2007年05月23日

横山秀夫:「影踏み」 このエントリーをはてなブックマークに追加

影踏み
影踏み
posted with amazlet on 07.05.23
横山 秀夫
祥伝社 (2007/02)
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りょーち的おすすめ度:お薦め度

こんにちは、ダンプ松本です(嘘です)。

ってことで、横山秀夫の「影踏み」を読んでみた。

本書では更に今までの横山秀夫の小説にはあまり見受けられない視点で書かれている。彼の書く殆どの主人公は警察内部の人間だった。しかし、本書「影踏み」では「泥棒」という警察組織とは対極的にある人物を主人公に置いている。
この二つの相違点はあるものの、作中に横山秀夫らしい雰囲気は感じ取ることができた。
本書は「消息」「刻印」「抱擁」「業火」「使徒」「遺言」「行方」という七つの短編からなる。この短編に一貫して登場する人物は主人公の真壁修一、修一の中に住む弟の啓二、そして修一の内縁の妻である安西久子である。

各人の設定はこんな感じ。
真壁修一は「ノビ師」だった。「ノビ師」とは居住者が深夜に寝静まった頃、家に忍び込み現金を盗み出す手口の泥棒の俗称である。天窓やドマーニから侵入する「天蓋引き」。宵闇に紛れて空き巣を働く「宵空き」など盗みの手口により夫々隠語があるらしい。修一は「ノビ師」としては世間で知られた存在だった。
修一には啓二という双子の弟がいた。過去形になっているのは今はこの世にいないからである。啓二は実の母親に殺され、母と共にその肉体は焼け死んでいた。しかし、その魂は何故か修一に住み着き、修一の中に啓二がいるという不思議なことになっていた。

このあたりに今まで愚直なまでに警察内部の小説を書いてきた横山秀夫が本書で見せる新しい試みである。

「消息」では窃盗容疑で捕まった修一が二年の刑期を終え出所したところから始まる。先に述べたように修一の中には弟の啓二が存在している。修一の中の啓二は、一度見たものは決して忘れないという瞬間記憶能力を持っていた(って昔木村拓也の出演するドラマでそういうのあったね)。
出所後すぐに手をつけたのは自分が捕まったときに侵入していた家の調査である。修一はその家で感じた違和感の正体が何なのかを調べるため自分の「ノビ師」の能力と啓二の「瞬間記憶能力」の二つの能力を駆使し独自調査をし始めた。
一方、久子は修一が刑期を終えるまでじっと修一を待っていた。
久子は修一と内縁関係にあったが、その昔は久子を巡り修一と啓二で争っていた。双子ゆえに殆ど同じ容貌を持つ修一と啓二。啓二が死んでからも自分の中に啓二を感じ続けている修一は素直に久子と結ばれる気にはなれなかった。自分の心の中の葛藤さえも啓二に筒抜けであるのだ。
修一が感じた違和感の正体は一体なんだったのか?

七つの短編は程よいボリュームで区切られており、読みやすい。
しかし、りょーちとしてはどうも今ひとつ「ミステリー小説」として読むことが困難だった。やはりその原因は修一の中にいる啓二の存在にある。やはり純粋なミステリーって感じではないのでそのあたりちょっと拍子抜けした感がある。
また、法曹界を目指していた修一が啓二の死後、突如「ノビ師」になったその心情もいまひとつ納得できない。双子の繋がりってそんなに深いものなのか?

どうも今ひとつりょーちとして不完全燃焼って感じの一冊であった。

なお、今まで読んだ横山秀夫の感想をざっと見てみるとこんな感じであった。で、本書「影踏み」は3.0。
りょーちの横山秀夫満足率は
( 4.5 + 3.0 + 4.5 + 4.5 + 4.5 + 3.0 ) / 6 = 4.0
って感じか。

うーむ。初期の頃に読んだ「クライマーズ・ハイ」が結構良かったのでそれに引きずられていたのかもしれないということにあらためて気づかされた。
こうやって読書記録を作っておくことによって、自分が好きな作家の傾向が客観的に(いや、評価は主観的なので完全に客観的とはいえないのだが)理解できるよーな気がする。実際、りょーちの中での横山秀夫の作家としての評価は「与えられた題材を無難に形にする作家」という印象でしかない。まあ、これができるってことだけでも結構すごいとは思うのですが、なんとなくもうあまり読まなくてもよい作家に仲間入りしてしまったかも。
横山秀夫が作家としてダメとか言っているのではなく、自分の読みたい本と横山秀夫が作り出す物語とが合わなくなっているということである。まあ、そういうこともあるだろう。それが分かっただけでもまあ、本書を読んでみてよかったっす。

■他の方々のご意見(結構意見が分かれている?)

posted by りょーち | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想文
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