シャドウ (ミステリ・フロンティア)
posted with amazlet on 07.11.19
道尾 秀介
東京創元社 (2006/09/30)
売り上げランキング: 44117
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りょーち的おすすめ度:

こんにちは、斎藤道三です(嘘です)。
うーむ、最近読書に割り当てる時間が少なくなっているっす(忙しいからか?)。
そんな中、本を読む女。改訂版 のざれこさんの 本を読む女。改訂版 | 「シャドウ」道尾秀介 を読んで、是非とも読んでみたいと思ったので読んでみたっす。
「シャドウ」の感想をネタバレ抜きで書くのは結構難しい。
推理小説のテクニックとして、叙述トリックというものがある。
推理小説は小説なので読者は1ページ目から順番に読み、最終ページまで到達し物語が終わるようになっている。読者は登場人物の体験や時間、空間を共有し、ストーリーに入り込んでいく。一般的に叙述トリックとは、作者が「意図的に読者の思考をストーリー上の事実と異なるベクトルにミスリードするような記述方法」のことを指し示す。
何故こんなことを書いたかといえば、本書にもこの叙述トリックというものが使われている(と思う)からである。
概して叙述トリックを利用したミステリー小説は、読む前にその小説が実は叙述トリックを使っていることが判明すると、ストーリーとしての面白みが半減してしまうことがよくある。しかし、本書「シャドウ」ではそのような心配は全く無用である。
しっかり騙されて欲しい。
小学生5年生の我茂凰介は母親、恵を癌で亡くした。
相模医科大学で精神科医に勤める凰介の父、洋一郎は悲嘆に暮れながらも恵の葬儀を執り行う。葬儀には医学生の同期である、水城徹とその妻の恵、徹と恵の娘の亜紀も参列していた。
鳳介の父母と恵の父母は共に同じ大学で面識があり、二つの家族は文字通り家族ぐるみの付き合いをしていた。凰介と恵は同じ小学校に通い、所謂幼馴染である。
母の死後、凰介は夢とも現実ともつかない不思議な光景を目にするようになる。自分の見ている光景が何であるのかを理解できない凰介。そんな中、亜紀の母親、水城恵が自殺してしまう。凰介の見る不思議な光景の正体は何か?
うーむ、終わり方がちょいと切ないが、なかなかよい話しであった。
途中、凰介の父の秘密と水城亜紀の抱える秘密がオーバーラップすることで読者の思考を「そっちの方向」へ持って行くところが自然に書かれており、まんまと騙されたっす。
ストーリー構成もこの内容からすれば、非常に無駄が少なく、すんなり読めるので結構よいかも。いろんなところで話題になっているだけあって、なかなかよい作家さんだな。
ざれこさんも言及されているが、ともすれば、全て暗い話しで終わりそうな本書に「少年の成長」という部分に唯一未来を託したくなるっす。
さて、本書の「シャドウ」ってタイトルは、「人間の暗部」=「影(シャドウ)」とも勿論読めるのだが、「もうひとつの人格」=「影(シャドウ)」とも読めなくもない。前者の場合は自分が意識していることが多いと思われるが、後者の部分は無意識(意識下)にある「もうひとつの人格」という意味を考えながら再読すると、本書の別の読み方ができるかもしれないねぇ・・・
道尾秀介さんの別の作品も今度読んでみよう。
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