2006年11月16日

機本伸司:「神様のパズル」 このエントリーをはてなブックマークに追加

神様のパズル
神様のパズル
posted with amazlet on 06.11.16
機本 伸司
角川春樹事務所
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りょーち的おすすめ度:お薦め度

こんにちは、かたせ梨乃です(嘘です)。

これは凄いわ・・・
何が凄いってテーマが凄い。今まで読んだ小説の中で一番壮大なテーマだよ。きっと。
「神様のパズル」では一人の天才少女と一人の凡人大学生が協力して「宇宙を作る」という小説である。
本書の作者、機本伸司はこの「神様のパズル」で第三回小松左京賞を受賞している。そう、この小説は紛れもなくSF小説である。しかし、同時にこの小説は今より10年後の大学生達の青春小説でもあったりする。作品全体としてはどちらかといえば青春小説の色が強く出ている。
そしてこの小説は、主人公の綿貫基一というさえない学生である。綿貫は関西にあるK大学(おそらく作者の出身大学の甲南大学がモデル?)の物理学科の4年生。りょーちの中では物理学専攻の人々は、みんな頭がいいことになっている(謎)。物理学って数学と殆ど同じなんだよねぇ。物理学科の人々はある部分では数学科の人よりも数学がわかってたりするので、凄いばい。ただ、綿貫に関しては就職を目前に控え、必修の単位を落とし後がないといった謂わばオチこぼれ的大学生。
同じ物理学科の保積蛍という女の子に淡い恋心を抱いている。綿貫は4年次に配属となるゼミの希望も勿論、保積の希望する鳩村ゼミを希望した。無事鳩村ゼミ生として迎えられたゼミ初日、鳩村教授より直々に「このゼミに穂瑞沙羅華を参加させてほしい」との要求を言い渡された。穂瑞沙羅華とはK大というより全国レベルで有名な少女である。幼少の頃から既に天才の片鱗を見せており、16歳にして既に大学生である。その頭脳は主に理論物理学の面で素晴らしい才能を発揮し、沙羅華が9歳のときに発案した「クロストロン方式」という基礎理論を学会に発表し、一躍有名になった。そしてこの理論を元に国家レベルのプロジェクトが動いていた。それが研究施設「むげん」だった。この「むげん」では世界でまだ確認されていない素粒子のひとつである「重ヒッグス粒子」を発見することが最大の目的である。(ヒッグス粒子ってのは聞いたことあるけど「重」ってのもあるのか?)。現在完成目前だが、実際は細かい部分で行き詰っているっぽい。鳩村教授もこのプロジェクトに参加している。
鳩村教授は穂瑞沙羅華に会って様子を知らせてほしいとのことだった。天才少女故に大学で学ぶものもないと感じたのか最近は大学に姿を見せず、このままでは卒業も危うい状況らしい。綿貫は気が進まなかったが単位のためと思い渋々承服した。
早速登校拒否の穂瑞に会うために自宅を訪れる。見た目は普通の女子高校生の穂瑞だが、部屋の中は16歳の女性の部屋とは思えない無機質な感じでコンピュータとモニタに囲まれ、モニタ用スコープを着用しひたすらキーボードに入力する沙羅華の姿は想像を絶した。更に実際話してみてあまりの頭脳の良さに舌を巻いた。綿貫が訪問する前に綿貫のプロフィールをすべてネットワークなどで調べつくしており、「綿さん、レンタルDVDの延滞料金を払った方がよいよ」などと初対面の人間との会話とは思えないことを指摘された。
綿さんは本来の目的である「沙羅華を大学のゼミに参加させる」ために、大学に来てみてはどうかと進言したが、「大学で得られるものはない。自分に分からないことは何一つない」と豪語する穂瑞の言葉もあながち嘘ではないのだろう。穂瑞にはホントに大学を必要としていなかった。
結局何もすることもできず必修の「量子力学」の授業にでた綿さんは聴講生の老人を目にした。この大学では結構有名人で若い頃勉強できなかったことを大学で取り返すために勉強しているらしい。講義に遅刻した綿さんは老人にノートを見せて貰うようにお願いする。橋詰というその老人は綿さんに「宇宙は無からできたというのは本当なのか?」と尋ねてきた。当然にして綿さんには答えられなかったのだが、一計を思いついた。
橋詰老とその足で綿さんは穂瑞の家へと向い、再度沙羅華と対峙した。橋詰老は沙羅華にさきほどの質問を繰り返した。
「宇宙は無から生まれたなら、人間にも作れるのか? 無ならそこら中にある」
と。この質問には穂瑞も回答することができなかった。
綿さんはここぞとばかりに「じゃあ、ゼミでそれを研究してみては?」と進言したが穂瑞にはにべもなく断られた。
穂瑞を大学につれてくる作戦はこうして失敗したかに見えたのだが、驚くことにゼミの初日に穂瑞が大学へ姿を現したのだった。そして「宇宙の作り方を研究する」と宣言した。そうやって、ゼミ全体のテーマは「宇宙を作れるか?」とう命題に「作れる派」と「作れない派」に別れてディベート形式で行うことになった。穂瑞と綿さんは「作れる派」他の4人は「作れない派」に回った。果たして本当に宇宙は作れるのか・・・

物語の殆どが量子力学やその他の応用物理に関する難解な言葉が飛び交いまくるのだが、その全てを読者は当然にして理解できるわけではない。ただ、彼らの議論に耳を傾けているだけで、雰囲気に浸るだけで十分物理学を楽しめる。物理学者をこれから目指す高校生や大学一年生あたりに是非とも読んでいただきたい一冊である。
現在の物理学者の中にはは少年少女時代にクラッシックSFを読み、宇宙の真理や物理学の不思議さを「面白い」と感じ学者への道を決めた人もいるであろう。若き物理学者の背中をそっと押してくれるようなこの小説は、物理学に興味のない人でも青春小説として十分に楽しめる。
作者の機本伸司は前述の甲南大学理学部応用物理学科の出身である。物理学は大学の4年間程度では極めることは当然難しい。物理学出身とはいえ、本書を執筆するにあたり、かなり勉強したのではなかろうか? その勉強の過程は本書の綿さんの成長の過程と概ね一致しているのではないかと思う。綿さんの成長、天才穂瑞の人間的成長こそが、本書の読みどころだと思われる。
なお、この「神様のパズル」は 角川春樹事務所 での映画化も決まっているらしい。映画化になるとおそらく物理学のディベートよりも恋愛&人物中心のストーリーになるのではないかと(勝手に)予想。
ちょっと楽しみが増えたっす。

映画化情報についても書いておくっす。

映画『神様のパズル』公式サイト
2008年6月7日(土)公開
エグゼクティブ・プロデューサー:角川春樹
監督:三池崇史
出演:市原隼人、谷村美月、松本莉氏A田中幸太朗、岩尾望(フットボールアワー)、黄川田将也、石田ゆり子 他
主題歌:「神様のパズル」ASUKA


■他の方々のご意見(結構人気かも)
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