数学的にありえない〈上〉
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数学的にありえない〈下〉
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りょーち的おすすめ度:

こんにちは、杉村春子です(嘘です)。
この小説はSF小説なので、色んな「ありえない」ことが起こるのだが、確かに「数学的にはありえない」小説になっている。タイトルとしてこのように銘打たれているが、どちらかといえば、「確率論的にありえない」のほうがしっくりくる。
主人公のデイヴィッド・ケインは大学の統計学の講師だった。突如起こった謎の神経症は彼の職を失わせる代わりに新たな才能を与えた。彼の体得した能力とは「自分が成功するまで何度も何度も時間を戻せる(!)」能力である。
もし、こんな能力が自分自身にあれば、凄いと思いませんか?
ポーカーなどの賭け事も勝つまで何度でも繰り返せるし、テストも正解するまで何回でもできる。「確率的に起こり得る事象をそれが起こるまで何度でも時間を巻き戻して試行することができる」って、一体どういう仕組みになっているのか? 本書を読んでも実はよくわからなかった。本書ではこの現象を説明するために、様々な理論が引き合いに出されている。中でも「ラプラスの魔」「シュレディンガーの猫」に代表される不確定性理論の引用が多い。
この能力を手に入れたがために、デイヴィッドは政府機関に狙われる羽目になる。マッドサイエンティストのドヴァスキーをはじめ、CIAの工作員のナヴァ、国家安全保障局のフォーサイス達が揃ってデイヴィッドの能力を欲しがっている。
もし、政府機関にデイヴィッドの能力が備われば軍事面をはじめ、非常に大きなイニシアチブを得ることになるであろう。政策を誤っても何度でもやり直せるし、戦争も然り、不慮の事故で亡くなる人物は激減するであろう。
終始追われる立場のデイヴィッドが如何に彼らの魔の手を掻い潜り抜けるかというストーリーを主軸に展開していく。
デイヴィッドは逃げ切ることができるのか?
新しく手に入れたこの能力は何なのか?
アイデアとしては面白いと思うのだが、正直、今ひとつのめりこめなかった。読んでいるときは流れに乗ってスイスイ読めるんだけどなぁ。
数学と物理に関する薀蓄もひとつひとつ取ってみれば、面白く感じる。
例えば、確率論でよくある問題として、
「58人のクラスに同じ誕生日の人間がいる確率は?」
という問いがある。
この計算は、排他的に考えると、同じ誕生日が一人もいない確率を求めて、それを1から引けばよいのである。
計算したい人は下記リンクでためしてみて。
クラスに同じ誕生日の人がいる確率を調べる
#この計算方法あっているのか自信なし・・・orz
また、不確定性原理に関するものも一通り紹介されている。プロットもなかなかよさそうなんだけど、どうも小説としては何故かいまひとつという感じが払拭できない。
その原因のひとつとして、翻訳者のスキルに起因するのではないかと思ったりする。この小説のプロットからいけば、もっとライトなノリで訳したほうがよかったよーな気がする。原書が説明的な小説になっているのかもしれないので、どうしようもないのかもしれないが、それにしても登場人物の置かれた立場とか周辺の人々との関係が異常に分かりにくい(りょーちの頭が悪いだけかもしれんが・・・)。
ラストも決して納得できるよーなものではなかった。
A tout le monde さんも指摘されているが、上下あわせて4400円ってのはこっちの方が数学的にありえなかった・・・orz
■他の方々のご意見(小説としては低調?)
・A tout le monde
・はみだしラボノート
・なまにえの日々
・もと所長秘書はつぶやく
・みけねこ日記
まったくの文系人間ですが、最後まで飽きずに読めました。
いろいろ教わることも多かったです。
この突拍子もない発想を、よくもこれだけのストーリーにまとめ上げたな、と感心してしまいました。でも、確かに価格も「ありえない」でしたね…
>まったくの文系人間ですが、最後まで飽きずに読めました。
>いろいろ教わることも多かったです。
書籍の値段が結構高かったのが難点でしたが、コンセプトはなかなか面白かったっす。
次回作に期待です。
ではでは。
>この突拍子もない発想を、
>よくもこれだけのストーリーにまとめ上げたな
そーですよね。話しの内容はSFなんですけど、どうもSFに徹し切れてはいないところは微妙な感じですが、結構楽しめました。
そーいえば、有川浩の「図書館危機」は今まさに読んでいるところです。あと一作でシリーズ完結ですかー。
うーむ、郁ファンとしては残念ですねぇ。
ではでは。