2004年09月11日

伊坂 幸太郎:「オーデュボンの祈り」 このエントリーをはてなブックマークに追加

オーデュボンの祈り (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社
売り上げランキング: 2641
おすすめ度の平均: 4.0
4 オーデュボンの祈り・・・勇午の祈り
4 一気に読んでしまいました
4 人間の持つ善意、優しさ、夢を描いたモザイク画
4 シュールなままで
5 不思議ミステリー

りょーち的おすすめ度:

伊坂幸太郎さんの小説をはじめて読んだ。
読み終えた後で見つけたのだが伊坂幸太郎さんはこの『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞(平成12年)を受賞されている。

昭和46年5月25日生まれってことはまだ、33歳。若い(のかな?)

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか? (文庫裏表紙より)

■本土の住人
伊藤(主人公):仙台でコンビニを襲い逃走中に気を失い、気がついたら全く知らない島にいた。
城山:伊藤を追う警察官。恐ろしく凶暴な男。実は伊藤とは中学時代の同級生で頭は非常によいが、極悪人そのものである。
静香:伊藤の元恋人。仕事人間。
曽根川:伊藤より一足早く荻島へ到着。
■荻島の住人
轟:荻島と外界を唯一行き来できる熊男。伊藤を荻島へつれてきた人。
日比野:荻島に来てからの伊藤と行動をともにする。島の人間から変わり者扱いされている。
優午:荻島の喋るカカシ。喋れる(!)。未来のことが予測できる。
園山:変人画家。妻が死んでから「嘘しか言わない」ようになった。
三毛猫:木に登り天気を当てる。
桜:島内で唯一殺人を犯してもよいと法律で定められた人間。美しい男性。詩が好き。彼独自のポリシーで人を次々と殺す。
ウサギ:300kgはあるという女性。動けない。ウサギの夫は家から妻の様子を定期的に見に来る。
田中:足が不自由。鳥が好き。優午と友達。
草薙:郵便配達員。
百合:草薙の妻。「人の手を握ること」が仕事。
小山田:島の警察官。捜査能力は特になく、事件の際にはカカシの優午に犯人を聞き捕まえる。
佳代子・希代子:美しい双子の姉妹。
若葉:島に住む小さな少女。地面に耳をあて、心臓の音を聞いている。

読後の感想は。物語としてよくできていると感じた。この「よくできている」の感覚は外国の有名な画家の絵をみて「いいねえ」と思う感覚より、ルービックキューブが6面揃ったときの「お、できた」という感覚の中間っぽい感じ。
荻島に到着してからは、荻島の人々がばらばらに行動しているのだが、物語の終わりごろにその行動がピタリ、ピタリとはまっていく。
この感覚は推理小説を読む醍醐味のひとつでもあると思う。

荻島という島は仙台からかなり離れた場所にあり、実は100年以上も前から外界と交流がまったくない。荻島には「島の外から荻島に足りない大切な何かを持ってくる人がいる」と言う言い伝えがある。島内の人間は伊藤が外から来た人間と知り、それを期待される。
伊藤はこの島では殺人事件の探偵の役割を演じている。伊藤の考え方は実は作者の考え方でもあるのだが、作者は名探偵について以下のように感じている。
推理小説内の探偵は殺人事件があらかた終わったところで探偵が犯人がやっを見つける。名探偵がいることで殺人事件が起こるのでは?
これは興味深い考察である。

作者はこの小説で外界より隔離された荻島を一種の密室として機能させている。犯人はこの島の中に限られるのだ。このあたりの設定が非常にうまい。読者は荻島内の不思議なルールを伊藤と同様に自然に受け入れる。うまくこの世界に入り込むような工夫は例えば、常蔵常長という昔の人間の登場などにより随所にちりばめられている。

精巧に築かれた舞台と特徴的な役者が演じる「オーデュボンの祈り」という演劇に魅せられた。ミステリー嫌いの読者の方にも受け入れられる可能性もある。

最後に表題のオーデュボンとは野生動物の版画で知られる動物学者でリョコウバトなどの絵を数多く残している。
リョコウバトは残念ながら絶滅してしまった。昔大量にいたリョコウバトを打ち落とし絶滅追い込んだのは我々人間である。悲しむべきことだ・・・


posted by りょーち | Comment(14) | TrackBack(20) | 読書感想文
この記事へのコメント
TBありがとうございます。
この作品、数多くの伏線がばら撒かれているけど、
最後にはそれを全部回収してますよね。すばらしい!
僕はジグソーパズルがきっちり出来上がった感じがしました。
Posted by あおちゃん at 2004年10月25日 19:55
あおちゃんさん(でいいのでしょうか?)こんにちは。
コメントいただきありがとうございます。
(りょーち、勝手にトラックバックしちゃいました)

>この作品、数多くの伏線がばら撒かれているけど、
>最後にはそれを全部回収してますよね。すばらしい!
そーなんですよね。ミステリー読みには気持ちいい感覚なんですよね。この「カチッ」って感じ。

伊坂さんのほかの本も是非今後読みたいです。
ではでは。
Posted by りょーち at 2004年10月25日 20:13
トラックバックありがとうございます。
私も伊坂さんの作品はコレが初めてなのですが、他の作品もぜひ読んでみたいです。

こちらのブログではミステリ系を中心に扱ってらっしゃるようですね。
これからちょくちょく寄らせて頂きたいと思います♪
私の方からもいくつかトラックバックさせていただきました。
Posted by まんだ at 2004年11月19日 16:56
まんださん、こんにちは。りょーちと申します。勝手にトラックバックさせていただきました(^^;
伊坂さん、かなりありですよね。最近積読が多いためなかなか伊坂さんにたどり着けないのですが、「重力ピエロは必ず買う!」と心に決めております。
まんださんのサイトもまたこっそり覗きに伺います(^^;
ではでは。
#綾辻行人さんも読まねば・・・
Posted by りょーち at 2004年11月19日 17:44
はじめまして。トラバありがとうございます。こちらからもさせていただきましたのでよろしくです<(_ _)>
伊坂作品、「アヒルと鴨のコインロッカー」も購入してあるのですがまだ読めていません(泣)
またブログ読みに来ますね。MyBlogListにも登録させていただきますので〜(⌒▽⌒)
Posted by たいりょん at 2004年11月19日 18:03
たいりょんさん、こんにちは。りょーちと申します。
>伊坂作品、「アヒルと鴨のコインロッカー」も購入してあるのですがまだ読めていません(泣)
そーなんですかー。
りょーちも積読が多くて・・・(もはやコレクション?)
あ、あと、たいりょんさんのBlogで書かれていたhttp://yaplog.jp/kokamika/archive/20
の記事、りょーちも読みました。
結構参考になりました。
りょーちのサイトでもその記事を読んだ感想を(偶然にも)書いていたので調子に乗って(謎)トラックバックさせていただきました。
たいりょんさんのBlogで取り上げられていた小川洋子さんの「博士の愛した数式」も読みました。
まだこちらのサイトに感想は記載していないのですが、これもかなりインパクトありました。
また、おじゃまさせていただきまーす。
ではでは。
Posted by りょーち at 2004年11月19日 18:42
りょーちさんはじめまして。
TBどうもありがとうございました。こちらからもさせていただきました!

>ルービックキューブが6面揃ったときの「お、できた」という感覚の中間っぽい感じ

この表現に成程!と思います。
トリックが明かされていくあのなんともいえない快感が(゜∀゜)bイイ!
これだからミステリーはやめられないのですよ。

りょーちさんは「孤島パズル」を読んでられるのですね。
あれは私も大好きです!有栖川作品のなかで「月光ゲーム」と「孤島パズル」はゆずれない!
ミステリーの中で一番好きです。

それではまた時々覗きに来るのでよろしくおねがいします〜。お邪魔しましたっ
ヾ(=^▽^=)ノ

Posted by moji茶 at 2004年11月20日 20:02
moji茶さんこんにちは。りょーちと申します。
コメントいただきありがとうございます。

>「月光ゲーム」と「孤島パズル」はゆずれない!
これもこないだ読みましたがよかったですね。
江神&有栖シリーズは青春小説としても秀逸な作品ですよねー。
有栖川有栖さんもまだ積読がいくつかありますのでこちらも読まねば・・・

moji茶さんのサイトにもこっそりまた訪問させていただきます。
ではでは。
Posted by りょーち at 2004年11月21日 09:00
りょーちさん、初めまして
TB返し、ありがとうございますm(_ _)m

>ルービックキューブが6面揃ったときの「お、できた」という感覚の中間っぽい感じ

綺麗で見事なまとめ方ですよね。最近、なぞをなぞとして残し、読者に判断を任せる作品も増えてきましたが、私は最後に全て種明かしをしてみせるこういうサービス精神に溢れた本が好きですね。

またよろしくお願いします。
Posted by くろーん40 at 2004年12月09日 16:53
くろーん40さんこんにちは。りょーち@管理人です。

りょーちも、最後に全て種明かしをしてくれる作品がいいですね。
折角買ったのに読んでもよくわからないってのはちょっと残念。
(「ドグラ・マグラ」とか「虚無への供物」はちょっと別格かもしれませんが)
りょーちの場合、理解力があまりないので同じ本を何回も読んで「あ、こういうことなのか」と気づくことが多々あります。

今後も伊坂 幸太郎さんに引き続き注目です。
ではでは。
Posted by りょーち at 2004年12月09日 18:45
はじめまして。TBさせていただきました。
伊坂氏いいですよね〜ちなみに、グラスホッパーはあまり好みじゃないのですが、他の作品はほとんど好きです。
また、お邪魔させていただきます。
Posted by ぽっぽ at 2005年02月08日 01:05
ぽっぽさん、こんにちは。

>はじめまして。TBさせていただきました。
どーぞ、どーぞ(^^;

>伊坂氏いいですよね〜ちなみに、グラスホッパーはあまり好みじゃないのですが、他の作品はほとんど好きです。
私は伊坂さんの作品を拝読するのはまだ2冊めの若輩者です(^^;
でも、この「オーデュボンの祈り」はかなりインパクトがあり、よかったですよー。

ではでは。

Posted by りょーち at 2005年02月09日 00:00
 今はまだ彼の本が3冊しかないけど、この3冊は最初のオーデュボンの祈りあっての物ですね。
 >ルービックキューブが6面揃ったときの「お、できた」という感覚の中間っぽい感じ
 「成程」と言いたいです。最初は6面バラバラで、最終的には全面揃えるのが基本的なルービックキューブの楽しみ方ですよね。それにはバラバラの6面それぞれの相互作用を考えなければならない。
 オーデュボンの祈りでは、様々な要素が関係しあい、最初はバラバラだったのが、気付かぬ内に揃って、最終的に物語が完成する。
 まさに伊坂さんはルービックキューブを自力で解いた様な感覚です。
Posted by at 2009年04月04日 11:07
コメントありがとうございます。
>様々な要素が関係しあい、最初はバラバラだったのが、気付かぬ内に揃って、最終的に物語が完成する。
そんな感じですよねー。
ジグソーパズルのようなという比喩もあるのだと思いますが、本書に関してはもっと「立体的なパズル」が解けたよーな感覚に近かったです。
Posted by りょーち at 2009年04月06日 10:24
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