新堂 冬樹
徳間書店 (2005/03/19)
売り上げランキング: 59,964
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おすすめ度の平均: 




こんにちは。大阪百万円です(嘘です)。
新堂冬樹の小説は何時も救いようのない人物が登場する。
本書「溝鼠」では救いようのない家族の物語である。生理的に拒絶するようなストーリーにも何故か惹かれて次へ次へとページを繰ってしまう自分がいた。
自己の愉しみをそのままビジネスとする復讐代行屋「幸福企画」の経営者、鷹場英一はカネのためならどんな事でも行う。社員は英一を含め八木、中丸、沙耶の4名。幸福企画へやってくる客はみんな「金を払っても復讐したい人間がいる奴ら」ばかりがやってくる。
人の不幸とカネが何より大好きな英一にとって趣味と実益を兼ねたビジネスであったが、赤富銀行の田代から依頼されたハニーピーチのデート嬢の藤木安菜への復讐代行を請け負ったことにより事態がかなり転換する。田代を裏で操っていたのは英一の実の父の源治であった。
英一は源治を幼少の頃から忌み嫌っていた。幼い英一に数限りない暴力を振るい、しかも英一が愛する実の姉の澪にまで手を出す始末であった。
英一は現在は行方不明となった姉の澪を一人の女性として愛し続けていた。その澪の消息を源治は知っていると聞き英一は源治から持ちかけられた怪しい儲け話に乗ることになった。
しかし、実はこの儲け話を始めに持ちかけたのは澪であったのだ。澪は現在暴力団組長の宝田の情婦となっていた。澪は偶然知った医大教授の坂峰が大京大学医学部へ裏口入学の斡旋をしていたということを握り、それを逆手に儲けようと企んだ。そして自分が自由の身を手に入れるためにでもあった。
物語は坂峰から脅し取るためのカネを中心に回り始める。
源治、澪、英一の三者は表面上は坂峰のカネを奪い取るとために協力しているように見えるが、彼ら三人は家族とは思えないほど、互いを信用していない。唯一英一だけが澪を信頼していた。いや、信頼しようとしていた。そして場面場面でことごとく裏切られるのだ。
この小説で最も嫌悪すべき人物を一人挙げろと言われれば間違いなく、「澪」を挙げる。澪の自己愛は徹底している。また、元を正せば全ての現況は澪であり、英一も源治も澪の手の中で結果的に踊らされていた感もある。
宝田の子分で澪に密かに思いを寄せているある本郷に至っては、本来組長の女に横恋慕することはこの世界ではあってはならないことと知り、澪に騙され組長を裏切ってしまう。自分がこの世の中で最も美しいと信じて疑わない(って凄いことだが・・・)澪は全てを思いのままにしなければ気がすまない。
源治に至っては幼い澪と英一に鬼畜ともいえる行為をし続けてきた。そして9年ぶりにあった実の子供に向かっても親と思えぬ行動を繰り返す。この親にしてこの子達ありである。りょーちはホントにこの家庭に生まれなくて良かったよ。
本書には特にどんでん返しを狙ったストーリーはない。(いや、あるといえばあるが、おそらく殆どの読者が読んでいる最中に気づくと思われる)
ストーリーよりもこの変態的とも言える描写や目を覆いたくなるような過激な行為が脳裏に焼きつく小説である。逆に言えばこれらの「気持ち悪さ・気色悪さ」が強調されすぎたことは小説としては失敗なのではないかと感じてしまう。
しかし、これはおそらくストーリーを読ませるような小説ではないのだろう。登場人物の狂気の行動を共有するための文字列(呪文)なのだと感じた。
しかし、この呪文の効力は恐ろしいほど効果があり、それが新堂冬樹の小説を読ませる原動力になっているのではないかと思う。
ラストに見せる英一の動きは実はりょーちにはなんとなく「あ、こうするんじゃなかろうか?」というのは予感できた。ただ、全く当たって欲しくない予感だっただけに「おいおい、ホントにその終わり方?」と自問自答してしまった。
なお、新堂冬樹を未読の方はこの本を始めに買うことを薦めません。
そして、なんと恐ろしいことに 「毒蟲vs.溝鼠」 という続編が出てしまった・・・
読み始めたが、やはりエグイ・・・
はじめの方のページでもう、「新堂冬樹節」炸裂である。
かなり面白そうじゃよ!
読み終わったら感想を書いてみるばい。
嫌悪感と不快感の真っ只中におかれ、現実世界と重ねて人間不信に陥りました…特に女に対して。
体力無ければ読めません。2度目は無理。誰にも共感できない小説なんてあるんだと衝撃を受けました。
初めて読んだ新堂冬樹さんの本が溝鼠とは・・・
まあ、実は新堂冬樹さんの本はどれもこんな感じのようです。このあり得なさが逆に売りになっているようです。
共感できないからこそ、小説の架空の話として怖いもの見たさで読んでしまうような気がします。