2006年10月23日

有川浩:「図書館内乱」 このエントリーをはてなブックマークに追加

図書館内乱
図書館内乱
posted with amazlet on 06.10.23
有川 浩
メディアワークス

りょーち的おすすめ度:お薦め度

こんにちは、一龍斎貞友です(嘘です)。

昭和を代表する芸人のばってん荒川さんが、10月22日、69歳で逝去されました。天国でもおばあちゃん姿でご活躍していらっしゃることと思います。合掌。

と、しんみりとしてしまったが、この「図書館内乱」で明るさを取り戻せること間違いなし。あの、図書隊達がこんなにも早く帰ってきた。

前作「図書館戦争」で強烈に読者のハートをがっちり掴んだ笠原郁たちのその後のストーリー。「図書館内乱」は有川浩の中で「図書隊シリーズ」として今後更に大きく飛躍するであろう笠原郁隊員と、その仲間達の人となりを整理してみるという位置づけではなかろうか?

前作、図書館内乱を読んだ方ならもうお馴染みの面々が今回もまた、大活躍(若しくは大騒動)を起こしていく。

「メディア良化法」と「図書館法」という一見相反する法律が混在する近未来の日本。「メディア良化法」を掲げ、有害図書の駆逐に終始励む「メディア良化委員会」は、行き過ぎとも思われる論理で有害図書を駆逐しはじめていく。
一方、「図書館法」の理念に基づき、全ての図書を世の中に遍く知らしめるために存在する図書館。メディア良化委員会の武装攻撃に対峙するために、図書館側も図書隊という自衛組織が作られた。

笠原郁は高校時代に読みたい本をメディア良化委員会に取り上げられそうになったところをある図書隊に助けられる。そしてその時受けた感動を旨に自ら図書隊を志願し、武装し、市民のために図書を守るという任務に就く。

こう書くと、郁は屈強な男性のよーに思えるが、れっきとした女性。更に言えば「戦争」とか「内乱」とか物騒な言葉が飛び交ってはいるが、おそらくこの本の主軸は「恋愛」。図書館戦争を読んだときの感想 には「近未来恋愛戦争オモシロ小説」と書いてみたが、今回の「図書館内乱」は恋愛の部分にかなりフォーカスが当てられている。

本書は5つの短編小説としても読めるが、時系列としても話しとしても繋がっている。
そのサブタイトルがこんな感じ。
1.両親霍乱作戦
2.恋の障害
3.美女の微笑み
4.兄と弟
5.図書館の明日はどっちだ

って、前作読んでない人には、このサブタイトル見ただけじゃ「一体どーゆー話しよ?」って感じなのだが、「図書館戦争」を読んだ人にとってみれば「ワクワク」してしまうよーなタイトルの羅列である。

1.両親霍乱作戦
茨城に住む郁の両親が上京するという連絡を受け、郁は青ざめる。郁の職種は図書館の中でも戦闘職種に分類されるのだが(ってもうここらあたりの設定からして面白いのだが)両親には実は戦闘職種であることを内緒にしているのだ。頭の固い田舎の両親がこのことを知ったら卒倒どころの話しではない。茨城に連れ戻される可能性さえ秘めている。同僚の柴崎、鬼教官の堂上、小牧などにバレないように根回しをする郁。同期で横柄な態度を取る(が、実際かなり優秀な)同期の手塚にまで今回は頭が上がらない。

2.恋の障害
「恋の障害」のメインキャラは前作では地味なキャラとして描かれていた無骨な男、小牧教官。図書館内で目の前を歩く少女がケータイを落とした。拾ってあげた郁が声を掛けてあげたが反応が全くない。居合わせた小牧の話しによると彼女は耳がよく聞こえないらしかった。彼女は小牧の近所の娘で中澤鞠江という。鞠江と小牧は家族ぐるみの付き合いで小さい頃から鞠江は小牧に憧れていた節があり、子供心に「大きくなったら小牧兄ちゃんのお嫁さんになる」などと公言していた。年の離れた小牧は既に大人の男性でありどうやら彼女もいるようだった。彼女と楽しげに語り合う小牧を遠めに見ながら鞠江は何度目かの失恋をした。しかし、その彼女と小牧は彼女の転勤でその関係も何時しか自然消滅しており、現在に至っては鞠江は小牧のいる武蔵野第一図書館に足繁く通うまでになっていた。
その小牧がある日突然人権侵害の疑いで良化特務機関に連行されてしまった。
事の顛末はこうだ。
図書館で借りた本を鞠江が学校で読んでいると生徒の一人が本の題名を見て訝しがった。鞠江の読んでいた本は「レインツリーの国」という本で恋愛小説であった。それだけならよかったのだがそのヒロインは難聴者であるとの設定だった。
「中澤さん、耳が悪いのに、難聴のヒロインの本をすすめるなんて無神経じゃない?」
生徒の言ったこの何気ない一言が回りまわって父兄や教師の知るところとなり、未成年身障者への人権侵害ということになったらしい(うーむ、そんなあほな・・・)。
連行された小牧について、図書隊内部ではどうあっても小牧を助け出す術を見つけ出したかったのだが、肝心の小牧の隔離されている居場所が分からない。
その、居場所を突き止めたのは郁の同期の手塚であった。手塚は数年間音信不通の兄に連絡し小牧の居場所を聞き出すことに成功した。小牧は「自分が捕まったことは鞠江には知らせるな」と堂上に言い含めてあった。直情型の郁は鞠江に連絡を取り、小牧を助けるべく奔走する。小牧は無事に戻ってくるのか・・・
この設定はなかなかよかったよ。小牧と鞠江は共に初心な分だけ「頑張れよ」と応援する気持ちがいやでも高まってくる。
更に特筆すべきはこの事件の問題となった本、「レインツリーの国」が有川浩の手によって本当に出版されることになったことであろう。

レインツリーの国
レインツリーの国
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有川 浩
新潮社


出版元は新潮社からで、メディアワークスと新潮社のコラボレーション企画ということらしい。出版会ではあまり例を見ないこの企画、なかなか楽しみである。

3.美女の微笑み
本書で美女といえば誰か? ヒロイン(若しくはヒーロー)は笠原郁で間違いないのだが美女となると話は違う(郁、すまん・・・)。
そう。クールビューティ、柴崎しかありえない。柴崎は自他共に認める美貌の持ち主である。そんな柴崎が図書館に来館した若い男性に声を掛けられ一緒に昼食へ出かけていった。同室の郁をはじめ、密かに柴崎を(高嶺の花とは知りつつも・・・)狙っていた男性図書館員たちも驚いていた。柴崎のお相手は朝比奈光流という三文小説に出てくるよーな名前の持ち主である。朝比奈は行政問題の研究をしているとのことで、現在は図書館問題について調査しているようだ。
柴崎は幼い頃から自分が「綺麗な顔」であることを分かっていたので同性からのやっかみも相当な数(その殆どが言われなき迫害)だったが、高校・大学と進学するにつれ、自分の立ち位置を上手く確立する処世術を意識的に身に着けていた。
柴崎が戻ってきてから、郁はあれこれと柴崎に「どうよどうよ?」とたずねてきたが「どうってことない」とにべもない。
時を同じくして「週刊新世相」に昨年逮捕され世間を賑わせた高校生連続通り魔事件の後日譚の報道が掲載される。この「週刊新世相」の取り扱いにおいて、各図書館でちょっとした問題が起こっていた。問題は「週刊新世相」に犯人の少年の供述調書が全文掲載されていることだった。図書館では「恣意を交えない資料収集」をモットーとしている。利用者の「知る権利」と「少年法による未成年保護」の間で閲覧を許可するのかどうかの対応は各図書館に一任されていた。郁の所属する武蔵野第一図書館での対応は閲覧禁止であった。この決定に郁の反応は如何に? そして柴崎と朝比奈の関係はどーなるのか?
この章は次章以降の伏線となる一章とう位置づけだろう。しかし、柴崎の人となりが薄っすらと垣間見える章ともなっている。

4.兄と弟
2章で登場した鞠江から武蔵野第一図書館のホームページに奇妙なページがあることを小牧は知った。そのページには「図書館員の一刀両断レビュー」として書評が掲載されていた。そこには鞠江と小牧には忘れることができないあの「レインツリーの国」に関する書評もあった。この本は小牧が鞠江に薦めた一冊で、2章の部分でも言及したようにこの本を巡り小牧は良化特務機関に連行されてしまった経緯がある。しかし、この本のおかげで鞠江と小牧の距離が随分近づいたのも事実である。そんな二人の大切な一冊がこの「図書館員の一刀両断レビュー」で「買う価値は全くない」とバッサリと斬られていた。
図書館の総意ではなくあくまでも一図書館員の意見として書かれているこのレビューを書いたのは砂川一騎という図書館内でも比較的目立たない人間だった。このことを耳にした堂上は砂川と同室でもある手塚にどういう経緯でこの書評を書き始めたのか探りを入れてもらうことにした。手塚の調べによると砂川は自ら館長に提案し、館長の了解を得ているとのこと。更に話しを聞くと砂川は手塚の兄の慧が主催する「図書館未来企画」という研究会に通い始めたとのことであった。手塚の父は、日本図書館協会の会長であり、日本の図書館の総元締めという立場にあった。その父と慧は図書館の今後の未来について意見が折り合わず、数年前に家を飛び出していたのだ。手塚から見ても兄の慧は非常に優秀で父親からもゆくゆくは自分の後を継いでくれるものだとの確信が少なからずあったのだろう。そんな兄が父と仲違いし、自ら作り上げた「図書館未来企画」という団体は最近かなりの勢力を保有していた。
そしてそのホームページのレビューの存在は案の定出版元の出版社の知るところとなり、図書館側にクレームが付けられた。砂川の背後には手塚慧の姿がちらほら見え隠れする。更に、砂川は査問会で共謀者に郁の名前を出してきた。郁にとって見れば勿論何のいわれもないことであり、全く以って関係なく、濡れ衣ってやつである。
果たして郁はこの危機を乗り越えられるのか・・・
全ては第5章へと・・・

5.図書館の明日はどっちだ
砂川が何故、郁を共犯者だと言ったのか? 図書館側では皆目検討が付かなかったが、郁は査問会へと出席せざるを得ない状況となった。査問会といえば聞こえはよいが、相手は半分拷問紛いに近いことも厭わない組織だ。そのことは以前査問会に出頭した小牧も身にしみて実感している。査問会に出席した郁がキチンと質疑応答ができるように図書館側では郁に対して「想定問答集」による対策を講じた。頭で覚えることが苦手な郁にはかなり堪えたが、ついに出頭日を迎えた。
郁は査問会で自らの潔白を証明することができるのか。そして砂川の処遇は?
この章のラストで郁は以前から探していた王子様をついに特定してしまうのだ(マジですか?)

ここでネタをバラすか?有川浩。こんなことされると、絶対次の一冊も買わなくてはいけないじゃないか・・・
図書隊の話しはめでたくシリーズ化され、本書以降でも郁や堂上、手塚、柴崎に会えるというのはかなり嬉しいっす。徒花スクモさんのイラストもGood!です。

「図書館内乱」はシリーズ化における登場人物紹介的な位置づけのような一冊だが、十二分に楽しめる一冊となっており、かなりオススメである。そして彼らの恋愛話も更に進展することを大いに願うのであった(あ、郁の場合はちょっと引き伸ばして貰った方が面白いかも)。


■他の方々のご意見(全体的に好評である)
まいじゃー推進委員会!
怪鳥の【ちょ〜『鈍速』飛行日誌】
やぎっちょのベストブックde幸せ読書
ひなたでゆるり
life is journey
コンパス・ローズ

その他大勢の方々 がお読みになっています。


posted by りょーち | Comment(5) | TrackBack(8) | 読書感想文
この記事へのコメント
こんばんは、りょーちさん。
TB頂きありがとうございます。
>「近未来恋愛戦争オモシロ小説」
確かにそんな感じですね。
かなり強烈な恋愛モードで、どうしましょうって恥ずかしいけど、癖になりそう(笑)
最後に郁の王子様があんなにあっさりバラされるとは。
続きが気になって眠れない!(なんてことはないですけど)
Posted by 雪芽 at 2006年10月23日 22:08
雪芽さん、こんにちは。りょーち@管理人です。
コメントいただきましてありがとうございます。
このシリーズ、強烈すぎます。
雪芽さんもBlogに書かれていらっしゃいましたが、この作品、キャラ同士の会話が絶妙すぎます(^^;
王子様(?)への対応を含め、次回作が早くも望まれる今日この頃です。

ではでは。
Posted by りょーち at 2006年10月24日 09:01
はじめまして。
「怪鳥の【ちょ〜『鈍速』飛行日誌】」の白い怪鳥です。
ご紹介していただいて、ありがとうございます。
図書館内乱、良いですね。
ここで終わらされるのは・・・・・なかなかヤキモキさせてくれる作者さんですよ。
続きが待ち遠しい限りですね。(^.^)
Posted by 白い怪鳥 at 2006年10月25日 22:07
白い怪鳥さん、こんにちは。りょーち@管理人です。コメントいただきましてありがとうございます。
白い怪鳥さんの書評を楽しく拝見させていただきました。ホントに「ここで終わりかよっ!」って感じですよね(^^;
次回に(かなりの)含みを残しつつ終わった本書。ホントに続きが待ち遠しい限りです。
ではでは。
Posted by りょーち at 2006年10月27日 17:09
「砂川一騎」にはモデルがいるそうです。
『ず・ぼん』13号を見れば、バレバレだけどね。
Posted by トゥルグ at 2008年01月17日 17:15
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「図書館内乱」 有川 浩
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ラブコメ方向へシフト:図書館内乱
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Weblog: 本読みの記録
Tracked: 2009-11-19 23:20

有川浩 「図書館内乱 図書館戦争シリーズ?」 (追記あり)
Excerpt: 図書館戦争シリーズの2巻目です。 (第一巻「図書館戦争」のレビューはこちら⇒http://blog.goo.ne.jp/hi-lite2974/e/013e5d1c0ff5d804cba7cf6ac..
Weblog: 映画と読書とタバコは止めないぞ!と思ってましたが…死にそうになったので禁煙か?
Tracked: 2011-05-18 19:47