2007年02月05日

三崎亜紀:「失われた町」 このエントリーをはてなブックマークに追加

失われた町
失われた町
posted with amazlet on 07.02.05
三崎 亜記
集英社
売り上げランキング: 21671

りょーち的おすすめ度:お薦め度

こんにちは、逆鉾こと、井筒親方です(嘘です)。

三崎亜紀は、不思議な世界を作り出す名人である。

「となり町戦争」では、町同士が静かな戦争を繰り広げる。戦争という非日常とも思える世界を日常レベルにまで限りなく落とし込んだ世界。回覧板や役所などという非常に日常に近い世界。短編小説の「バスジャック」でも日常的にバスジャックが行われる世界や、二階扉という不思議な扉が日常として存在する世界が淡々と書かれている。

三崎亜記の特徴としては「物語の中の時間が非常にゆるやかに流れていること」がある。一見ほのぼのとしたストーリだが、今の世界から見れば結構残酷。しかし、物語の世界の住人はそれを受け入れて生活している。本書でもこの不思議な三崎亜紀ワールドが炸裂した。

本作品「失われた町」では、タイトルどおり町が失われていく世界の物語である。
「消滅」という謎の減少により、町が消えていく。30年前に突如消えた町「倉辻」。「町の消滅」とはどういう状況なのだろう?

本書では町そのものが物理的に消えるだけではなく、その存在した証さえも人の記憶から消滅してしまう。消滅は町に住む住人をも飲み込み消えていく。「消滅」減少について分かっていることは少ない。

・何故「町」という単位で消えていくのか。
・何故人も消えるのか。
・何故消えないものが存在するのか。
・消滅する町はどうやって選ばれるのか。

このあたりは管理局の方でも全くそのプロセスが把握できていない。
そんな中、新たに消滅していく町「月ヶ瀬」。

本書は消えていく町、月ヶ瀬の住民や回収員と呼ばれる消滅処理班の人々から見たストーリーである。本書内では町が何故消えるかというプロセスよりも、消えていくことを受容しながらも、抗い続ける人々の様子が中心に描かれる。

って感じなのだが、正直、読み進めていって話しの前後関係が混乱してよくわからなくなってしまった。雰囲気はなんとなく読み取れるのだが・・・
その原因の一つが本書は事象が生じた時系列的に書かれていないことが原因と思われる。
下記のサイトを見て、「あー、なるほど。そういう関係性だったのか」と今更ながらわかりかけてきた。



消滅対象地域の情報を残らず回収する回収員の茜。
その茜が月ヶ瀬に回収員としてやってきた際に知り合った中西と和宏。
中西は月ヶ瀬の近くで「風待ち亭」というペンションを営む。
和宏はギャラリーに絵を展示する「免失者」(「免失者」とは消滅対象地区の居住者で、消滅時に町の外にいたため、消滅を免れた者)。
管理局に勤める「特別汚染対象者」の桂子。
桂子の前に突如現れる謎の写真家、脇坂。

彼らが「失われた町」に夫々の思いを持って対峙する。うーむ、なかなかにドラマチックっぽいのですが、やっぱ、はじめにも記載したよーに分かりにくいっす。(りょーちの頭が弱いだけかもしれんが・・・)。

なので、冒頭に記載した、「三崎亜紀は、不思議な世界を作り出す名人である」にプラスして、「三崎亜紀はややこしい話を書く人である」を付け加えたいっす。

ちなみに、最後の中西と局長の逸話はいらなかったのではなかろうか・・・

うーむ。
posted by りょーち | Comment(6) | TrackBack(1) | 読書感想文
この記事へのコメント
初めまして♪
次回の読書会で「半島を出よ」を取り上げることになって
(リアルサークルなお話ですいませんです)、
世間の評判を検索してたらたどり着きました。

んで、「失われた町」これ早くも今年度No.1か?!ってくらいよかったんですよ、私はね。
喪失や絶望にまつわる様々な人間模様から、
海辺のカフカの佐伯さんの絶望を救えるかもしれない道(?)が見えたような気がしたんですよ。
社会性と個人の人生とのすり合わせってのがキーワードかななんて思います。
個人の絶望は、その人個人の内面世界だけでは救われることはなくて、
ある種の社会性、自己を超えた何かに心から尽くす一瞬がある
(これって内容間違えばえらいことになりますが)
ことによって、突破口が見出せ、そこから自分自身の人生の幸せってとこに返ってくることができる、
もどっていけるものなのではないかと。

漱石の「こころ」っぽい命題??
書き足りないし、長いしわけわかんなくてすいません(汗)
私が余計だなって思ったのは、由佳の彼氏がハリウッドスターになるこたないかなと。。。

またきます〜

Posted by あんず at 2007年03月06日 19:08
あんずさん、こんにちは。りょーち@管理人です。
コメントいただきましてありがとうございます。
読書会をされているんですね。「半島を出よ」はかなりオススメです。
「海辺のカフカ」「こころ」共に未読なので比較はできないのですが、「喪失や絶望にまつわる様々な人間模様」という言葉には共感できます。

「失われた町」のような「消滅」は現実世界では生じてはいませんが、大切な人を失ったりすることは「消失」に類する事象ですよね。

三崎亜記のトンデモワールドの今後に期待です。
ではでは。
Posted by りょーち at 2007年03月07日 10:51
三崎亜記、トンデモワールドの今後について。

とでもいいましょうか、三崎さんを分析してるサイトがありますよ。
http://www.birthday-energy.co.jp

「如才ない開拓者」であり、
「常識の通用しない精神状態」をお持ちだとか(笑)。
また、「他人には真似の出来ない独創性」が才能とのこと。
活躍は2014年〜2015年が当面のピークになるそうですよ。

偶然手に取った「バスジャック」がわたしと三崎さんの作品との出会い。
最初の二階扉の話、なんで二階なのか分からないまま、不気味な終わり方でしたけど
そのあとの話からドンドン引き込まれてしまいました。

いや〜、三崎さんの作品は刺激的な作品ですね〜。
Posted by 湯けむり at 2012年02月18日 00:55
湯けむりさん、コメントありがとうございます。

>三崎亜記、トンデモワールドの今後について。
>
>とでもいいましょうか、三崎さんを分析してるサイトがありますよ。
>http://www.birthday-energy.co.jp
>
>「如才ない開拓者」であり、
>「常識の通用しない精神状態」をお持ちだとか(笑)。
>また、「他人には真似の出来ない独創性」が才能とのこと。
>活躍は2014年〜2015年が当面のピークになるそうですよ。

そうなんですかー。上記サイトで紹介されていた「コロヨシ!!」をまだ読んでないのでちょっと読んでみたいと思います。

>偶然手に取った「バスジャック」がわたしと三崎さんの作品との出会い。
>最初の二階扉の話、なんで二階なのか分からないまま、不気味な終わり方でしたけど
>そのあとの話からドンドン引き込まれてしまいました。
>
>いや〜、三崎さんの作品は刺激的な作品ですね〜。

わたしはとなり町戦争からスタートでした。
独特の世界観をお持ちですよねー。

近いうちに、また読破したいと思います。

ではでは。

Posted by りょーち at 2012年02月28日 14:06
いや、これは分かりにくいと思います。自分も読了したのですが、まず序章の時点で不親切感が漂っていたので集中して読んだのですが、あまりにのっぺりとした描き方で、その集中力さえ邪魔されました。
Posted by Medeski at 2012年04月09日 09:56
Medeskiさんこんにちは、りょーち@管理人です。
コメントありがとうございます。
これは構成の問題なのか、わざと難しくしているのか最後まで謎でした。
まあ、私の読解力のなさもホントに手伝っているはずなんですがw
Posted by りょーち at 2012年04月09日 10:12
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三崎亜記「失われた町」(集英社)
Excerpt:  三崎亜記「失われた町」(集英社)を読了。正確には、失われるのは町ではない。ある日突然、ひとつの町に住む人々が一斉に消えてしまい、そして、その町による「汚染」を防ぐため、体制によって強制的に町に関する..
Weblog: 本の虫
Tracked: 2007-05-17 17:28

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