りょーち的おすすめ度:

会社で報告書を書く際は「結論から書け」と良く言われる。結論から書こう。買って読んだほうがよい。買わないまでも誰かミステリ好きの友達から借りてでも読みましょう。で、もし友達から借りた場合はその友達に何か奢ってあけてください。
この本を会社の同僚に借りるまで、恥ずかしながら貫井 徳郎さんの書籍を拝読したことがありませんでした。いや、同僚がどーしても読んどけって聞かずに、半ば押し付けるように貸していったので、通勤時間を利用し読み始めたのです。
結果として、同僚に感謝感激雨あられ小惑星季節風三毛猫など手に触るものを何でも投げ返したくなるほど借りてよかった。(ありがとう)。
貫井徳郎にとっては本書はデビュー作となる本作。物語は連続幼女誘拐事件で捜査の指揮を執るキャリア警察官の佐伯の視点とその連続幼女誘拐事件の犯人の松本の視点という二つの視点で描かれている。追いかける警察官とまんまと追ってから逃れ続ける犯人。
ミステリー小説とはwho done it?(犯人は誰?)が全てではない。りょーちはこのあくまでも「ミステリー小説」であるべきで、そこには起承転結は当然ながら、何故そうなるのか、どのようにしてそうなるのか? という要素が必要だ。
この慟哭は「who done it?」のみを目的とするミステリー読者には一見受け入れられにくいかもしれない。
しかし、繰り返しになるが、あくまでも小説なのである。物語(ストーリー)として非常に綿密な「補助線」が引かれている。
今まで貫井徳郎の本を何冊も拝読しているが貫井徳郎はこの「補助線」の引き方が実に絶妙である。数学の図形問題を解くとき一本の補助線が閃くかどうかでその問題の全体像(=答え)が見えてくることがある。この補助線は数学的(幾何学的)センスがなければなかなか見えてこない。なお本物の数学の問題は「シカクいアタマをマルくする」でおなじみの日能研にでも譲っておく(日能研のサイトを見てみたら、個人情報流出に関するお詫びとご説明というニュースリリースが・・・ 大丈夫か?)
話が脱線したが貫井徳郎にはミステリ作家としての補助線の引き方にセンスがある。日常の何気ない場面も貫井徳郎にかかればいとも不思議な世界を垣間見せる。
作者本人の話はまた今度記載させていただくとして慟哭に戻ろう。
犯人の松本は何故、新興宗教・黒魔術の世界へと足を踏み入れるようになってしまったのか? これは彼の生い立ちとも切り離せない。人はさまざまなトラウマを持っており松本の場合は出生に関するトラウマであった。出生に関してのトラウマというのは本人自身では回避できない。この点に犯人である松本に少なからず同情(肩入れ)してしまう。りょーちはこの本ではどちらかと言えば犯人である松本のキャラが好きだ。松本の行為は確かにえげつない。今の日本では間違いなく逮捕されて然るべきである。ただ、松本がそこに行き着くまでのプロセスについては実際の裁判では情状酌量の余地はあるかもしれない(ないか?)
この本はりょーちとしては2回連続して読む本だねと思った。初めて慟哭を手にした人は先ず何の先入観もなく読んでみてください。で、読み終わった後に頭を整理して、もう一度本書を手にとってほしいです。
2回目を読むときにあなたは警察官・佐伯の視点を中心に読み始めるか、犯人・松本の視点を中心に読み始めるか。
P.S.
りょーちの場合も同僚から借りたのですが、そういえば奢ってないな。今度寿司でも奢ってあげよう・・・
貫井徳郎オフィシャルサイト:The Room for Junkies of Mystery And Hissatsu(本人のWebサイト)
「慟哭」私も友達にガンガンレンタルしまくったので、
今度何か奢ってもらうことにします♪
トラックバックさせて頂きました★★
こんにちはー。コメントいただきましてありがとうございます。ページ立ち上げて間もないので、コメントをいただけるのは嬉しいですね。
>「慟哭」私も友達にガンガンレンタルしまくったので、
>今度何か奢ってもらうことにします♪
ええ、是非奢って貰ってください(^^;
今後もちょくちょく(コッソリ)拝見させていただきます。
ではでは。
薦められて読んで、貫井さんの虜になり、新作以外はほとんど読んでしまいました。
「慟哭」イイですよねー。
プロットとしてよく出来た小説だなーと思います。読んだ感じは歌野晶午さんの「葉桜の季節に君を想うということ」に似た感じもしますね。
りょーちも、貫井徳郎さんの作品はかなり好きで結構読んでいます。
Webでこういった書評を書かせていただくと同じ本を読まれている方々と交流できて嬉しい限りです(^^)
恵一さんお薦めの「修羅の終わり」もなかなかです。ちなみに私の「豚」当ても見事に外れました(うーむ)。
「The walk way of keiiti」サイトにもちょくちょく寄らせていただきまーす。
ではでは。
りょーちさんは貫井徳郎、たくさん読んでらっしゃるんですねー。
私も「慟哭」は先入観なしで読みたかったなー、と思っています。疑いながら読んでいたので、予測がついてしまったのです。ああ残念。
貫井さんは気がつくと結構読んでいますねー。
慟哭に関しては「ネタバレ厳禁」的な風潮があるようですが、最近は「案外ネタバレしたとしても結構読めるのではないか?」とも思っています。
読む視点をどちらを主眼に置くかで小説内の世界観も変わってくるのかなーとも思います。
MNOさんのサイトを拝見いたしますと、「恩田陸」月間の様相を呈してますねー。
(恩田陸さんは「MAZE」しか読んだことがありません)
なかなか、積読が減らない今日この頃です。
ではでは。
貫井さん、いいですよねー。上手すぎです(^^;
>今年になって読み始めた作家では
>貫井徳郎氏と篠田節子氏が現在、マイブーム
そーなんですかー。篠田節子さんはまだ読んだことがないんですよー。
本屋に行ったときに気になっているのですが、いろいろ読みたい本が山積みです。
いつか挑戦したいと思います。
ではでは。
この本はいつも私にごちそうしてくれる方からお借りしたのですが、お礼をしたくても「別にいいよ」と断られてばかりだったので、りょーちさんの「貸してくれた人になにか奢る」案を使わさせていただきます。
>なんともいえない衝撃だったので
その気持ちわかります。
初読がもう5年以上前になりますが、未だにあのどんでん返しはすごかったなーと思います。また読み返してみようかなー。
ではでは。
あまりに胸が痛くてネットを探して、たどり着きました。
途中から、なんだかおかしいな、この章立てには何かあると思いながら
読んでいたのですが、やっぱりうーんとうなりました。
最後の一言が悲しいです。
>途中から、なんだかおかしいな、この章立てには何かあると思いながら
>読んでいたのですが、やっぱりうーんとうなりました。
>最後の一言が悲しいです。
最後、ちょっとやりきれない感じですよね・・・
貫井徳郎さんのファンになったキッカケとなった一冊でした。
ではでは。