2007年08月02日

五十嵐貴久:「1985年の奇跡」 このエントリーをはてなブックマークに追加

1985年の奇跡 (双葉文庫)
五十嵐 貴久
双葉社 (2006/06)
売り上げランキング: 64598
おすすめ度の平均: 4.0
3 青春ドラマのようだった・・・
4 軽く読める青春物
4 おもしろい!青春野球小説!

りょーち的おすすめ度:お薦め度お薦め度(多分最強)

こんにちは、会員ナンバー18番の永田ルリ子です(嘘です)。

予備知識なく、ふと手にしたこの本。
最強っす。

「パパとムスメの七日間」もドラマ化され、ノリにのっている(と思われる)五十嵐貴久。「リカ」を読んだときは「なんて恐ろしいこと考えるのか、この人は・・・」と身震いした記憶がある。そういう意味でりょーちの中では、どちらかといえば、五十嵐貴久は貴志祐介とか鈴木光司とかっていうおどろおどろしい作家というカテゴリで(勝手に)捕えてしまっていた。

書店にて本書のカバーを見る限りでは、こういうストーリーとは想像していなかったが、いい意味で裏切られた。気持ちの良い裏切られ方である。多分当時高校生だった人はかなり共感できる内容が詰め込まれておりこの本自体が「タイムカプセル」となっているっす。
タイトルにもあるように、本書の時代設定は、1985年。1985年といえばおそらくバブルという言葉もなかった頃。大人も子供もホントにのんきに日々生活していたであろう時代である。
テレビでは「夕ニャン」こと「夕焼けニャンニャン」が放映され、おニャン子クラブ全盛期であり、今のようにネットもなく、情報は全てテレビからであり、テレビから放映される全てのモノ・コトを信じて疑わなかった。
そして、その頃の高校生はなんとなくちゃらんぽらんで、どっかの大学に滑り込めればOK的な退廃的空気が蔓延し、しかし、遊ぶことにかけてはしっかり遊んでいた。
阪神タイガースが久々に優勝などしてしまい、関西地方はおろか、日本中でトラフィーバーだったり。
まあ、そんな時代だったはずである。この1985年は。
で、何時の世も時代の先端を行っているのは高校生だったりする。

本書「1985年の奇跡」には、当時、中学生、高校生、大学生だった人にはかなり懐かしさを覚える一冊であろう。そして、本書内の登場人物の青春模様に「あー、おれもそーだったよ」的な共感を覚えずにはいられないと思われる。
端々に登場する固有名詞がいやでも、当時を思い出させる演出はおそらく意図的なものであろうが、それが嫌味を感じさせない程度に散りばめられており、テンポ良く読むことができちゃうっす。

ストーリーも非常によろしい。岡村浩司ことオカやんは創部以来、一度も勝ったことのない小金井公園高校の野球部のキャプテン。公式戦初勝利を目指し、日々真剣に練習に汗を流していた・・・ なんてことは全くなく、チームのメンバーは「夕ニャン」の方が大事で、練習などは早めに切り上げ、平日5時には必ずテレビの前にいるよーな高校生。

ホントに申し訳ないが、僕たちの優先順位は一に女の子、二に夕ニャン、三、四がなくて五でも六でもなく、七か八くらいに野球がくる。しかも練習となるとさらにその順番は低かった

という件(くだり)が岡やんたちの全てを象徴しているといってもよい。

そこへある日岡やんの中学時代の同級生の転校生の沢渡俊一がやってきてから小金井公園高校野球部の状況は一変する。
沢渡は名門私立海南高校の野球部のエースであり、プロのスカウトからも注目される選手だった。それが、何故かここ、小金井公園高校に転入することになった。
キャプテンとして、中学時代の同級生として、沢渡を野球部に誘うが沢渡は肩を壊してしまい、ボールを投げることができないとのことだった。しかし、マネージャーとしてならということでなし崩し的に野球部に入部することになったのだ。
そんなある日、岡やんと野球部のメンバーと沢渡が通称「ババ店」で食事をしていた最中、女の子が暴漢に襲われていたところに遭遇する。みんな何もできない中、沢渡は「ババ店」に偶然あった野球のボールを暴漢めがけて目にもとまらぬスピードで投げ女子高生を救ったのだ。
岡やんたちは、沢渡が投げることができることを知り、野球部の正式復帰を猛烈に勧め、沢渡も選手として参加することになった。そして、更に更に、その日助けた女の子、金沢真美が野球部のマネージャになってくれるとのこと。金沢真美は西園寺女子学園というこの地区ではかなりのお嬢様高校の1年生。
岡やんをはじめ、野球部のアンドレ、カンサイ、小田三兄弟、イートンたちも嫌でも士気が上がり始める。
実際、沢渡は凄かった。甲子園の予選大会の1回戦ではシード校である籐海学院をなんと2-0で下したのだ。しかも沢渡はパーフェクトゲームをやってのけた。小金井公園高校野球部はこの初勝利を皮切りにどんどん勝ち進んでいった。
そしてなんと、地区予選の決勝まで進んでしまうのだ。相手は優勝候補の一角の墨山高校。その墨山高校にも沢渡は点をやることはなかった。9回まで無失点で来てあと少しで甲子園への出場が決まるところまでなんとやってきてしまう。

しかし、そこで、悲劇は起こった・・・

これ以降を書いてしまうと、この小説の面白みがかなり半減するのであえて伏せておくが、この悲劇以降のストーリーがまた凄い。ともすれば、悲観的になりそーなストーリーをライトに書ききっている。この人やはり只者ではないっす。

ラストの部分は爽快感漂うなかなかGoodな青春小説になっていますな。
これは、来年あたり再読するであろう。

しかし、繰り返しになるがこの五十嵐貴久という作家はかなり「あり」である。ちょいとファンになったっす。
特に本書は気分がブルーの時に再読することにしよう。

■他の方々の意見(やはり好評だな)
posted by りょーち | Comment(0) | TrackBack(2) | 読書感想文
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五十嵐貴久『1985年の奇跡』
Excerpt: 1985年の奇跡双葉社このアイテムの詳細を見る 今回は、五十嵐貴久『1985年の奇跡』を紹介します。高校生が野球に一生懸命になる青春小説です。べたな内容なんだろうけど、後半はそれなりに面白く読めまし..
Weblog: itchy1976の日記
Tracked: 2009-02-17 20:25

「1985年の奇跡」五十嵐貴久
Excerpt: 「1985年の奇跡」を読んだ。(この記事ネタばれあり)     野球の弱小校、小金井公園高校。設立から8年目の管理教育が行き届いた閉塞感で包まれている。クラスは学力別、...
Weblog: りゅうちゃんミストラル
Tracked: 2010-05-17 20:21