2006年02月07日

ヘミングウェイ:「老人と海」 このエントリーをはてなブックマークに追加

老人と海
老人と海
posted with amazlet on 06.02.07
ヘミングウェイ 福田 恒存
新潮社 (1966/06)
売り上げランキング: 11,284

りょーち的おすすめ度:お薦め度

こんにちは、鳥羽一郎です(嘘です)。

前から気になっていたヘミングウェイの「老人と海」。これだけ有名な小説および作家なので作品名や作家名は勿論耳にしたことがあったのだが、ヘミングウェイがどういう作家で「老人と海」がどういう話しなのか全く知らずに読んでみた。読み終わった後に本書がヘミングウェイの最後の小説だということを知った。単行本の解説によると、ヘミングウェイは1899年に生まれ、1952年にこの「老人と海」を書き上げた。1954年にノーベル文学賞を受賞し、1961年に猟銃で自殺したとのこと。うーむ「武器よさらば」なのに猟銃で・・・(そーなんだ、知らんかった)。

「かなり良い」。その一言である。何故もっと早く読まなかったのか?

「老人と海」の舞台はアメリカから程近いキューバ。既に引退していてもおかしくない老漁夫サンチャゴは、この84日間全く魚を取ることができなかった。以前もこういうことがあった。そのときは少年マノーリンと一緒に漁にでかけ87日間不漁が続いたがその後は三週間ほど大量に恵まれた。少年は老人の漁の準備を手伝い老人を海へと送り出した。
サンチャゴはこれまで行ったことのないほど遠い海へと一人向かい長年の感を頼りに今度こそと大物を狙う。朝早くに港を出た今日も午後まで魚は釣れていない。
船上は孤独であり、一人ぼっちの漁では話しをするものも居らず、かつて大物を釣り上げた記憶を反芻しながら独り言を呟きながらその時を待つのだ。
そんなとき、確実に大物だと分かるアタリを手にする。それは老人が今まで漁に携わってきた中で最も大きな獲物だった。カジキマグロだ。尋常ではないその引きに老人は戸惑いと同時に大きな期待を寄せる。老人とカジキマグロの文字通り「死闘」の幕開けだった。
本書の読みどころは「老人とカジキマグロの四日間に及ぶ闘い」と「老人とカジキマグロとの会話」だろう。漁師と魚の「闘い」は「会話」と等しいのだ。四日間もの間、小さな漁船で高波に浚われながらも釣り糸を離すことなく一人巨大なカジキマグロに挑み続ける老人の孤独な闘いが圧倒的な描写で紡がれていく。
その四日間、老人は船上でカジキマグロと闘いながら色々なことを考える。彼の人生を振り返るには四日間というのは十分な時間だった。人は何か大事を成し遂げる際に「この願いが叶えば何でもする」という気になることがあるだろう。老人は敬虔なキリスト教信者ではなかったが
「でも、この魚をつかまえるためなら『われらの父』と『アヴェ・マリア』のお祈りを十回ずつやってもいい。もしつかまえたらコブレの聖母マリアにお詣りするすることを誓ってもいい。さあ誓ったぞ」

と願を懸ける(三日目にはこのお祈りは十回から百回になる!)。祈っているうちにもカジキマグロは休むことをしない。
夢の中に出てくるライオンは老人がまだやれるという意思の表れでもあったのだろう。
そして時間が過ぎていくにつれ、この巨大な忌々しい敵にある種の友情に近い感情が老人の内に芽生えてくる。しかし、この巨大な敵に心を完全に許すことはない。そして四日目、ついに老人は巨大な敵に勝ったのだ! 18フィートもあるカジキマグロを相手に一人の老人が勝ったのだ。老人にとって巨大カジキマグロの闘いは崇高なものだった。その闘いが人生の全てに等しかった。
四日間対峙した敵を船に括りつけ、帰港する間色々なことを思ったに違いない。おそらくこの釣果をあの少年マノーリンにいち早く知らせたかったに違いない。しかし凱旋気分で意気揚々としていたサンチアゴに幸運は最後までついてきてくれない。帰港中カジキマグロの血の匂いを嗅ぎ付けた鮫の大群に殆ど半分以上食い荒らされてしまうのだ。カジキマグロとの死闘の後に老人に残された体力は幾許もなく、港に着いたときには「カジキマグロだったものの残骸」が船尾にあるのみだった。あの崇高な闘いとは対照的な姿を目にしカジキマグロに申し訳なく思うのだった。
本書ではこの二つの闘い(「カジキマグロとの闘い」と「帰港時の鮫との闘い」)を老人の人生を象徴しているのではないかと思う。「カジキマグロとの闘い」は老人の若い頃の人生である。カサブランカの居酒屋で大男の黒人と腕相撲で力比べをし、見事に勝利したあの頃。そして「帰港時の鮫との闘い」は現在の老人の姿。鮫に食い荒らされたカジキマグロが老人とオーバーラップする。
そして港に着いた老人を迎えるマノーリンの優しさが一層の感動を誘う。

もう、名作です。サンチャゴのストイックな生き方は現代社会では偏屈な人間に映るかもしれない。文明社会の現在においてもサンチャゴのように不器用に生きる人々が沢山居る。そんな人に是非読んで欲しい一作である。

■他の方々のご意見:
直径 2〜1/16mm 書評 「老人と海」 アーネスト ヘミングウェイ(Ernest Hemingway)
徒然と(美術と本と映画好き...):老人と海(ヘミングウェイ)
俺思うゆえに俺あり: 老人と海 / ヘミングウェイ
マーレルソサエティの読書日記: 老人と海
読書.net: 老人と海
僕のアメリカ移住スケッチBOOK 老人と海
I WILL BE A TOP ○○
posted by りょーち | Comment(10) | TrackBack(2) | 読書感想文
この記事へのコメント
旅してみたい所のアンケートで、アメリカ〜フロリダ〜ヘミングウェイ〜老人と海でここにたどり着きました。
若かりし頃、読んだ覚えはありますが、もう一度ヘミングウェイを読もうと思いました。そう思わせるナイスコメントだと思いました。
Posted by 早起き鳥 at 2006年07月22日 09:49
早起き鳥さんこんにちは。りょーち@管理人です。コメントいただきましてありがとうございます。
>そう思わせるナイスコメントだと思いました。
そ、そーですか。ありがとうございます。(恐縮です)。
老人とカジキマグロの壮絶な戦いの「これでもか、これでもか」という描写に本当に圧倒されてしまいました。そして死闘の後のサメの残骸に「もののあはれ」を感じずにはいられませんでした。
私にとって非常に印象深い一冊でした。

ではでは。
Posted by りょーち at 2006年07月24日 06:44
夏休みの感想文に利用させて頂きました.
Posted by 暇人じゃない暇人 at 2006年08月31日 01:05
私も若いとき読ませてもらいました。まだ読書の浅い頃一度読んだきりでよく頭の中に入りませんでしたが2つの格闘特にメカジキとのは当たり前ですが鮫との戦いが重く心のひだに残っております。なぜカジキとの戦いに買ったのに鮫にやられなければならないのか又鮫にやられたからこそコーヒーがうまかったのだと。コーヒー飲みましたよね、違ったかな。兎に角黒人との腕相撲は覚えていないのですが彼は安らぎとも思える休息を取るのでした。
Posted by 向田篤御 at 2008年10月07日 09:05
この本は思い入れが在ったんですが入力しても消えてしまいました。
Posted by 向田篤生 at 2008年10月07日 09:16
向田さんこんにちは。りょーち@管理人です。コメントいただきましてありがとうございます。
鮫の件(くだり)はホント切ないですよね・・・
でもこのエピソードなしには「老人と海」は語れないですよね。(これがすべてといってもいいかもしれません)。

ではでは。
Posted by りょーち at 2008年10月07日 21:11
りょーちさん

「老人と海」のブログ、読ませていただきました。
私は、「老人と海」は聞いたことはあるのですが、
今まで読んだことがなく、本日購入しました。
とっても、いい本!と、周りの人からは大絶賛だったので。

そこで、どんな本か“あらすじ”だけでも
頭にいれておこうって思って、いくつかコメントを探したのですが、なかなか良さが伝わらず。

りょーちさんのコメント、めちゃ分かりやすかったです。
しっかり、ポイントおさえて熟読したいと思います☆

ありがとうございました!!^^

Posted by Jimmy at 2009年05月26日 20:48
Jimmyさん、こんにちは。りょーち@管理人です。コメントいただきましてありがとうございます。
私も人伝に「読んでみたらいいよ」と伺ったので読んでみた次第ですが、やはり名作でした。読んでよかったと思います。
再度読むと以前読んだときよりもサンチャゴへの思いも変わってくるかもしれません。
今年中に再度チャレンジしようかなー。

ではでは。
Posted by りょーち at 2009年05月27日 16:19
りょーちさん

「老人と海」、読み終えました。
りょーちさんのコメントを読んでたから
ストーリーが、するする入ってきました。

サンチャゴ、泣かせますね〜。
また、1年後くらいに読み直してみようと思います。
私も、サンチャゴへの思いが変わってるかもしれません。笑
Posted by Jimmy at 2009年06月22日 15:44
Jimmy さん、こんにちは。
りょーち@管理人です。

なんと、読み終えられたのですね。
自分が「いいなー」と思った本を他の方が手にとって読まれて、「いいなー」と感じられるってなんだか不思議な感覚です。

また是非再読したいと思います。
ではでは。
Posted by りょーち at 2009年06月22日 15:56
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