2006年10月17日

宮部みゆき:「誰か」 このエントリーをはてなブックマークに追加

誰か ----Somebody
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posted with amazlet on 06.10.17
宮部 みゆき
実業之日本社
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りょーち的おすすめ度:お薦め度

ってことで、宮部みゆきである。どーだ、まいったか(謎)。

「誰か」という本書のタイトルを耳にしたとき、ミステリー界の女王、宮部みゆきの作品ということで、「フーダニットものなのであろう。よしよし」と思いながら読んだが、読み終わってみてこの「誰か」というタイトルに妙に頷けるものがあった。
通常ミステリ小説においては「犯人は誰?」ってところに焦点があたるものである。本書でも勿論犯人探しという骨子はあるものの、夫々の登場人物が「誰か」を探している。

杉村三郎は大企業「今多コンツェルン」の広報室で社内報を作っているサラリーマン。妻は今多コンツェルンの会長、今多嘉親の娘の菜穂子である。ただ、菜穂子の母は嘉親の正妻ではなかった。銀座のギャラリーを経営していた菜穂子の母と嘉親がどうやって知り合ったのかは謎であるが、菜穂子と嘉親の関係はいたって良好である。桃子という一人娘にも恵まれ普通のサラリーマン生活を送っていた。

ある日、杉村は今多嘉親より直々にある命を受けた。それは、今多嘉親の運転手の梶田信夫に関することであった。梶田とは少なからず面識があったのだが、その梶田が自転車にひき逃げされて殺され、犯人は未だ捕まっていないという。
その梶田の娘が父の犯人探しの一環として、父に関する本を出版したいという。杉村は以前「あおぞら出版」という出版社につとめていたこともあり、話しを聞いてやって欲しいということであった。

梶田の娘は姉の聡美と妹の梨子の二人姉妹であり、杉村は日を置いて、この姉妹の話しを詳しく聞くことにした。話しを聞いてみると、本を出版したいのは妹の梨子の方でどちらかといえば、姉の聡美の方は犯人は見つけたいようであったが、出版という行為には消極的であった。姉の聡美は結婚を控えており、今回の父の他界により結婚の延期も考えているようである。はじめての姉妹との打合せが終わった後、聡美は妹のいないときに杉村と話しをさせてほしい旨を伝えた。
聡美と杉村とでの二人だけで話しをした際、聡美は自分が幼い頃に父に恨みを持つ女性に誘拐されたことを打ち明ける。誘拐の話しは梨子は知らないようだ。聡美は梨子が父の生い立ちなどを詳しく調査を進めていく過程で「誘拐」の件が知られるのを嫌がっていた。父は今多嘉親の運転手になる前に玩具会社に勤めていたようで、誘拐はその頃に起こったのだ。まだ、梨子が生まれる前の話しである。そして誘拐された犯人に言われた「父のせいだ。父に恨みがあるから、私を殺してやる」という言葉が今でも忘れられないという。梶田は誰かに恨みを買い、その代償として娘である聡美が誘拐されたということのようだ。聡美は今回の事件もその「誘拐事件」が絡んでいるのではないかと思っている。梶田は休みの日にはふらりと車に乗りどこかへ行くことも多いが姉妹の知る限り、事件が起こった石川町付近には何のゆかりもなく、「何故父がそこにいたのか」ということに疑問が残っていたのだ。

杉村は梶田をそんなによく知っていたわけではなかったが、恨みを買うような人物ではなさそうではあった。ともあれ、杉村は姉妹の望みである「父を殺した犯人を捜す」ということに協力をすることにし、事件現場の石川町付近に出かける。事件現場付近のマンション付近には、ひき逃げ事件があった旨と、行方不明の犯人の目撃証言を募るタテカンがあった。マンションの管理人や付近住民、警察の話しを総合すると、どうやら犯人は少年のようであった。
そして、杉村は聡美の「誘拐」に関する話しにどの程度信憑性があるかはわからなかったが、今回の事件は案外聡美の指摘する28年前の誘拐事件についても調べるため、梶田の以前の勤め先のトモノ玩具の経営者のところにも足を運んだ。トモノ玩具の社長は梶田のことをあまりよく覚えていなかったようであるが、経理担当だった社員が当時のことを良く覚えているはずだということで、近いうちに連絡を取って話しを聞いてあげるとの約束をしてくれる。
そうやって、梶田信夫に関する過去をひとつひとつ丁寧に調べていくうちに、梶田家の抱えるある秘密に気づくのだ・・・

本書における杉村三郎の役回りは「探偵」役であると同時にロールプレイングゲームの主人公という印象を受けた。ひとつひとつ謎を解いて次のステージに進んでいく過程が丁寧に書かれている。そして、物語の終盤における「謎解き」に関しては解かなくてもよい謎まで解いてしまうあたりは貫井徳郎の「鬼流殺生祭」の朱芳慶尚(すおうよしなお)にも似ている。

そして、本書で登場する様々な「家族」は夫々の問題を抱えている。そしてそれを解決するためにはやはり家族の協力というか絆ってのが力を発揮するわけである。しかし、家族の中でお互いのベクトルが違う方向を向いているのであれば、その家族は破綻してしまう。その怖さと同時に家族による強い絆についてもメッセージが向けられており、ミステリー小説を読みながらも向田邦子っぽい家族愛的なドラマを見せられたよーななかなかよい作品となっているっす。

#図書館で借りることができたので、ちょっとラッキーだった。

■他の方々のご意見(宮部みゆきさんだから結構みんな読んでますねぇ)
今日のmilky&chelsea
たこの感想文
本を読む女。改訂版 | 「誰か」宮部みゆき
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