディール・メイカー」「バカラ」「エル・ドラド(旧題はGMO)」と読んでみて、まあそんなに嫌いな作家ではないのでほぼ惰性的に読み薦めてきた感がある。

タイトルにもなっているこのエクサバイト。コンピュータのデータ量をあらわす単位のよーである。
コンピュータのことがあまりよくわかっていないりょーちとしては、そーいえば昔、エグザバイトっていうテープメディアがあったなぁってのを思い出し、ちょいとぐぐってみたらまだ存在していた。

「VXA 230M X23」160GB/320GB って全く以ってエクサバイトじゃないじゃん?
で、エクサバイトはどのくらい大きいのかってのを更に検索したら国際単位系なるものがあることを知った。そんなものがあるのか?
1024メガバイト=1ギガバイト
1024ギガバイト=1テラバイト
1024テラバイト=1ペタバイト
1024ペタバイト=1エクサバイト
1024エクサバイト=1ゼタバイト
1024ゼタバイト=1ヨタバイト
らしい。
ってことで、エクサバイトとは、まあ、なんとなく大きい気がする。

で、肝心の小説としての「エクサバイト」はどんなお話しか。

西暦2025年に情報化社会ってのがかなり進んで人々の中に「ヴィジブル・ユニット」と呼ばれる超小型カメラが登場した。ヴィジブル・ユニットには記憶メモリが搭載されており、人生の全ての事象を記憶できるほどの容量を有している。ヴィジブル・ユニットを作ったのはグラフィコム社という世界的な会社。
「誰がそんなものを好き好んで装着するのか?」と思ったあなた。多分正常な思考の持ち主だと思います。2025年は個人情報保護法が更に強化され、個人に関する情報の殆どは守られているっぽいので、逆に個人に関することが記録しづらい世界になっているよーだ。まあ、今の世の中でも一方では個人情報が晒されるのは気分が悪いと言いながらも、個人がブログなどで情報を発信している。この考えが更に進んだものと思えばよいっす。
ユニットに記憶された膨大な情報は人が死んだらどういう扱いになるのか?本書はこのあたりの個人情報の扱いに関して「こんな考え方もあるんだねぇ」と思わせる一冊。

映像製作会社「イエリ」の経営者であり世界的な映像プロデューサのナカジの元に「エクサバイト商會」という怪しげな会社から共同事業を持ちかけられる。エクサバイト商會の考えるビジネスはユニット装着者が死んだ際、死者からユニットを回収し、限りなく正確な歴史を再構築しましょうというビジネスのようである。
本書を読みながら「うーむ、誰がこんなビジネスに乗ってくるのか?」とも思ったが「自分の記録が歴史上に残るかも」という売り文句が効いたのか蓋を開けてみればかなりの数のユニット提供者が集まった。
しかし、「ナカジ達のビジネスは大成功。よかったね」という話しで終わるはずはない。横槍を入れてきたのはヴィジブル・ユニットを開発しているグラフィコム社である。
まあ、こっからは「グラフィコム社」と「エクサバイト商會」の対決になり、ナカジはどっちに付くか悩んじゃうよって感じにストーリーが流れて行く。
本書で面食らったのはナカジの実の母親のクニコの存在。ナカジの母のクニコは世界的に有名な戦場ジャーナリストである。このクニコのヴィジブル・ユニットはとても価値あるものとして扱われている。世界的に有名なクニコのユニットに何が記録されているのかを人々は知りたいらしい。

ってことでまあ、最後まで読んでみた。
うーむ、そんなに悪い感じはしないんだけどなんだかしっくりこない。服部真澄の作品の中ではかなりライトな部類に入るのかなと思われるが、分量が多い、少ないの問題ではない。本書のテーマは世間的には「ライフログ」というテーマに分類されると思う。不満なのは何故かなと考えていたのだが、服部真澄なら「ライフログ」をもっと別の視点から書いてくれるよーな気がしたのだ。確かに小説としては完成されているが、うーむ、何といえばいいのか・・・読者の想定の範囲内におさまっている印象がとても強い。
あの「龍の契り」「鷲の驕り」を書いた服部真澄だからこその題材の料理の仕方ってものを見ることができなかった気がする。
2002年、2003年のWIRED VISIONの記事でさえこんなことを指摘しているんだよね。服部真澄にはもうちょっと突き抜けて欲しかったなーと思ったりしたっす。
さらに「エクサバイトという単位でホントに人間の一生を記録できるのか?」というのが最後まで納得いかなかった。もっとたくさんの容量が必要じゃないのかなーと思ったよ。

とまあ、いろいろいちゃもんを付けた書き方になってしまったが、コンピュータにあまり詳しくない方が読むにはお薦めしてもよいかもしれない。
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