2005年06月14日

倉橋由美子さんが他界(ショックです) このエントリーをはてなブックマークに追加

作家の倉橋由美子さんが亡くなられたことは非常に驚きました。
りょーちが倉橋由美子さんを知った切っ掛けは、学生時代に古本屋で何気なく取った本「 聖少女 」という本。名前は怪しいですが重い本です。内容は一言で言えば近親相姦について書かれた純文学小説です。1976年の当時から考えると非常に衝撃的な内容だったと思います。今は文庫本でしか売っていないと思いますが、私が購入したものはハードカバーで臙脂(えんじ)色の装丁でした。
「聖少女」の冒頭は自傷した宮下未紀自身がその過程を自分自身で説明している文章から始まる。「なんだこれは?」と思ったが時すでに遅く作品の世界に引き込まれていった。
「聖少女」は最も小さい人間のコミュニティである「家族」がテーマとなっている。しかし「岸辺のアルバム」や「北の国から」などで語られる家族愛とは一線を画している。
その後読んだ宮本輝の「 避暑地の猫 」も同様のテーマを扱った純文学である。どうも昔からのタブーというのは純文学の題材になりやすい。「避暑地の猫」もよかったが衝撃度合いから言えば「聖少女」の方が上であろう(勝ち負けを競っているのではないのでどうでもいいのだが)。「聖少女」は女性でないと絶対に書けない本だと思う。未紀は最後まで自分に正直に純粋に生きただけだと私は思うのだが本当のところは勿論わからない。
いずれにしてもかなり重いテーマだった。

で、次に読んだのが「 アマノン国往還記 」。これも1986オメガトライブではないが怪しさ1000%である(謎)。
SF形式で書かれているが、内容は「女性」について書かれたものである。1000年後の未来は地球はモノカミ(ひとつの神)が支配していた。しかし女性国家アマノンはモノカミの支配を免れ続けていた。そこにモノカミから派遣された「P」という若い男性が布教活動を行うためにアマノン国にやってくる。「P」の視点で見たアマノン国の状況を中心にストーリー展開していく。果たしてアマノン国は一体何なのか。モノカミとは結局何だったのか。途中からなんとなくそのイメージが沸いて来る。
このあたりの擬人化も非常にうまい。
どうも設定だけ見ると沼正三の「 家畜人ヤプー 」と対比してしまう。「家畜人ヤプー」もどうやったらこういう発想が生じるのか皆目検討が付かなかったが何れも昭和の奇書として語られるだろう。

そういう読書遍歴であるりょーちにとって、倉橋由美子は「アンダーグランド」「裏街道」「奇妙奇天烈」「奇奇怪怪」「冷酷無比」「理解不能」「女囚さそり 701号怨み節(梶芽衣子)」といったネガティブな語句に取り巻かれた作家だった。おそらくあまり読む人はいないのかなーとも思ったりしていた。ちなみに自分だけが知っている凄い作家というのってなんとなく他人に教えたいような教えたくないような感じがしませんか?

そんな中、割と最近の話しと言ってもいいと思うのだが「大人のための残酷童話」で倉橋由美子が表の世界に現れたときは「え、どーして?」と思ったものである。更に今となってはこちらの方が有名なのか「ぼくを探しに」という絵本の翻訳やサン=テグジュペリの「星の王子様」の版権が切れたことによる新訳など果敢に挑戦していただけに今後の更なる活躍が期待されていました。新訳 星の王子様が現在 予約開始中 のよーなので勢いで予約してみることにしてみます。

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なんとなく今日は古本屋にでも出かけて倉橋由美子さんの本を漁って見たい気分です。志半ば(かどうかは本人にしかわからないけど)でこの世を去っていかれた倉橋由美子さん。謹んでご冥福をお祈りいたします。
posted by りょーち | Comment(2) | TrackBack(1) | 書籍全般
この記事へのコメント
りょーちさん、こんにちは。
りょーちさんもショックですか。私もショックです。
倉橋作品の、理解しがたいところが魅力でした。

>「大人のための残酷童話」で倉橋由美子が表の世界に現れたときは「え、どーして?」と思ったものである

同感です。あの本も内容は立派にアンダーグラウンドなのに、なぜメジャー化してしまったのでしょう、不思議です。
故人のご冥福を、お祈りいたします。


Posted by たいりょん at 2005年06月14日 13:43
こんにちは。りょーち@管理人です。
>倉橋作品の、理解しがたいところが魅力でした。

そう。まさにそーなんですよ。で、もう一回読みたくなってしまう。惜しい人を失ってしまいました。
「大人のための残酷童話」のブレイクは正直少し違和感がありました。
失って初めて知る寂しさですね。
今回の件で倉橋さんの作品のすごさを世間が再認識するきっかけにはなるかと思います。

それでは。
Posted by りょーち at 2005年06月15日 01:28
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週刊書評 ::: 聖少女
Excerpt: 倉橋由美子『聖少女』[bitway][amazon] 不可能な愛のゆくえ 『聖少女』は、昭和四十(1965)年、倉橋由美子が30歳のときに、発表された。作者は後年、この作品を「最後の少女小..
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Tracked: 2005-07-09 03:51