2006年03月02日

群ようこ:「別人「群ようこ」のできるまで」 このエントリーをはてなブックマークに追加

別人「群ようこ」のできるまで
群 ようこ
文藝春秋 (1988/12)
売り上げランキング: 146,037
おすすめ度の平均: 5
5 面白かった!!
5 手元に1冊
5 この本を片手に私も転職しました。

りょーち的おすすめ度:お薦め度

こんにちは、雪山で遭難した沖田成利です(嘘です)(生徒諸君って知っている人少ないよな・・・)

群ようこといえば椎名誠ファミリー(りょーちが勝手に言っているだけですが)でも数少ない女性の一人。今でこそ押しも押されぬ一流エッセイストと言っても過言ではない。本書は群れようこ自身の転職日記でもあり(当時)零細企業&弱小出版社として細々と活動していた「本の雑誌社」の女性事務職員の赤裸々な(と言っても艶っぽい話しは一切ないのだが)記録である。

これがかなり面白い。

群ようこがデビューしてもうかなり前の話であるが、当時流行した物事についても触れられており、ちょっとした昭和史のような雰囲気も垣間見せてくれる。大学を卒業して自由が丘の広告代理店に入社した作者のありえないドタバタ社会人デビュー。世の中の人々は広告代理店という言葉に憧れていたナツカシキ時代。しかし、現実はそう甘くなかった。初めに入った中堅広告代理店での仕事は激務で同期入社の新人たちは猫いらずを食べたネズミのよーにバタバタと一人二人辞めていく。先輩OLの染谷さんは冷たく、満員電車に乗り奮発して買った9800円のサンダルは見るも無残にぐちゃぐちゃに・・・
仕事もまったくクリエイティブさのかけらもなく、上司のファッカー山田に連れられて得意先に行ったのはいいが、仕事内容はカタログの「ダイレクドライブ」の「ド」の濁点をカッターで削り取る(校正漏れのためそのまま間違って上がってきてしまったようだ)というアナザーディメンジョンとも思える仕事。ストレスにより十円玉大のハゲが二つもできてしまう。もう見るも無残な職場である。
考えに考え転職することにした。次の転職先では中江滋樹似の社長にセクハラまがいのことを強要されやめてしまう。
そんな群ようこは本が大好きで、書店で偶然見つけた「本の雑誌」に衝撃を受ける。そして本の雑誌社の事務員の求人情報に応募してなんと採用されてしまう。
その当時、椎名誠はストアーズ社に勤めていたサラリーマンだったのだが、本の雑誌社をもっと大きくしたいという野望にも駆られていた。零細出版社にとって社員を一人雇うということは大きな決断だったのだが、給料3万円という薄給にも関わらず群ようこは「本の雑誌社」で働く決意をする。

当時本の雑誌社は配本部隊という書店に本を配るメンバーが存在し、その多くは学生アルバイトだった。群ようこはそこで学生の元締めのよーな存在であった。小さな出版社で人数もいないため、総務・経理的な仕事は全て自分でやらなければならなかった。全く以って急がしい日々だった。当時の本の雑誌社に寄せられる苦情の殆どは「予定通りに本が出版されない」という書店からのクレームだった。出版社として読者が本を待ち望んでいることは喜ばしいことなのだが、椎名誠と目黒考二は色んなところに飛び回りいないことが殆どなので全て自分で対応しなければならない。
そんな中、群ようこに転機が訪れる。忘年会であった西村かえでさんより書評を書いてほしいと依頼があった。その依頼を引き受けることになった際、本の雑誌社でペンネームを考えようという話しになった。目黒孝二は自分自身でも幾つかペンネームを持っており(北上次郎、群一郎、藤代三郎、車道郎など)その中のひとつである「群一郎」の一文字と「ようこ」を組み合わせて作られたのが、この「群ようこ」だった。ちなみに「ようこ」は目黒孝二の初恋の人の名前だそうだ・・・orz。
ある意味これで『別人「群ようこ」のできるまで』の幕を引いてもよいよーな気がするのだが、話しはまだまだ続いていく。外の出版社に向けて書評を書いていくにつれ、群ようこの才能にいやでも気づき始めた他社の出版社からも次第に執筆の依頼が来るようになった。結局忙しくなって「本の雑誌社」を退職することになったのだが、その後の活躍はみなさんご存知の通りです。

群ようこさんを含め、登場人物がかなり魅力的です。椎名誠さんのエッセイでもおなじみの沢野ひとしさんや木村晋介さんなども登場し、毎日が文化祭前日のようなドタバタな状態でこの本の雑誌が立ち上がった様子が臨場感と笑い溢れる独特の文体で綴られていて、何時読んでも同じところで笑ってしまう、そんな一冊です。

小説家の方は全ての経験が執筆のための材料になると思うのですが、群ようこさんの執筆されている本などを拝見しますと、かなり特異な人生を歩んで来られたようですが、それが上手く作品に活かされているなーと感じます。
群ようこさんの小説を読んでいると「いつも怒っている」よーな印象を受けます。負のエネルギーが彼女の執筆の原動力になっていると思うのは私だけでしょうか?
■他の方々のご意見:
本に包囲された日々 別人「群ようこ」のできるまで
posted by りょーち | Comment(0) | TrackBack(2) | 読書感想文
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