2004年09月12日

新堂冬樹:「カリスマ」 このエントリーをはてなブックマークに追加

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りょーち的おすすめ度:

怖かったし、気持ち悪かった。

この本でいう「カリスマ」とは「教祖」のこと。果てしなく暴力的で、果てしなく汚く、情けない。人間のこういった弱い部分は普段自分自身でも気にせず生きている。新興宗教に引っかかる人というのはいろいろなタイプがあるようだが、宗教自体を否定しているのではない。ただ、宗教にのめりこんでしまう人はある程度分類できる。
本来宗教は目的ではなく手段であるはずである。宗教活動を行うことが目的じゃなく、どっかのなんとかって神様を崇めることでよりよい自分に近づくってことじゃないかと感じる。
ただ、この「よりよい自分」ってのが人によって全く異なり数学の公式に当てはめて答えがでるようなものでもない。要は宗教活動の結果は非常に見えにくいのである。これは新興宗教に限らず殆どすべての宗教活動において言えるのではないか?
信者は救われたいのだ。特に宗教活動にのめりこむ人々は周囲が見えなくなっている。「もう宗教しか道はない」と思っちゃう。ここが恐ろしい。
一般の人々は何故こういった壊れちゃう人が頻出して社会問題になっているかってのはよくわからないと思う。当事者意識がないからってのもあるんだけど、この本を読むと「人が堕ちていくプロセス」が非常にリアルに書かれている。そこが気持ち悪い。
何故、新堂 冬樹という作家はここまで人の心をわかっているのか? その洞察力と圧倒的なリアリティはどうやって手に入れたのか?
本書に登場する新興宗教「神の郷」を主催する神郷宝仙は幼少の頃、父と母を失う。このシーンが冒頭に書かれているが、「いやー、もう気色悪いっす。恐ろしいっす。えげつないっす」。「黒板を爪でキーッ。ギギギーッ」って感じ。ここの文章だけでも読んでおく価値があると思う。新堂 冬樹の筆力は確かなものだと感じる。この本を読むにはおそらくそれなりのパワーが必要。得体の知れない何かが本の中にいて、読者のパワーを吸い取ろうと狙っているのではないかとも思う。恐ろしい・・・
さて、本書のタイトルでもあるこの「カリスマ」という言葉とは裏腹に、新興宗教団体の主催者、神郷宝仙にカリスマ性は全く見出せない。でもこの本のタイトルはりょーちも「カリスマ」でいいと思う。

オドロオドロシイ新堂 冬樹ワールドを堪能するのに持って来いの一冊。作者の書籍をまだ一度も読んだことのない人はこの本からはじめてください。

ありです。
posted by りょーち | Comment(8) | TrackBack(3) | 読書感想文
この記事へのコメント
新堂さんはどれもおもしろいですが、本当にこの作品は傑作ですよね!
Posted by きお at 2004年10月17日 15:13
きおさん、こんにちは。
りょーちです。はじめましてー。
コメントいただきましてありがとうございます。

「カリスマ」はりょーちの読書歴の中でも結構上位にランキングされますねー(といってもそんなに本を読んでいるわけではないのですが)

気色悪さでいえば、No.1かも・・・
きおさんのサイトにもちょくちょくうかがわせていただきまーす。(Blog上で小説を書かれているのですか?)
ではでは。
Posted by りょーち at 2004年10月18日 11:48
書店で何の気無しに手に取った「闇の貴族」で新堂ワールドへ傾倒し、その後「血塗られた神話」「ろくでなし」と来て4作目に読破したのが「カリスマ」。
その後に読んだ「鬼子」まで入れても、インパクトではこの本を超えるものはない。
人間の暗黒面というか、あらゆる欲望を赤裸々に描破した新堂冬樹の力量にただただ恐ろしさを覚えた。
ラストの救いようのなさがダメ押しで、2,3日何とも形容しがたい余韻が残ってしまった。
Posted by よね at 2005年10月23日 10:26
よねさん、こんにちは。りょーちと申します。
コメントいただきましてありがとうございます。
私は主人公の親の死に関する描写を読んでいる際、もう本を閉じたくなりました。ほんとに気持ち悪かったし怖かったです。
よねさんのご指摘のように、作者への畏怖の念とやるせなさの残る強烈なインパクトを与えた作品でした。
新堂冬樹ワールド全開でした。

ではでは。
Posted by りょーち at 2005年10月23日 10:45
りょーちさんこんにちは。
この本の凄さというのは、単に「怖い」「おぞましい」等の描写だけでなく、随所にユーモアが散りばめられているところも見逃せないですね。それがこの「お腹一杯」の作品を最後まで読ませる一つの要因かとも。
これが無いと、例えるなら人物描写を掘り下げた「黒い家」みたいな作品になってたかもしれません。
個人的には、準主人公とも言うべきサラリーマン一家の結末があんまりにも哀れで、読み終わった後しばらく呆けてました(苦笑)
逆にいうととことんまで突き放したような構成が、この作家の他との歴然たる差異なのでしょうね。
Posted by よね at 2005年10月23日 15:08
よねさんこんにちは。りょーちと申します。
>随所にユーモアが散りばめられているところも見逃せないですね

神郷宝仙の挙動そのものがユーモアに満ちているといえなくもないですよね。本書は明らかにある宗教団体を想定して書かれた物語だと思いますが、件の彼もこのような奇妙な言動・振る舞いだったのかもしれませんね。


Posted by りょーち at 2005年10月25日 08:44
こんにちは。以前別の記事でコメントさせていただいた者です。
おくればせながらもこの作品を読んだのですが、
私も思いきし新堂ワールドを堪能させてもらいました。
しばらく魂を抜かれてぼやーっとした日々を過ごしました。
サラリーマン一家の子供の行く末が気になります、
あぁ変な子供になりません様に。

ところで、その後ドブネズミを読んだのですが…
私にはvs.の方は体が痒くなりそうで読めなさげでございました。
また遊びに来ます☆
Posted by 山田 at 2006年07月09日 15:54
山田さん、こんにちは。りょーち@管理人です。コメントいただきましてありがとうございます。
>あぁ変な子供になりません様に。
うーむ。切に祈ります・・・

>痒くなりそうで読めなさげでございました
確かに分かります。毒蟲の方はもう登場人物の殆ど全てが人格破綻者のオンパレードで、その手法たるや、筆舌に尽くしがたい(って言っても小説で書かれていますが・・・)無茶のし放題です。
新堂冬樹の頭はどーなっているんでしょうね。
青少年にはオススメできない一冊かと思います。
ではでは。
Posted by りょーち at 2006年07月10日 16:10
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新堂冬樹
Excerpt: Counter: 0, today: 0, yesterday: 0 新堂冬樹 † 名前:新堂冬樹(しんどうふゆき)【blogmap|ウィキペディア|はてなキーワード|bk1|G..
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Tracked: 2005-01-05 10:42

読書感想「カリスマ」
Excerpt: 読書感想「カリスマ」 カリスマ (上) カリスマ (下) 【評価】★★★
Weblog: 三匹の迷える羊たち
Tracked: 2005-10-12 11:51

救わないメシア
Excerpt: 新堂冬樹氏『カリスマ』。 なんともすざまじい物語である。人というのはこんなことでこういう風に変わってしまえるのかと感心することしきり。オーム真理教などの新興宗教にはまってしまう人達ってこういうプロセ..
Weblog: ゲームと本と酒の日々
Tracked: 2005-10-24 04:04