2006年01月26日

岡嶋二人:「クラインの壺」 このエントリーをはてなブックマークに追加

クラインの壺
クラインの壺
posted with amazlet on 06.01.26
岡嶋 二人
講談社 (2005/03)
売り上げランキング: 36,724
おすすめ度の平均: 4.67
5 時代を先取りした名作の復活です。
4 89年の作だが
5 夢中で読めます。

りょーち的おすすめ度:お薦め度

こんにちは。つボイノリオです(嘘です)。(どうでもいいが、何故、全部カタカナじゃないのか?)
「はじめのところから始めて、終わりにきたらやめればいいのよ」
(「クラインの壺」より)

どこからがはじめでどこまでが終わりなのか?
本書を読み終えて夢野久作の「 ドグラ・マグラ 」を思い浮かべた人も多いだろう。
本書、クラインの壺は以前紹介した、「焦茶色のパステル」を書いた岡嶋二人の合作最後の作品である。本書を書き終え、岡嶋二人は解散してしまった。惜しいことである。

タイトルである「クラインの壺」は位相幾何学の読本のわりとはじめのほうによく紹介されている幾何学モデルなので聞いたことのある人も多いだろう。Google のイメージ検索で検索するとどんなものなのかを伺い知ることができる( クラインの壺:Google イメージ検索結果 )。表にいたと思ったら裏だったというよーな壺なのだ。同じよーなものでメビウスリング(メビウスの輪)がよく取り上げられる。メビウスリングの場合は2次元の平面を無理矢理3次元方向に捻じ曲げてくっつけるのだが、クラインの壺は3次元のトーラスを4次元方向に捻じ曲げてくっつけるのだろう(←過去の記憶なので自信なし・・・)。
自分は表にいると思っても実はいつの間にか裏にいることになっている。リアルな世界とバーチャルな世界の区別がつかなくなるまで技術が進歩するとどうなるのだろう。

上杉彰彦がゲームブックに応募した作品は見事落選した。上杉の書いた「ブレイン・シンドローム」は本来ならその発表の場がなく、この世から消えてしまうはずだったのが、この応募作に目をとめた人がいた。それがイプシロンプロジェクトだった。
イプシロンプロジェクトは本社がアメリカにある会社で、現在ある大規模なゲーム機を開発していた。イプシロンプロジェクトの梶谷は上杉に「ブレイン・シンドローム」を元にゲームを作りたいと申し出た。ゲームブックがテレビゲームになるのは然程珍しくもないが、イプシロンプロジェクトが考えている「ゲーム」は上杉の想像をはるかに凌駕していた。梶谷の話した構想によると開発中のゲーム機は人がすっぽり納まるような機械の中に入り、自ら手足を動かして実世界と全く同じような体験ができるというコンセプトであった。バーチャルリアリティ(VR)の精巧なものといえばわかりやすいだろう。このVRが体験できるマシンはK2と呼ばれている。Kは開発コードのKLIENの頭文字である。内部の通り名はその形が壺に似ているため「壺」と呼んだりもしていた。
開発は当初の予定をはるかに過ぎ、上杉もその存在を忘れかけた頃、梶谷から「ゲームのモニタとして参加して欲しい」旨の依頼を受けた。溝の口にある事務所にテストで呼ばれたのは梶谷の他にもう一人いた。それが高石梨沙だった。
上杉と梨沙は梶谷に連れられ溝の口から更に車で移動する。イプシロンプロジェクトは完全な秘密主義を貫いていた。研究所の場所を上杉たちにも教えることができないため移動中も車内から外が見えないような状態で移動するのだ。30分ほど移動したの研究所に着いた。
研究室で早速二人はK2を体験した。それは驚くべき世界であった。上杉が書いたシナリオの世界が現実と全く同じように体験できる。ゲームブックでは「○○したら何ページに飛べ」とか単純な分岐になっているのだが、殆ど日常生活と変わらない世界がそこに広がっていた。ゲームの中で上杉は飛行機に乗っていた。ゲームの設定では「モキマフ共和国に潜入しバード博士が開発した人間の脳を電子回路で制御する開発の内容を調査し、もしそれが完成しているならその脅威を取り除くのだ」というのが大きな命題となっていた。上杉の書いた「ブレイン・シンドローム」と全く同じミッションだ。ゲームの中では圧倒的なリアリティでそれがゲームの中だとは上杉自身も信じられなかった。それは梨沙も同様だった。梨沙も「これが製品化されたら凄い人気になる」と興奮冷めやらぬ様子だった。
ゲームのモニターのアルバイトはほぼ毎日あり、上杉は梨沙とほぼ毎日顔を合わすようになった。上杉は梨沙を好きになりかけていたし、梨沙もまんざらではないように上杉には思えた。
そんな中、梨沙の友人であるという真壁七美から「梨沙の行方がわからない」と連絡がある。梨沙とはバイト先で別れたばかりだったが、アパートには戻ってきていないようだった。翌日バイトに行った上杉は梶谷より梨沙が突然バイトを止めたことを聞いた。自分に何も言わずやめるはずはないと思ったのだが、梨沙は来なくなった。その夜また、真壁七美から電話を受けた上杉は梨沙がバイトを止めたことを告げる。そして七美と会ってみることにした。
七美と渋谷で落ちあい、やはり梨沙の消息が知れないことを知り、二人で心当たりを探すことにした。しかし、全く行方がつかめない。そして七美と梨沙を探していくうちにイプシロンプロジェクトの全貌を知ることになる・・・

果たしてイプシロンプロジェクトの目的は何か?
梨沙はどこに行ったのか?
そして気になっていたK2から聞こえる「引き返せ・・・」という言葉の意味するところは何なのか?

本書は七美が出てきてからが面白い。ラストまで引き込まれるように読ませるそのスピード感とラストのどんでん返しがこの小説を支えているのだろう。本当に引き込まれるようにスイスイと一気に読んでしまえた。読み進めていくと第1章のことをすっかり忘れていたのだが、「そうか、そこに・・・」と納得させられる。もう5回くらいこの「クラインの壺」を読んだけどやはり名作だな。

この「クラインの壺」は、その昔NHKでドラマ化されており、りょーちはとある伝からそのビデオをお借りしてみたことがある。誰が登場していたのかわすれてしまったが、なかなか面白かった記憶がある。今検索してみたら佐藤藍子とか中山忍、嶋田久作など出てたらしい。(クラインの壺 : 評価/情報 等を参照)

どこからどこまでがリアルな世界なのかバーチャルな世界なのかの区別は分からない。哲学の認識論を紐解くと今自分が本当に存在しているのかどうなのか?という命題が出てくる。この文章を書いているりょーちも本当は存在していないのかもしれないっす。
うーむ。

■他の方々のご意見:
ひろの東本西走!?: クラインの壺(岡嶋二人)
岡嶋二人「クラインの壷」読了
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posted by りょーち | Comment(0) | TrackBack(3) | 読書感想文
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Weblog: 粗製♪濫読
Tracked: 2006-01-27 09:37

クラインの壺
Excerpt: <a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/redirect?link_code=as2&path=ASIN/4062750171&tag=respectothers-22&camp=247&creative=1211" target="_blank"><img src="http://images-jp.amazon.com/images/P/4062750171.01.LZZZZZZZ.jpg" alt="クラインの壺" style="border: none;" width="112" height="160" ></a> 「クラインの壺」のレビューをUPしました。 レビューを見てみたい方は当HP↓からどうぞ。 <a href="http://page.freett.com/K_ANCHOVY_A/">Review→PiyoPiyoのReviewへ、から見れます</a>
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