2006年01月12日

岡嶋二人:「焦茶色のパステル」 このエントリーをはてなブックマークに追加

焦茶色のパステル
焦茶色のパステル
posted with amazlet on 06.01.12
岡嶋 二人
講談社 (1984/01)
売り上げランキング: 319,205
おすすめ度の平均: 5
5 競馬のロマンを教えてくれました

りょーち的おすすめ度:お薦め度

こんにちは、新山ノリロー・トリローです(嘘です、っていうか誰も知らねーよ。きっと)

既に知らない人もいるかも知れないだろうが岡嶋二人という推理小説作家をご存知だろうか? 実はもうすでにこの世には存在していない。といっても作者が他界したわけでもない。岡嶋二人とはペンネームなのだが、名前に二人と入っているのにお気づきでしょうか?この作家、実は本当に二人で小説を書いている(書いていた)。一人は徳山諄一と言い、もう一人は井上泉という。井上泉の方は井上夢人と言った方が分かる方も多いだろう。Web上で 99人の最終電車 を執筆(?)されている方であり、「ダレカガナカニイル…」などを執筆している。二人の人物による共同執筆で直ぐに思い出されるのはエラリー・クイーン(従兄弟だっけ?)などが有名だ。
岡嶋二人が書いたこの「焦茶色のパステル」は1982年に「第28回江戸川乱歩賞」の受賞作でもある。
「二人で小説を書いている(書いていた)」という表現にしたのは、現在はそのコンビは解消され前述の通り井上泉は井上夢人となり作家活動を続けているようだ。このあたりの「焦茶色のパステル」誕生秘話やコンビ解消の話しは井上夢人が「おかしな二人―岡嶋二人盛衰記」として書いてあるので興味ある方は一読いただきたい。ちなみにりょーちはこの「おかしな二人」を読むまで井上夢人のファンだったが、これを読んで少し冷めてしまったので井上夢人ファンの方は注意すべしである(謎)。

さて、本書「焦茶色のパステル」は今で言えば「競馬ミステリー」というジャンルになろうかと思われる。先に言ってしまえば本書の中のある部分の真相は相当の競馬オタクでないと登場人物より先に真相を指摘することはできない内容である。しかし競馬に興味がない人にもキチンと理解できるように謎解きが進められている。
シャーロックホームズシリーズでは勿論ホームズが主役で助手のワトソンが「ミスディレクション」をしながらもホームズに何かを気づかせ事件を解決に導いたりする。本書はどちらかと言えばワトソン役とも思える大森香苗が物語の主役となっている。香苗は競馬のことなど何も分からないのだが色々な人々と話しをするうちに馬の知識や競馬の知識を吸収しながら犯人へ辿り着く(辿り着かせられる)というスタイルだ。赤川次郎の三毛猫ホームズシリーズの三毛猫のホームズと主人公の片山(ワトソン?)の関係に類似している気がする。
本書ではこの香苗の知識レベルと一般的な読者の知識レベルがほぼ一致していることが成功の要因のひとつとして挙げられる。香苗の理解のスピードと読者の理解のスピードが殆どシンクロしているため香苗に感情移入しやすいのだ。このあたりは岡嶋二人自身が意識したのかどうなのかは不明だが少なくともそういう印象を受ける。

ストーリーはこんな感じ。
大友香苗は宝飾デザイナーであり、デザインしたアクセサリーを「ヤマジ宝飾」に収める仕事がメインである。ヤマジ宝飾の社長の山路頼子とは仕事面ではよきパートナーである。その山路頼子の夫、山路亮介は「パーフェクトニュース」に記事を寄稿するライターであり競馬評論家という肩書きでの仕事もしていた(ややこしい・・・)。
ヤマジ宝飾の隣にある喫茶店「ラップタイム」に居た香苗の元に刑事がやってきたことにより物語が始まる。
刑事は東陵大学の柿沼幸造が殺害された件について調べていると切り出した。そして香苗の夫である隆一が事件の前に柿沼と会っていたことがわかり参考人として行方を追っているとのことである。香苗と隆一はこのところ仲が上手くいってなく、香苗は離婚をも決断していたところだった。現在の隆一の居場所を知らない香苗は訝しがりながらも隆一の行方が気になっていた。
そんな中、香苗に夫の隆一が銃で撃たれ重体であるとの知らせが飛び込んできた。隆一が打たれた場所は東北にある幕良という聞いたこともない場所だった。
急いで香苗が幕良に駆けつけたときには時既に遅く遺体となった隆一との再会となってしまった。幕良には一足早く駆けつけた山路亮介もいた。隆一が殺害された場所は幕良牧場という牧場だった。幕良牧場は幕良市の市長である織本栄吉がオーナであり競走馬を育成している。
その夜幕良に泊まり翌日の新聞で夫の隆一と幕良牧場の牧場長の深町保夫も殺害されたという記事を見た。記事には隆一と深町のほかに流れ弾によってパステル(牡)とモンパレット(牝)の二頭の馬も死んだことが書かれていた。その日刑事からの事情聴衆を受けた香苗は、昨日受け取った隆一の鞄が何者かによって盗まれていることに気づく。
失意の中東京に戻った香苗は留守中の自宅に何者かが侵入する形跡を見つけ愕然とする。事件はまだ終わっていなかったのだ。
隆一を殺害した犯人は誰なのか。その動機は? 柿沼幸造の事件との関連性は?

「パーフェクトニュース」に勤務する綾部芙美子や喫茶店「ラップタイム」のマスター真岡良太郎などが登場し香苗(と読者)に競馬界の基本知識や馬についての話を色々と教える役割として登場する。

江戸川乱歩賞を受賞した作品と認識して読んだが気になった点は、この綾部芙美子の推理力かな。「頭良すぎるんじゃないの?」と思ったりしたのだが、まあ、それを差し引いても読み物として楽しめる一冊かなと思う。
■他の方々のご意見
たこの感想文: (書評)焦茶色のパステル
メモ:焦茶色のパステル - livedoor Blog(ブログ)
チップを弾むから勇気を分けてくれないか | 焦茶色のパステル
焦茶色のパステル 岡嶋二人|一日一冊 読書評
日常鳥瞰: 焦茶色のパステル
blog - フォーチュンな日々 : 岡嶋二人「焦茶色のパステル」
posted by りょーち | Comment(4) | TrackBack(2) | 読書感想文
この記事へのコメント
こんばんは。
僕の表現拙い記事にトラックバックを頂いたようで…。恐縮の限りです。
りょーちさんは考察が鋭いですね。
僕も常々、一歩引いた視点から客観的に見ること、を心掛けているのですが…。難しいですね。

あれからすっかり岡島二人作品にハマッてしまい、今も読んでる最中です。
よろしければ、また遊びに来て下さい。
Posted by マンドリナー at 2006年01月13日 18:52
マンドリナーさん、こんにちは。りょーち@管理人です。コメントいただきありがとうございます。

>あれからすっかり岡島二人作品にハマッてしまい、
>今も読んでる最中です。
おー、そーなんですかー。
私のお薦めは「クラインの壺」ですね。はじめて読んだ岡嶋作品もこの「クラインの壺」ですが、楽しんで読めました。

マンドリナーさんのサイトにも(こっそり)遊びに伺いますね。
ではでは。
Posted by りょーち at 2006年01月13日 19:09
「焦茶色のパステル」いいですよね〜。
岡嶋二人、大好きでした。
解散してしまって、残念。
乱歩賞受賞前に書いた「あした天気にしておくれ」も、同じ競馬ミステリで、面白いですよね。
もう一作、「競馬ミステリ」と言っただけでネタばれになるあの作品も、好きだったなぁ。

「クラインの壺」はMOCHAも、岡嶋作品の中でイチオシ。
何を読んでもすぐ内容を忘れる私でも、この本の内容は、強烈に覚えています。
Posted by MOCHA at 2006年01月16日 20:51
MOCHAちゃん、こんにちは。りょーちです(なんとか生きてます)。
岡嶋二人、よかったんですけどねー。

>「クラインの壺」はMOCHAも、岡嶋作品の中でイチオシ。
そーなんですよ。りょーちも一押しなんです。
新潮ミステリー倶楽部で読んだ2番目の本だったよーな気がします。(ちなみに1番目は井上夢人の「ダレカガナカニイル…」でした)
新潮ミステリー倶楽部はあの装丁の指紋が印象的ですよねー。あの指紋って確か作者のものなんですよね。
今、実際の本を確認してみたら「クラインの壺」には二つの指紋があり「ダレカガナカニイル…」は井上泉(夢人)さんの指紋しかなかったです。
うーむ、寂しいっす。
そーいえばNHKでドラマ化された「クラインの壺」のVTRを借りたよーな気が・・・(違ったっけ?)

岡嶋作品は映像化されると面白そうなものが結構あるのは、やっぱり井上夢人氏が映像関係の仕事などをしていたのもあるんでしょうかねー。

ではでは。
Posted by りょーち at 2006年01月16日 23:28
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岡嶋二人「焦茶色のパステル」
Excerpt: 岡嶋二人「焦茶色のパステル」本日ご紹介するミステリーは、岡嶋二人さんの「焦茶色のパステル」です。「焦茶色のパステル」は第28回江戸川乱歩章の受賞作になります。昭和57年に刊行された本ですから、かなり..
Weblog: フォーチュンな日々
Tracked: 2006-03-24 23:56

【岡嶋二人】焦茶色のパステル
Excerpt:  今更であるが、岡嶋二人のデビュー作であり、第28回江戸川乱歩賞受賞作である。 講談社 2006/3/27 第 27 刷発行  東北の牧場で二人の男が射殺される。殺されたのは牧場長と競馬評..
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