りょーち的おすすめ度:

人間の顔ってのはいいことに越したことはないけど、自分の顔にはある程度コンプレックスを誰しも持っていると思う。自分の顔を自由に変えることができたりすると面白いかといえば、案外そうでもなさそうな気がする。
顔を変えたい人はいろいろな理由がある。
女性や男性が「カッコよくなりたい」というのがその典型的な理由だと思うが、犯罪などを行った人が逃亡するために整形をしたりすることもあるだろう。犯罪者でなくとも、過去を変えたかったり、ストーカーなどの被害に遭遇し、付きまとわれないように顔を変えるということも考えられる。
でも、普通は自分の顔に満足して(若しくは妥協して)親から貰った自前の顔で一生を過ごすのではないか?
本書はこの「顔」を中心とした物語である。
ミステリー小説でやってはいけないことはいろいろあると思う。ミステリー小説のお作法的な概念が作者と読者の間で「暗黙のルール」があると思う。例外はありますし異論はあると思うが、りょーちの考えるミステリー小説のお作法は、
・死人が犯人として連続殺人を犯す
・今まで登場していなかった人間が犯人
・現代(または設定時代)の科学力や技術力ではなし得ない機械的トリックによる犯罪
・超能力や霊能力やそれに順ずる能力を駆使したトリック
・探偵役が犯人
と、勝手に思ったりしている。勿論上記の要素を孕んでいても立派な(?)ミステリーになるのだが、りょーちとしてはミステリー小説としては納得いかなかった。
うーむ、「火の粉」がかなりよかったのでちょいと期待を裏切られた感じかも。逆に言えば、「火の粉」がそれだけよく出来ていたってことか?
ストーリーとしては、昭和55年に起こった岐阜県の地方都市で起こった殺人事件が発端となる。トラック運転手の荒勝明は自らが起こした事故により勤務先を解雇される。荒は同時期に解雇された時山に唆(そそのか)され、社長宅に押しかけ社長とその妻を殺害し、放火する。後日世間の知るところになり、荒は逮捕され無期懲役に。主犯格の時山は責任を荒に押し付け軽刑で早期に出所。荒は20年後に出所するが、刑務所の中で働いてためたお金、約100万円を出所後直ぐにチーマー風(ってもう言わない?)の若者に取り上げられてしまう。
一文無しとなった荒は、路頭に迷うが、服役中に何かとお世話になっていた、山田という人物に連絡を取り世話になることに。
荒の出所と同時期に、20年前の事件の関係者が次々と殺害されていく。20年前の事件の担当していた滝中守年刑事が今回の連続殺人事件の事件解決に向けて捜査を開始していく。
その滝中の娘、朱音は東京で芸能人とモデルの中間のような仕事についている。朱音は年齢のせいもあるが、事務所の後輩にばかり仕事が回ってくることに苛立ちを感じつつも岐阜には戻りたくないとの思いからなし崩し的に仕事をしている。現在付き合っているカメラマンの湯本弘和とはゆくゆくは結婚したいと考えているが弘和の方は結婚など全く考えていない。偶然にもこの湯本弘和は20年前の事件の容疑者なのであるが朱音はそんなことは全く知らない。
滝中と捜査を共にする同僚の辻は顔に痣を抱えており、メンタルヘルスとして北見という心療医師の元へ時間を見つけて通っている。
滝中と辻は事件解決に向け捜査を行っていくが、残された指紋などから本星とも思える荒が実行犯なのか疑問を抱き始める。更に捜査が進んでいくにつれ20年前に殺害された社長夫婦の息子が捜査線上に浮かび上がる。彼も当時の事故により顔に酷いやけどを負っていたはずであるが、現在その行方を知るものはいない。
滝中は癌に侵された体に鞭打ち、これが最後のヤマとして犯人逮捕への執念を見せていく。
「ふむふむ」と読み進めていき、残りページ数も少なくなり「どうよどうよ?」となりかけた際、りょーちは犯人と思しき人の「オレはやっていない」という独白で「え、そうなの?」と思ってしまいました。「じゃあ誰なの?」と謎は広がり発散していくのであった。
この場面をよんだりょーちの感覚は 本の林に月の船 のみずはらさんが書かれた感想の印象とほぼ同じ。
滝中おじさんは一人で納得していたが、「どーなのよ? このラスト?」とちと思ったばい。
印象としてははじめの方で「これは荒勝明の物語なのかなー」と思って読み進めていくとどーも話が違うなーと思い、誰に焦点を当てて読むべきか悩みつつ読んでいくと、後書きまで辿りついたっていう変な読後感だった。
ただ、福井晴敏の解説は読んでいて「なるほどー」と思った。解説の良さに1票!
「火の粉」と「虚貌」を比べると(って比べても意味ないかもしれんが)どっちかっていうと「火の粉」の方が好きかも。
※雫井脩介、お約束の「ふんんんっ!」も健在でした(^^; (←謎)
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私まさに今「虚貌」読んでいます。「火の粉」がスリリングだったのと読後、人間って…という感慨が残ったので、ちょっと期待して読んでいます。
スピードに乗って読めるので、私にしては速く読めそうです。が、暗いですよね。とにかく、「最悪」を読んでいるときのような、「なんでこの人ばっかりが、こんな目にあうの?」っていうやりきれない気持ちでいっぱいです。
まだ、「上」の中盤なので、これからまだまだ状況も変わり、どうなっていくのか。乞うご期待というところです。
では、またお邪魔します。
>とにかく、「最悪」を読んでいるときのような
そーですよねー。りょーちもそんな感じしました。
読了された際には、ご感想を伺いたいなーと思います(^^;
ではでは。
この『虚貌』を読んでみて、結構考えるところがあり、心に残る小説となりそうです。
もちろん、ミステリーとして「あ〜」というところは正直感じました。
この記事をトラバさせていただきました。
また、りょーちさんのサイトもご紹介しました。
また、面白いミステリーや本を紹介してくださいね。
では!
pikakoさんの「虚貌」の感想、拝見いたしました。やっぱり、ちょっと重い感じを引きずりますねー。「ミステリー小説」の範疇ではないと思いますが、人間模様としては、なしではない気がしました。
そーいえば、雫井脩介さんの「犯人に告ぐ」を読みました。完璧でした。もう素晴らしいの一語につきました。これは迷うことなくホントによかったです。
「犯人に告ぐ」の感想も落ち着きましたら書いてみたいと思います。
ではでは。
P.S.
通勤途中の読書にはお互い注意いたしましょう(^^;
「火の粉」があまりにも面白くて、勢いに乗って「虚貌」もすぐに読みました。たしかにこれはこれで面白かったんだけど、何だかほんのちょっぴり物足りない感じが・・・どこがって言われると困るんだけど。やっぱ「火の粉」の方が面白かったなぁって思ってしまいました。
でも次は「犯人に告ぐ」を読もうと思ってます。
雫井脩介さんの「犯人に告ぐ」はおそらくとしちゃんさんのご期待を裏切らない作品だと思いますよ。りょーちもかなり好印象でした。
としちゃんさんのBlogにも(こっそり)おじゃまいたしますね。
ではでは。
初めまして。TBありがとうございます。
「火の粉」の方が評判いいみたいですね。
「犯人に告ぐ」はもっと評判いい。チェックします。
今後ともよろしくお願いします。
ブログリストに登録させてください。
「虚貌」もなかなかでしたが、「火の粉」はかなり良かったです。更に、「犯人に告ぐ」も犯罪小説として非常に優れた作品だと思いました。
>ブログリストに登録させてください。
どーぞどーぞ(^^)/
そーいえば、よしさんのBlogで紹介されてます奥田英朗さんの「空中ブランコ」を遅ればせながら拝読いたしました。よしさんのご指摘の通り、私も2004年を代表する一作だなーと感じました。
今後ともよろしくお願いいたしまーす。
ではでは。
今の『症候群』シリーズの次に、同僚から借りた「永遠の仔」を読むのでだいぶ先になりそうですが…(^.^;)
「犯人に告ぐ」は相当お薦めです。雫井脩介さん関連で申し上げますと、今週の土曜日に「火の粉」がテレビ朝日系でドラマ放映されちゃいます!
びっくりですよー、ホント。
いやー、楽しみですよねー。
今は、貫井さんの「症候群」シリーズですね。設定がGメン75っぽくってなかなかよかったです(ハングマンに近いかな?)
「永遠の仔」の作者の天童荒太さんは、「ほぼ日刊イトイ新聞 - 天童荒太さんの見た光。」の中で、こんなことを言っています。
http://www.1101.com/tendou/2004-04-21.html
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で、苦しんで、
「もっとあるだろう、もっとあるだろう」
と思って書き続けた
『永遠の仔』が終わったときには、
やっぱり、書きはじめる前とは
違うところまで、
階段をのぼりきっているんですね。
ただ、のぼりきったときには、
もう次の階段が見えているんです。
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めちゃくちゃカッコイイですよね。
「永遠の仔」はあのボリュームなので中々手が出せていないのですが、死んじゃう前に読みたい作品ですねー。
ではでは。
「火の粉」に続き「虚貌」昨日とその前の二日で一気に読みました〜(←仕事しろよ〜)
私的には、やはり「火の粉」のほうが良かったかも。背景が一般的?主婦や小さい子供いるという設定が、入りやすかったのかな?この前にも書いたように、「火の粉」は2〜3日ずーっと頭に残ってたけど、「虚貌」はそんなには??
結局りょーちさんと同じ意見でした♪
私は、「犯人に告ぐ」を一番最初に読みましたが、これは「火の粉」と(虚貌」の間かな〜?と思ってます。
ただ、涙は読み終わって「虚貌」が一番出ました。人間性が強い作品なのかな〜と思ったりして。
ところで、本の帯に「ドラマ化決定」とありましたが、もうドラマ化したのでしょうか?私は「雫井」作品を知ったのは、今年の5月なので、「火の粉」ドラマ化された後で、すごくショックでした。 ここの書き込みで、雪見は「原さん」と知りました。りょーちさん、あとのキャストご存知でしたら、ぜひ教えてくださ〜い!
以前、「火の粉」にコメントいただきましたよねー。その節はありがとうございます。
やはり「火の粉」はインパクトありました。これも池本のキャラが強烈だったからかもしれませんね。
「虚貌」のドラマ化はそーいえば情報をGetできていません。
しかしこのストーリー。どうやってドラマ化(映像化)するのでしょうねー。
難問ですね。
「虚貌」のドラマ化の情報がありましたら是非是非おしえてくださーい。
なお、「火の粉」のほかのキャストは下記に書いてみました。(参考まで)
http://ryouchi.seesaa.net/article/1984255.html
ではでは。
キャスティング、とても興味深いものとなりました。
武内は村田さん・・う〜んなるほど!全然想像してなかったけど、ぴったりですね。NHK教育で、前に「○番目の小夜子」?だったっけ、子供向きのホラーサスペンスみたいのやってて、結局、いい人(先生)役の村田さんが犯人だったな〜。
池本杏子は、やはり私的に「木村多江」ですが、「相本さん」もいいかも。でも柳沢わね〜〜ちょっといただけません・・。もっと暗い系?真面目風な人がいいなあ。
キンキンもどうかな?私も同じく、ねんじい(小林)がいいと思います。朝丘雪路・・あの人って・・?お嬢様風おばちゃんだから、どうかな。小姑の方が、良かったかも。でもあの人、姑に苦労したらしいし、いいかも。
あ〜又、本出してきて、読み直したりして、二度美味しい♪ ドラマ、再放しないかな〜〜。又、情報あれば教えてくださいね♪
武内役の村田さん、結構よかったですよ。
相本久美子さんも最近いろんなところでみかけるようになり十数年前のアイドル時代とはまた別の雰囲気で登場していました。
柳沢慎吾さんも意外と見ていて違和感がなかったです。
りょーちも再放送希望です。
ではでは。
トラックバック失礼致します。
この作品、上巻をよんで
すごく下巻を期待していたので
あのごたごた感はなんとも残念でした!
火の粉、とてもよいそうですね!
是非愛海も読もうと思います♪
また遊びに来ます☆
コメントいただきましてありがとうございます。
>あのごたごた感はなんとも残念でした!
そーなんですよねー。
りょーちは、福井晴敏さんの解説がなければいまでも何がなんだかわからなかった感じで終わっていたかと思います(^^;
前半部分は結構よかったのに・・・
ではでは。