2005年10月06日

三崎亜記:「となり町戦争」 このエントリーをはてなブックマークに追加

となり町戦争
となり町戦争
posted with amazlet on 05.10.06
三崎 亜記
集英社 (2004/12)
売り上げランキング: 6,884
おすすめ度の平均: 3.21
4 問題提起
3 となり町戦争は起こらなかった
3 何とも言えない


りょーち的おすすめ度:お薦め度

こんにちは。ギャグ・メッセンジャーズのボイラー須間です(嘘です)。

「戦争」とは物騒なタイトルだが、内容は終始淡々とした雰囲気で進んでいく。

僕、こと北原修路は舞坂町に住むごく普通のサラリーマン。
北原修路は舞坂町の広報紙により、となり町との戦争が始まったことを知る。
とは言っても街中で銃撃戦などが行われているわけでもなく、今までとまったく変わらない町の風景であり、修路はいまいち戦争を実感できていない。

そんな修路の元に町役場からこんな通達が届く。


23と戦第75号

総務課となり町戦争係

北原修路 様
舞坂町長

矢可部 岩恒


戦時特別偵察業務従事者の任命について


標記の件について、下記のとおり辞令交付式を行いますので、ご出席いただきますようお願いいたします。



1. 日  時成和23年10月1日午前10時より
2. 場  所舞坂町役場 4階会議室
3. お問い合せ舞坂町総務課となり町戦争係
4. その他当日は印鑑をお持ちください


以上

お問合せ先    

舞坂町総務課となり町戦争係    

TEL 30-1211    



詳しいことはよくわからなかった修路は、漠然ととりあえず行ってみるかという気になっていた。会社にも既に話しが通っており、主任も了承済みのようである。辞令交付式の前日、役場の総務課から辞令に関しての確認の連絡がある。
担当は香西さんという女性で、魅力的な声に修路もちょっと楽しみが増えた感じ。

辞令交付は役所のイメージどおり事務的に簡潔に行われた。はじめて会った香西さんは全ての仕事を事務的に淡々とこなす印象だった。

実際修路が任命された「特別偵察業務」とは通勤途中に「となり町をキョロキョロ見回る」ことだった。偵察報告は役場に定期的に報告する必要があるのだが、何を報告してよいのか分からず、とりあえず修路は目に付いたものを片っ端から書き込んでいく。
暫くして香西さんから連絡があり、記録表の書き方の注意とともに修路の偵察報告により、町の被害損害率が3.6%ほど下降したとの報告を受ける。

#ってどーやって3.6%ってはじき出すの?

その後、修路は業務異動となり「戦時拠点偵察業務従事者に任命換え」され「となり町戦争推進分室勤務」を命じられる。
要するに舞坂町からとなり町へ引っ越して敵地に乗り込むことになるようだ。しかも何故か香西さんと夫婦として一緒の部屋に住むという不思議なことになっているよーだ。

この本の魅力は箇条書きにしてみるとこんな感じになるのかなぁ。

  • 日常生活(非戦争状態)と非日常生活(戦争状態)の境界線の曖昧さ

  • 香西さんという女性の不思議さ



日常生活と非日常生活の境界線はホントに曖昧だ。日本も第二次世界大戦の最中は国民は戦争をいやだと思いながらも、どの状態が普通でどの状態が異常なのかという判断が日本中で麻痺していたのではないか。
本書のタイトルの「となり町」の部分が日常、「戦争」の部分が非日常となっているわけだ。両者が共存している不思議な世界を上手く書いていると思う。
この「となり町戦争」では主立って戦争による被害者そのものは見えないのだが、数字としては報告されている。どこかの誰かが死んでいるという数字だけの報告では実感がわかないが、そのうちの1人でも知り合いが含まれていると数字の意味するところはかなり異なってくると思う。

そしてこの香西さんという女性のキャラクターの不思議さが本書を面白くしている要因のひとつでもある。全てにおいて事務的な香西さんと修路の奇妙な共同生活の中で、夜の生活までもが事務的であると知った修路はショックだったと思う。

「公共事業としての戦争」ってのは今現在でも世界のどこかでリアルに行われているのではなかろうか。そう考えると本書は非常に意味深い問題定義がされた作品なのかなと思う。
この不思議な世界観を味わえてなかなか有意義な一冊であった。

三崎亜記さんの次回作がちょっと楽しみだな。(別のテイストの作品も読んでみたくなった)
文字を一文字づつ読むというより不思議な世界観に体をあずけるよーに読んでみてはいかがでしょう?

ちなみに、本書は 第17回「小説すばる新人賞」受賞作品 だったようですが、上記のサイトを見てみると、作者は男性だったんですね。亜記っていう名前が女性を連想させるよーな名前だったのでてっきり女性だと思っていました。そーいえば 平山瑞穂:「ラス・マンチャス通信」 の時も、平山瑞穂さんは女性だと思っていましたよ・・・orz
posted by りょーち | Comment(4) | TrackBack(4) | 読書感想文
この記事へのコメント
『ディックの本棚』のディックです。
TBありがとうございました。
「日常生活と非日常生活の境界線の曖昧さ」という視点がおもしろいな、と思いました。
戦争状態と非戦争状態でなくても、そうした境界線の曖昧さというのはあちらこちらに潜んでいるな、と考えてみると、おもしろいですね。
Posted by ディック at 2005年10月08日 15:58
ディックさん、こんにちは。りょーち@管理人です。
コメントいただきありがとうございます。

本書はこの日常と非日常がない交ぜになった不思議な世界観に浸るだけでも楽しい本ですよね。

ではでは。
Posted by りょーち at 2005年10月08日 23:49
『ペンギンカフェ』の管理者です。
トラックバックありがとうございます。

この本を読んで日常的な中に非日常的なこと(戦争)
があり不思議な感じがしました。
文の持って行き方によってはこういう戦争もあり得る
と思えたのに、「なんで!?」と思うところが多すぎてそうこうしているうちに読み終わった感じです。

でも三崎亜記さんが次の作品をだせば読みたいと思っています。

Posted by ペンギンカフェ at 2005年10月12日 23:17
ペンギンカフェ管理者さま。こんにちは。りょーちと申します。コメントいただきありがとうございました。

この本やはり不思議な感じですよねー。
へんな空気なんですけど、妙に心地よい感じ。

私も三崎亜記さんの次回作が出版された暁にはおそらく買ってしまうと思われます。

ではでは。
Posted by りょーち at 2005年10月13日 18:09
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