ドッペルゲンガー宮 《あかずの扉》研究会流氷館へ (講談社文庫)
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霧舎 巧
講談社
売り上げランキング: 85226
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りょーち的おすすめ度:

20世紀最後の新本格派推理作家、霧舎巧をご存知でしょうか?
本書「ドッペルゲンガー宮」は霧舎巧さんのメジャーデビュー小説なのである。
ちなみに「霧舎巧」というペンネームはあの島田荘司さんが名付け親だそうである。
本書はどことなく有栖川有栖さんの江神シリーズを髣髴とさせるストーリーなので、江神シリーズの好きな方にはお薦めの一冊である。実はこの「ドッペルゲンガー宮」も「あかずの扉」シリーズとして、現在2005年2月までに「カレイドスコープ島」「ラグナロク洞」「マリオネット園」とビシビシと出ているのである。でも「マリオネット園」以降、シリーズが中断しているみたい・・・
で、おそらく、霧舎巧さんはこの「ドッペルゲンガー宮」を書く際にシリーズ化をある程度見据えていたのではないかと思う。
有栖川有栖さんの「江神シリーズ」をご存知の方は、あかずの扉研究会会長の後動悟は江神。二本松翔は有栖という構図で読んでみればわかりやすいだろう。由井広美は思い当たる節がないんだけど、「孤島パズル」の麻里亜というよりも、森博嗣さんの犀川創平シリーズの西之園萌絵に近いかも。
で、当然、後動悟はホームズ役、二本松翔はワトソン役となるのである。このあたり、ある意味推理小説の王道ですね。
先にも記載したように、本書は「あかずの扉研究会」シリーズの1作目となっているため、前半部分の人物紹介が少し冗長だったのはいたしかたないかと思う。ただ、ラスト付近の謎解きはそれにもましてかなり長めだった。本格推理小説好きの方にはもしかしたら垂涎の展開なのかもしれませんが、ちょっと長かったかな?
でも、謎解きが長い理由として犯人の綿密な計画を看破する後動悟の論理的思考と真相にたどり着くまでに用意された数多くの伏線を考えれば気持ちのいい分量かもしれない。
本シリーズは北澤大学に通う二本松翔という青年から見た視点で物語が紡がれていく。「ドッペルゲンガー宮」は翔が北澤大学の「あかずの扉研究会」に入部するところから物語が始まる。
「あかずの扉研究会」は文字通り「あかずの扉」を研究するサークルである。大学にこんなサークルがあったら「入りたい!」と思うあなたは推理小説フリークでしょう。
構成メンバーは翔と同学年の不思議な少女、由井広美。広美とは別の意味で不思議な霊感のよーな能力を持つ綺麗なお姉さん、森咲枝。自称(ホントに自称なのだが)名探偵の鳴海雄一郎。「あかずの扉研究会」には必要だと思うどんな鍵でも開けられる(らしい)大前田丈。そして会長で素晴らしく頭脳明晰な後動悟(でも五年生?)。
本格推理小説に必要な要素をそれぞれが持っているというメンバーが小説のように(?)偶然集まっている。そしてワトソン役は先に紹介した二本松翔なのである。
なぜ推理小説にワトソン役が必要かといえば、読者と同じ目線を持つ、または読者よりちょっとだけ賢い頭脳の持ち主が必要なのだ。そしてそのワトソン役は読者を上手くミスリードし、真相にたどり着く道を迂回しながら進ませる舵取り役なのだ。
そういう意味で言えば本書に登場する二本松翔はワトソン役としてパーフェクトに立ち回ってくれている。
ストーリーだが「あかずの扉研究会」に行方不明の女生徒を探して欲しいという依頼が舞い込んでくる。依頼人は一般の人には全く知られていない超名門女子高校(そんなことあるのか?)の教員からだった。行方不明の女生徒、氷室涼香は祖父の氷室流侃が当主となる流氷館とよばれる館に囚われているという。
自称名探偵の鳴海は行きがかり上、氷室涼香救出のため流氷館へと潜り込むが、そこでは恐るべき連続殺人事件が待ち受けている。
本書の読みどころは幾つかあるのだが、本格推理小説が根っから大好きな人間だと思われる人(=霧舎巧)が書いた本格推理小説なので、推理小説に関する数多の薀蓄が随所に溢れている。(このあたりは有栖川有栖氏の江神シリーズと同様)
次に、伏線の張り方に余念がない。来るべきラストに向けて着々と準備されている伏線が本物の名探偵の後動に解かれる(説かれる)プロセスは本格好きでない推理小説ファンにも読み応えがあるであろう。
次に、青春小説としても(一応)成り立っている。このあたりも江神シリーズとオーバーラップするところがある。
で、ここまで書いて、以前りょーちが書いた「孤島パズル」の感想を読み返してみると似たようなことが書かれている(^^;
江神と後動の両者はホントかっこよすぎです。
犯人と思しき人物が二転三転するのですが、当然、最後は後動悟がキメてくれちゃいます。爽快ですよ。
いろいろなサイトを見て見ると本書には賛否両論ある見たいですが、りょーちはどちらかと言えば好印象でした。論理に破綻のない本格推理小説を読みたい方は霧舎巧はお薦めです。1点気になるところを挙げるとすれば、キャラクターが「おとなしい」かな? お上品とも言えるのかもしれませんが、折角特長のあるキャラ設定なので、もうちょっとキャラが持つ本来の動きをさせてあげたらいいのではないかと思います。(偉そうにすみません・・・)
霧舎巧さんには「あかずの扉研究会」の続編の執筆を是非是非お願いしたいです。(2001/10以降出ていないよーな気が・・・)
どなたか「あかずの扉研究会」の続編についての情報をお持ちの方は教えてくださーい。
長い・・・
すごい文章量ですね。
ぼくのブログは一言感想って感じなので。
負けました。
また勉強しにきます。
「あかずの扉シリーズ」はぼくも待ってます。
では、また。
>すごい文章量ですね。
文章作成能力が欠如しているので短くまとめられないんです(ホントに・・・)。
続編を非常に期待しています。
オオキタさんのページのプロフィールに記載されている「好きなもの:はるかかなた」っていうのはもしかして「海原はるかかなた師匠」のことですか? はるか師匠のあの髪型は凄いですよね。あのギャグで生きてきたと言っても過言ではないかも。仲良くなれそうな気がします(^^;
私はリーガル天才・秀才/昭和のいる・こいるあたりも非常に好きです。
ではでは。
こちらかも返させていただきました。
しかしりょーちさん、ものすごい文圧ですね!
ちょっとびっくりしてしまいました。
今のところ「マリオネット園」以後は出てないですよね〜。
「霧舎学園シリーズ」の執筆で忙しいんでしょうか?
よくわかりませんが、次作もいい作品であることを期待しています。
そーいえば、私、「霧舎学園シリーズ」はまだ挑戦していないんですよー。どうもあの表紙を見るとちょっとレジに持っていくのを躊躇してしまいます(偏見?)
カケルと由井広美の関係もなかなかいいですよねー。このあたりはちょっと青春群像っぽい雰囲気を醸し出していますね。そういった意味で感想文にも書きましたが、有栖川有栖氏の江神シリーズとオーバーラップするのかもしれません。
朔さんのページに書かれている記事の
http://blogs.dion.ne.jp/chronicle/archives/669521.html
の
>ドラクエの復活の呪文ではありません(笑)
は、実は若者はよくわからないかもしれませんね(^^;
残念ながら私は復活の呪文世代です。
朔さんのページにもまた(こっそり)おじゃまさせていただきまーす。
ではでは。
ネットサーフィンをしていたらたまたまここに来ました。
《あかずの扉》研究会シリーズは僕も大好きです。
「マリオネット園」以降の新作も待っているんですがまだ出ていませんね。
去年でた霧舎さんの短編集には《あかずの扉》研究会が登場する話もありますからよかったら読んでみてはいかがでしょうか。
それと去年の秋「小説NON」に後動さんとユイが出ている短編が載っていました。普段まったく手に取らない雑誌をたまたま霧舎さんが執筆した号だけ手に取ったことに何か運命的なものを感じました(今おもうと大げさだな)
「霧舎学園」シリーズも読んだほうがいいと思います《あかずの扉》ともリンクしていますし、チョイ役で研究会のメンバーが出ることもありますから(個人的にはそれが生殺しになってるんですが)
私も「マリオネット園」の続編を切望しています。
《あかずの扉》研究会出演の短編集があるんですかー。是非読んでみたいです。
「学園シリーズ」って《あかずの扉》とリンクしてるんですねー(知りませんでした・・・)
ちょっと(勇気を出して)買ってみようかなー。
巧な匠さん、有益な情報、本当にありがとうございました。(早速今晩書店に行かねば・・・)
ではでは。