2007年02月13日

村上龍:「69(シクスティナイン)」 このエントリーをはてなブックマークに追加

69(シクスティナイン)
69(シクスティナイン)
posted with amazlet on 07.02.13
村上 龍
集英社
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りょーち的おすすめ度:お薦め度お薦め度

こんにちは、小松方正です(嘘です)。

村上龍の名著中の名著、「69(シクスティナイン)」を再読してみた。この小説のタイトル「69」ってのは村上龍が青春時代を謳歌した1969年にちなんで付けられたタイトルである。

村上龍は長崎県の佐世保市の出身であることはかなり有名である。彼が高校時代、どんな生活を送っていたのかは本書を読めばかなりの部分がわかってくる。ちなみに村上龍の出身高校は長崎県立佐世保北中学校・高等学校のようである。69は少し前に、妻夫木聡が映画『69 sixty nine』で主演し、かなり話題になっているのでストーリーなどはよく知られていると思われるが、映画に関して言えば、妻夫木聡のよーにかっちょいい役者ではなく、もうちょっと普通っぽい人が主役になるとよかったと思われる(例えば、電車男のテレビ版の主役の伊藤淳史さんとかよさげな感じがする)。

本書は個人名以外の部分はかなりが実話で構成されていると思われる。1969年という時代は、学生達はロックに目覚めたり全共闘よろしく、学生運動に走ったり、平和を訴えたり、兎に角自分達の手で大きな「ナニカ」を動かそうというエネルギーに満ち溢れた時代だった。
そんな時代、佐世保という基地と炭鉱の町の佐世保北高校という進学校に通う高校生のケン(村上龍)。ケンの頭の中は「女の子にモテたい」という行動原理が中心となり日々欲情した生活を送っていた。
ケンは典型的な場当たり主義且つその場しのぎ主義的な性格で、各方面について広く浅い俄か知識を詰め込み、周囲にひけらかすというあまり好かれる性格の持ち主ではない。しかし、本書ではあまりに露骨にその性格が前面に出されている所為で好感を持ってしまうから不思議だ。
当然にしてケンは北高の中ではオチこぼれの部類に属していた。そんなケンが密かに恋焦がれている北高マドンナの松井和子に気に入られたい一心で仲間達と「フェスティバル」を開催する計画を企てる。ケンの考えるフェスティバルは「兎に角楽しいコトの詰め合わせ」という茫洋としたイメージで、ほぼ無計画に進められていく。
フェスティバルの中心は、松井和子をヒロインとした映画作成である。ケンが脚本を書き(勿論、ヒロインが松井和子で主役はケンというストーリー)クランクインに漕ぎ着ける。しかし、肝心の映画撮影のための8ミリをケンは持っておらず、校内の全共闘のグループに8ミリを借りに行く。そこで、何故かバリ封をすることを宣言してしまい、後に引けなくなった、ケンはある日の深夜にバリ封を決行!
しかし、あえなく見つかり自宅謹慎の憂き目に・・・
このあたりの行き当たりバッタリさ加減がとてつもなく愉快である。

炭鉱出身の頭脳明晰なアダマこと山田、すぐにいじけるが気のいい岩瀬、二年生の指紋のない男、ナカムラなどの愉快な仲間達が先生たち(体制側)に目を付けられながらも「フェスティバル」開催に向け、一丸となって行動するところが見せ場である。ケンのテキトーなトークがそのうち頭の良いアダマに通じず、逆に言いくるめられるよーになる件などは哀愁を感じてしまう。
村上龍が後書きで述べているが、若かりし頃に体制側だった人間を徹底的に「悪」として書き、自分達の周囲の人間を「善」として書かれているこの本は非常に構図的に分かりやすい。
こんな感じで書けば、村上龍の「愛と幻想のファシズム」っぽいものを想像するかもしれないが、テンションとしてはかなり正反対である。「愛と幻想のファシズム」を「陰」とすれば、本書「69(シクスティナイン)」は紛れもなく「陽」である。本書を読むと、誰もが「こんな高校生活を過ごしたかった!」と思うに違いない。それほど、明るく陽気な面が前面に押し出された村上龍、渾身の一冊である。

また、小説そのものに目を向けてみると、作品内で強調したい部分のフォントがかなり大きく乱暴に拡大されていたりする効果が非常に秀逸である。現在Blogなどではこういった文字を大きくしたり色を変えたりするよーな効果が結構使われているが、「69(シクスティナイン)」ほど適切な効果で用いられているBlogは見かけたことがない。

下品な表現が多々頻出するが、ホントに笑い転げるほどに面白く、且つ切ない青春ストーリーである。知的な印象の村上龍とのギャップが大きく、読めばきっと村上龍が好きになるっす。是非読むべしの一冊である。


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