2006年02月09日

三浦綾子:「氷点」 このエントリーをはてなブックマークに追加

氷点
氷点
posted with amazlet on 06.02.09
三浦 綾子
主婦の友社 (2000/10)
売り上げランキング: 210,959
おすすめ度の平均: 5
5 三浦綾子のデビュー作

りょーち的おすすめ度:お薦め度お薦め度

こんにちは、桂歌丸です(嘘です)。

名作とはこういう作品を言うのだろう。原田洋一氏の書いた、あとがきによると、三浦綾子がこの氷点を書き上げたのは1964年(昭和39年)らしい。その小説が今もなお世代を超えて多くの読者に愛されているのにはどういう理由があるのだろう。

本書のテーマとなっているのは「原罪」である。三浦綾子の言うところの「原罪」というものは奥が深い。原罪とは「人が生まれながらにして持っている罪のこと」らしい。韓非子の性悪説に近いものなのかなと思っていたがちょいと違うようだ(うーむ)。

舞台は三浦綾子の出生地でもある旭川の小さな病院。辻口病院の院長の辻口啓造は大学時代の教授である津川の娘、夏枝と結婚し、徹とルリ子という二人の子供にも恵まれた。世間から見れば収入的にも安定し幸せそうな生活を送っているように見えた。
ある日、啓造の留守中に妻の夏枝は辻口病院の眼科の医師である村井靖夫から求愛を受ける。村井と夏枝が情事に耽っている際に娘のルリ子が行方不明になる。
なんとルリ子は川原で殺されていたのだ。程なくルリ子を殺害した容疑で佐石土雄という容疑者が捕まる。佐石は発作的にルリ子を殺害してしまったのだ。ルリ子をなくしたショックと自分が村井と会っていた時に殺害された後悔とで夏枝は精神的にもかなり衰弱していた。啓造は村井と夏枝の様子から二人がルリ子の殺害時に情事に耽っていたことに気づき、夏枝への怒りを鎮めることが出来ずにいた。
辻口は夏枝よりルリ子の殺害のショックを癒すためにもどこかから女の子を貰って欲しいと懇願される。徹とルリ子を生んだ後、夏枝は子供が産めない体であったこともあり啓造は夏枝の願いを聞き入れることにした。そんな中、大学時代の友人の高木よりルリ子を殺害した佐石の娘が孤児院に預けられているとの連絡を受ける。そしてそのとき啓造の頭に恐ろしい計画が湧き上がるのだ。
佐石の娘を夏枝に育てさせる

辻口のその考えは一度は払拭したのだが、夏枝が村井と密会していたときに殺されたルリ子を思うとその思いを最後まで跳ね除けることは出来ず、結局佐石の娘を養子として貰ったのだ。このことは高木と辻口の二人だけの秘密だったのだ。
そうとは知らぬ夏枝は娘の名前を陽子と名づけ、我が子のように可愛がるのだ。陽子も母の愛情を受けまっすぐに育っていく。村井も病気で病院を去っていき辻口家には平穏な日々が続いていた。しかし、それも長くは続かなかった。夏枝は辻口が友人の高木に宛てた手紙を発見し、愕然とする。そこには陽子があの佐石の娘だと記されていたのだ。夫である辻口の自分に対する怒りを知り慄然とし、夏枝の怒りは我が子同然に育ててきた陽子へと向けられる。
それからというもの、夏枝は陽子に対して冷たく当たるようになった。頭の良い陽子は母が自分を好いていないことに薄々気づいていたが黙って耐えていた。
陽子に対する夏枝の陰湿ないじめは執拗に続く。学芸会用の服を買い与えない。給食費を与えない。卒業式の答辞を白紙にすり替える。様々な夏枝のいじめに陽子は耐える。そして陽子は新聞配達のアルバイト時に自分が貰われてきた子供だということをはじめて認識する。私は貰い子だから母は辛く当たるのか?
その後、更に歳月が過ぎ兄の徹の友人、北原を一人の男性として意識し始める。そして兄の徹も陽子が実の妹ではないことを知り、徹も陽子を一人の女性として意識し始めるのだ。
辻口家はそういった、いつ壊れても不思議ではない危険を孕んでいた。
そしてその臨界点が突然やってくる。夏枝が陽子に真実を告げたとき、陽子の取った行動は・・・

自分の娘を殺害された辻口と夏枝の元に、加害者の娘が陽子が養子になってやってきてしまったことがどの登場人物に辛い試練を与えている構図になっている。
下記の人物相関図を参照いただきたい。

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夫々の登場人物が複雑に敵対(赤)/友好(青)関係にあるのだが時系列によってこの色と繋がりが微妙に変わってくる。陽子の出生の秘密が明らかになり、真実が白日の下に晒されたとき、人々はどのように受け止めるのだろう。
本作では最後に「業」や「許し」といった問題定義がなされる。そして続・氷点では、陽子の最後の手紙を起点として物語が進められていく。

氷点で着目したい点は、本書では本当の悪人は存在していないことではなかろうか? 夫々がちょっとしたタイミングで不幸な出来事に遭遇し、その不幸が更なる不幸を連鎖して生み出す。不幸の連鎖の中心には陽子がいるのだが、何の非の打ち所もない陽子が最後に母に「許し」を乞っている。純粋にまっすぐに生きた陽子が導き出した最後の行動を起点に果たして周囲の人々は何を思うのだろうか?

きっと何年か後にまたこの本を手にするだろう。
■他の方々のご意見:
みにとっとの読書録: 「氷点」
*さやかの音符帳* 「氷点」(上下) 三浦綾子(中学生?)
早稲田MBAで さようなる:『氷点』:人間の「原罪」とは何か?
うちでのこづち: 氷点
わたしのおぼえがき | 氷点
posted by りょーち | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想文
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