2006年05月15日

井上夢人:「ダレカガナカニイル」 このエントリーをはてなブックマークに追加

ダレカガナカニイル…
井上 夢人
講談社 (2004/02)
売り上げランキング: 52,518

りょーち的おすすめ度:お薦め度

こんにちは、三笑亭夢丸です(嘘です)。

本書「ダレカガナカニイル・・・」は、井上夢人が岡嶋二人解散後に始めてピンで執筆した作品である。最近、某宗教団体の教祖の裁判に関するニュースが取り沙汰されているが、この作品が世の中に出たのが1992/1/20であるので題材としてもタイムリーな作品でもありました。そして このミステリーがすごい! 1993年版 (書評Wiki)にも選ばれた名作です。

関東警備保障に勤務する、西岡悟郎は業務中の盗聴が見つかり、山梨県の山間の小さな村に異動することになった。西岡が新たに担当する警備先は新興宗教団体「解放の家」の修行道場であった。「解放の家」は現在テレビなどでも話題になっている新興宗教団体で、吉野桃紅(葉山美津子)という教祖が主催者となっているのだが近隣住民とのトラブルが絶えず、西岡の所属する会社に警備の依頼がきたのだ。
現地では西岡の他に松崎という気のいい若者と一緒に警備に当たることになる。怪しげな新興宗教の警備ということで閉口気味だったが、松崎が言うには毎夜10時ぴったりに美人のお姉さんが差し入れを運んでくるのが唯一の楽しみらしい。美人の招待は教祖の吉野桃紅の実の娘、葉山晶子だった。

その日も晶子は西岡達に夜食を持ってきた。車の中で夜食を受け取ろうとした西岡は後ろから何か強い衝撃を受けてその場に倒れこんだ。松崎も晶子も何が起こったのか全くわからなかったが、それどころではない事件が起こってしまった。西岡達の警備する道場から火災が発生したのだ。晶子は道場にいる修行者達を避難のため誘導し、西岡達は火災現場へと向うが火の手は一向に静まらない。
やがて鎮火した火災現場からは吉野桃紅の死体が発見される・・・

その日からだった。

火災を起こした責任を取り西岡はついに会社をクビになる。そして東京への帰りの電車ではじめてその「声」を耳にした。
「声」は西岡の頭の中から西岡に呼びかけた。
声の主は自分を「火災により焼死した吉野桃紅である」と主張する。物理法則的にはありえない話しではあるが、兎に角声だけは紛れもなく聞こえてしまう。西岡は解放の家で出会った精神科医の池永に会って話しを聞いてみることにしたのだが、納得できる答えは出てこない。

西岡は「声」を受け入れはじめていた。そして原因究明のために、松崎に会うために山梨を再度訪問する。そこで松崎から事件当時の警備用のVTRを借り受ける。その足で出火のあった道場へ行ってみると、教祖の娘、葉山晶子と再会する。

東京に戻った西岡は東京で大学病院の先生に自分の頭がおかしいのではないかと相談するが、西岡を納得させられるだけの説明は得られなかった。
更に「声」は西岡の味覚や視覚までも体験できるようになっていた。
西岡は半ばあきらめモードで声の主と共存できる方法を模索する。東京に戻り暫くしてまたもや葉山晶子と再会する。晶子は現在信者の家で同居しているという。
晶子は西岡も認めざるを得ない不思議な力を持っていた。西岡と晶子は次第に互いを意識し始める。
そして晶子は西岡の中の「母、吉野桃紅」と話しをしてみると言い始めた。
晶子は「ポワ」と呼ばれる幽体離脱をすることにより、西岡の中に入り西岡の中の「吉野桃紅」と話しをしてみるといい始める。
そして実際に試してみるのだが、非常に強い意志で「母」に跳ね返される。
一方、声の主は自分が何故、誰に殺されたのかを知りたく西岡と共同で犯人探しをはじめる。そしてそこで分かった意外な事実とは・・・


オカルト的な要素が多分に登場するため、ミステリーファンの中では本書は純粋なミステリーではないと指摘する方もいるようであるが、ある制約条件の元に起きた謎を解決するという点では十分にミステリー小説として認めてよいのではないかと思う。
はじめてこの本を読んだとき「えー、そーなのかー」とかなり衝撃を受けたばい。当時新刊で購入した新潮ミステリー倶楽部の本を今でも持っているのだが、もう10回以上読んだばい。1992年1月の発行なので時代背景としては多少古い描写も記載されているが今読んでも十分楽しめる。


■他の方々のご意見:(概ね好印象?)
[苗],ダレカガナカニイル
ミステリ&SF感想vol.80
たこの感想文: (書評)ダレカガナカニイル…
お片づけ箱:[書評]ダレカガナカニイル…-井上 夢人 - livedoor Blog(ブログ)
Grave of memory:井上 夢人の「ダレカガナカニイル…」読了 - livedoor Blog(ブログ)

posted by りょーち | Comment(4) | TrackBack(4) | 読書感想文
この記事へのコメント
こんにちは。お久し振りです。
実は先日岡嶋二人の「99%の誘拐」を読み終えて、かの作家を知らずにいた自分を反省した次第です。
で、次は絶対「クラインの壺」読むぞー、と思っていたら、どこの書店でも見つからず、思い余って「おかしな二人」を読み始めちゃいました。
井上夢人さんの持つ文章のリズムや物語の構成、すごく好きです。これも読みたいなと考えてますけど、まずは岡嶋主要作品の制覇からですので、ちょっとお預けかなー。
松本サリン事件は94年、地下鉄サリンは翌95年。92年にこの作品が上梓されていたってのがすごいです。
Posted by marine at 2006年05月17日 00:02
marineさん、こんにちは。りょーち@管理人です。コメントいただきましてありがとうございます。

「クラインの壺」書店にありませんかー。
そして、「おかしな二人」を読み始めましたかー。興味深い順番でお読みになられていますねー。
お気づきかと思いますが「岡嶋二人」というペンネームは「おかしな二人」をもじったものです。岡嶋二人はこの「クラインの壺」を最後にコンビを解散しており、コンビ作家時代のエピソード(コンビ解消の話しも含む)について書かれたのが「おかしな二人」なんですよね。
そしてコンビは解消し、井上泉は井上夢人となり初めて執筆した小説がこの「ダレカガナカニイル…」です。
井上夢人さんは「映像が思い浮かぶ」ような文章が得意な作家だと思います。
最近、井上夢人さんの新作をあまり読めていないので機会があったらまた読んでみたいと思います。

ではでは。
Posted by りょーち at 2006年05月17日 02:10
ども、036.ismと云います。

コメント貰ったので、覗きに来ました。
オススメだけあって面白そうですねぇ。。。

後、個人的にも気になってた「図書館戦争」も感想で好評価されてるんで
かなり面白そうなんで、機会があったら是非読んでみたいと思います。
自分もよく映像化するなら・・・って勝手に配役を考えることが多々あります。
結構楽しいんですよね・・・ではぁ〜<(_ _)>
Posted by 036.ism at 2007年01月26日 12:12
こんにちは、りょーち@管理人です。
コメントいただきましてありがとうございます。
井上夢人のデビュー作ですが、結構面白かったです。
「図書館戦争」もイイですよー。文句なしにオススメです(^^;

>勝手に配役を考えることが多々あります
私も、よくやります。殆ど妄想に近いんですけど(^^;

ではでは。
Posted by りょーち at 2007年01月26日 12:31
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


(書評)ダレカガナカニイル…
Excerpt: 著者:井上夢人 目の前で進行宗教の教祖が焼死した。その瞬間、何者かの意識が俺の中
Weblog: たこの感想文
Tracked: 2006-05-15 19:54

井上 夢人の「ダレカガナカニイル…」読了
Excerpt: ダレカガナカニイル… 井上 夢人 著 ダレカガナカニイル・・・ ★★★★☆ 警備員の西岡は、新興宗教団体を過激な反対運動から護る仕事に就いた。だが着任当夜、監視カメラの目の前で道場が出火、..
Weblog: Grave of memory
Tracked: 2006-05-18 22:02

脱 〜「ダレカガナカニイル・・・」〜
Excerpt: 「ダレカガナカニイル・・・」(著:井上夢人)を読んだ。 新興宗教団体の警備に就いた西岡。 しかし、その初日、突然監視カメラの目の前で道場から出火、教祖が焼死した。 それ以来、彼の頭の中で女の声..
Weblog: サナダ虫 〜解体中〜
Tracked: 2006-07-02 01:16

「ダレカガナカニイル・・・」 井上夢人
Excerpt: 警備員の西岡は、新興宗教団体を過激な反対運動から護る仕事に就いた。だが着任当夜、監視カメラの目の前で道場が出火、教祖が死を遂げる。それ以来、彼の頭で他人の声がしはじめた。“ここはどこ?あなたはだれ?”..
Weblog: Dear Book
Tracked: 2006-10-07 13:54