貫井 徳郎
講談社 (2003/05)
売り上げランキング: 60,957
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りょーち的おすすめ度:

こんにちは。あした順子・ひろしです(嘘です)。
本書、「被害者は誰?」は貫井徳郎の「明」の部分が表に出た小説だな。下記4編が収録されている。
・被害者は誰?
・目撃者は誰?
・探偵は誰?
・名探偵は誰?
「慟哭」や「修羅の終わり」などの暗く沈んだ世界観とは全く違う引き出しを見せてくれた。本書の「被害者は誰」であるが、購入していない方でもSo-netの e-NOVELS で販売されている貫井徳郎さんのコーナーで冒頭の文章が読めちゃいます。(Acrobat Readerが必要)
売れっ子作家である吉祥院慶彦とその友人、警視庁捜査一課の桂島刑事とが繰り広げる探偵小説である。表題作と合わせて計4編からなるこの小説。短編(中編?)とはいえ、そこは貫井徳郎。キチンと仕事をしてくれている。
貫井徳郎の性格なのか、吉祥院慶彦の性格なのかは不明だが、読者をいい意味で悉く裏切ってくれる。
サブタイトルが必ず「○○は誰?」って形なので、本書は推理小説の中でもフーダニット【Who (has) done it ?】というカテゴリであろう。通常のフーダニットでは勿論犯人を推理するのだが、本書では犯人以外の登場人物を推理する(ようにみせかけて実は犯人を捜すのだが)形式になっている。
●被害者は誰?
慟哭を読まれた方なら貫井さんの叙述トリックを一度は体験されているはずなのだが、ここではっきり言ってしまうとこの「被害者は誰?」も叙述トリックです。しかしそれを分かって読んでもかなり上手く出来ていると思う。不倫の末路はこんな感じなのか?
亀山俊樹の庭から死後10年以上は経過している女性の白骨死体が発見される。犯人は亀山俊樹なのだが、肝心の被害者の身元が分からない。
桂島は吉祥院にこの事件についての見解を聞きに行く。吉祥院は被害者の手記から思いがけない結論を導き出す。
●目撃者は誰?
推理小説に出てくる探偵は必ず事件を解決するものだが、実はこの「目撃者は誰?」では事件が解決されていない。ミスリードのまま終わっているというちょいと珍しいパターンである。不倫相手の女性のあっけらかんとしたキャラクターに救われた感がある。意図的なディレクション(結果的にはミスディレクションなのだが・・・)と吉祥院慶彦の快刀乱麻を断つ推理によって一応の解決はみるものの、その真実は意外な内容であった。
これを読む限りでは探偵小説は決して犯人が誰という正解を出さなくてもよさそうである。そこを小説としてキチンと読ませるところに貫井徳郎の上手さが伺える。
●探偵は誰?
これは、劇中劇のような感じになっている。吉祥院慶彦はモデル並みの美貌を持っているようだが、学生時代にホントにモデルクラブに所属していたようだ。そこで起きた殺人事件を見事に吉祥院が解いたというエピソードを小説にしてみたらしい。実話を元に書き起こしたこの小説。吉祥院が勿論この謎を解いたわけだが、桂島に小説の途中まで読んで誰が自分(吉祥院)かを推理しろという難題。勿論登場人物などは全て架空の名前を使っている。
モデルクラブに所属する4人の青年が事務所の社長の誕生パーティーのため社長の別荘に招待される。しかし、その夜に何者かに社長が殺害されてしまう。外界からの侵入者もなく、別荘内に招待されたメンバーの中に犯人がいる。果たして犯人は誰か? また、探偵は誰か?
犯人探しと探偵探しという二つの「フーダニット」。途中途中で作中の小説が何度か途切れて桂島くんの迷(?)推理が繰り広げられるのだが、お約束で全く見当違いの解答を披露する。
●名探偵は誰?
最後のこの一作は「おまけ」的な内容になっている。(ボーナストラック的なものと思ってもらえればよい)
先に記載した「探偵は誰?」に続き今度は「名探偵は誰?」かというタイトル。上記の3作品とは異なる手法でこれは書かれている。
事故により入院している「先輩」と語り部となる「僕」。加害者の若い女性は見舞いに来るが病院でなにやら怪しい行動を取っている。読んでいて直ぐに気づくと思うので、もうここで言ってしまうと、上記の3作品の「先輩」と「僕」との関係とは異なるものである。しかし、それが分かったからといって面白みが減るわけでもない。
最後は吉祥院が見事な推理を披露するのだから。
総論としては、貫井徳郎さんだけに商業小説としてある一定のレベルはキープしている。しかし、もうちょっと唸らせて欲しかった。再読ということもあり「騙されるために読む」ような姿勢で読み始めたのが原因か?
吉祥院と桂島のコンビはこれだけで終わらせるのはもったいないので、是非シリーズ化を希望っす。
#貫井徳郎さん、りょーちとしては明詞シリーズの続編を希望です!
#って、貫井さん、見てないか・・・orz