2005年01月31日

平山瑞穂:「ラス・マンチャス通信」 このエントリーをはてなブックマークに追加

ラス・マンチャス通信
平山 瑞穂
新潮社
売り上げランキング: 111723
おすすめ度の平均: 4.5
4 不条理な世界へ迷い込みたいときにお勧め
2 そんなにいいか?
1 なんじゃこりゃあ?
5 3月で絶版・文庫化未定!!
5 呪われた世界の呪われた家族

りょーち的おすすめ度:お薦め度

装丁買いだったのだが結構面白かった。
あ、でもこの本の全ての意味が分かって「あー、面白い小説だった」ってことではないっす。面白かったのは「こんな奇妙な話しを書くひとがいるんだー。この人の頭の中はどーなってるんだろー」という意味での面白さだった。
装丁は「上田早夕里:火星ダーク・バラード」の田中達之氏によるイラスト。これがインパクト大だった。更に「 第16回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作 」という宣伝文句に目がとまったので、「あー、もうこれは買っちゃうんだろーなー」と思いながら本屋を一周して本屋から出たらやっぱり買っていた(^^; (まあ、いいのだが・・・)

で、読んで見たらやっぱり装丁どおりのおどろおどろしさが展開されていた。この奇妙な世界観はなんなのだろう? 
ホラーなのかなんなのかジャンルも曖昧な感じであり、H.P.ラヴクラフトのクトゥルー神話のような「なんだこりゃ」感に、 H.R.ギーガ(H.R. Giger) のよーな「奇妙奇天烈感」をミキサーで引っ掻き回したような印象の小説だな、こりゃ。

ここで「ラス・マンチャス」は「ラ・マンチャ」の複数形で云々というよーな解説を述べてもしょーがない。
ストーリーもあるようでない。(いや、ないようであるのか?)
・畳の兄
・混血劇場
・次の奴が棲む町
・鬼たちの黄昏
・無毛の覇者
の5章からなるこの小説。
主人公の「僕」は5人家族で、父と母と姉と僕と「アレ」と一緒に住んでいた。「アレ」とはこの家族では「いないもの」として扱わなければならない。「アレ」のやることはいつも滅茶苦茶で、ある日姉と留守番していたときにうっかり「アレ」を殺してしまう。姉と一緒に裏の森へ「アレ」を捨てに行く。戻ってきた家族は「アレ」の存在を忘れてしまったかのように振舞うが「僕」は施設へと収容されることになった。
施設の中での生活は窮屈なもので、女の子とも出会えない。それなりに「良い子」にしていた「僕」はその後施設を出てレストランで働くことになるが、レストランの中でのいじめ(のようなもの)のため、ここも退職。
ほんで、どうも怪しい灰の降る町へ行き、「ゴッチャリ」と呼ばれるかくも怪しい灰を除去するお仕事をイナガワさんと始める。灰の降る町には人をも喰ってしまうよーな「次の奴」と呼ばれる巨大な蜘蛛がいたりする。住人達はみんな「僕」には無関心であるが、ひょんなことからこの町で一番綺麗な女の子の由紀子とイナガワさんとの共同生活が始まったりする。
更に、イナガワさんの始める新しい仕事でセールスをすることになった「僕」はひょんなことから別れた姉と遭遇する。しかし、姉はいとも恐ろしいモノと結婚していたよーである。更に姉や謎の画家「小嶋さん」などがまたもや登場し、物語はクライマックスへと向う。
ってストーリー話してもしょうがないんだけど。というのはこの物語はストーリー重視ではないような気がしている。「こうしてこうしてこうなってその結果こうなった」的な物語ではない。
非常に難解で、りょーちはおそらく作者の意図するところの47分の1も(中途半端だが)理解できなかった。でも、ちょっとヘンな世界観を覗くことができた気がする。
あれだ。中井英夫の「虚無への供物」や竹本健治の「匣の中の失楽」とか夢野久作の「ドグラ・マグラ」とかそういった本を読んで「うーむ、よくわからんかったが、凄い」って印象に非常に近いと思う。(でも、ちょっとディープなので一般ウケはしないかも)
そういう意味ではラストはぐちゃぐちゃのままで終わっても良かったよーな気がする(ダメ?)。

もしこれが漫画の原作になるのであれば、作者は諸星大二郎か梅図かずおか大友克洋あたりにお願いしたい(無理?)。

平山瑞穂さんは1968年生まれの立教大学卒業の女性の方らしいが男性の方、最近1968年生まれの作家の方が結構頑張っているよーな気がする。
■1968年生まれの作家さん年代が近いので、ぜひとも頑張ってほしいところです。
ってことで、平山瑞穂さんは次回作をぜひとも読んで見たい作家の一人としてりょーちの中にインプットされちゃいました。次回作にも期待大です。
posted by りょーち | Comment(4) | TrackBack(3) | 読書感想文
この記事へのコメント
TBありがとうございます。
僕も同じで、作者の意図するところの47分の1も理解できませんでした。審査員の方々には好評のようですが、確かに一般ウケはしなそうですね。でも、楳図かずおさんが漫画にするってのは確かにおもしろそうかも。

愛のLAH LAH LIFE:毎週水曜は『ドルフィンの読書工房』
お暇があれば、また寄ってくださいね。
Posted by dolphin at 2005年02月01日 13:07
dolphinさんこんにちは。りょーち@管理人です。
(勝手に)トラックバックおくっちゃいました(^^;
dolphinさんのサイトに「リカ」を書かれた五十嵐貴久さんから直接コメントがあったんですねー。いや、すごいですよね。
「リカ」は拝読いたしましたが、怖かったですよ。物語からの怖さではなく、リアルな怖さでビビリました。
「ドルフィンの小説ランキング」の中の本で私の好きな岡嶋二人さんが1位にランクインしていてちょっと親近感を(これも勝手に)覚えてしまいました。
今後もちょくちょく拝見させていただきまーす。
ではでは。
Posted by りょーち at 2005年02月01日 16:19
>平山瑞穂さんは1968年生まれの立教大学卒業の女性
電子書店のカテゴリでも間違われていますが、平山瑞穂さんは男性ですよ。
Posted by 通りがかり at 2005年02月05日 15:54
通りがかりさんこんにちは。
>電子書店のカテゴリでも間違われていますが、平山瑞穂さんは男性ですよ。
お、そーなんですねー。すっかり女性とばかり思っていました(^^;
ご指摘いただきましてありがとうございましたー。
ではでは。
Posted by りょーち at 2005年02月07日 09:04
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平山瑞穂
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Tracked: 2005-02-23 17:36

平山瑞穂
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コレラの時代の愛/ラス・マンチャス通信
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