2006年01月11日

北杜夫:「どくとるマンボウ航海記」 このエントリーをはてなブックマークに追加

どくとるマンボウ航海記
北 杜夫
角川書店 (1996/11)
おすすめ度の平均: 5
5 北杜夫文学の出発点


りょーち的おすすめ度:お薦め度

こんにちは、ドクトル・チエコです(嘘です)。
りょーちが小学生の頃には既にあったのではないかと思われる名作、どくとるマンボウ航海記。後書きを見て(勿論読後に)驚いたのだが、北杜夫が後書きを書いた日付である。1960年2月15日(生まれてねーよ)。マジですか。自分が生まれる前に出版された本はそりゃー今までに何度もよんだことがある。しかし、それらの本は大別すると、夏目漱石とか芥川龍之介となどの所謂「文豪」と称される作家によるものか、江戸川乱歩や久生十蘭、夢野久作などの「怪しげミステリ系小説」のどちらかである。
1960年に出版された本にしてはなんだか非常に軽いノリで書かれている。昭和35年って言ったらもう凄い昔じゃん。今より45年以上前に上梓された「どくとるマンボウ航海記」が今もなお多くの読者に愛されている理由はやはり北杜夫の独特の文体にあると思う。そして、全く以って勝手な推測且つ憶測だが、東海林さだおや椎名誠や嵐山光三郎(どうでもいいがこの人の本名の祐乗坊英昭[ゆうじょうぼう ひであき]って凄い・・・)などもその薫陶を少なからず受けているのではないかと思う(違う?)。

ご存知の方も多いかと思うが本書は作者の北杜夫が1958年の11月から1959年の4月にかけて水産庁の漁業調査船に船医として乗り込み世界を回遊した際の航海録である。約半世紀前の時代は現在のように情報に溢れた次代ではなく世間の人々は情報に渇望感を覚えていたんじゃないかな? 当時は「なるほど・ザ・ワールド」も「世界まるごとHow Much」も「世界ウルルン滞在記」も「世界の車窓から」もない時代なのだ。更にどうでもよいがそんな中、「兼高かおる世界の旅」は1959年には放映されていたのだから凄い。(1990年頃まで放映されていたらしい・・・)
今でこそ一般庶民が
母:「お父さん、来年あたりハワイにでも行きたいわねー」
父:「おお、そうか、弥生も来年は大学生になることだしなぁ。ここは皆で一週間くらいドーンと行ってみるかぁ」
娘:「えー、私、お父さんと一緒に海外旅行なんて行きたくなーい」
母:「弥生ったら、何てこと言うの。お父さんに謝りなさい」
娘:「えー」
父:「まあまあ」

などといったお年頃の娘さんを持つ家庭でこんな会話が当たり前のように繰り広げられる世の中だが、こんな猫も杓子も猫ひろしも海外に簡単に出かけられるよーな世の中だとしても、なかなか五ヶ月間も、しかも船で旅行できる人はそういるまい。

なんだか、話しが思いっきり飛んでしまったが、えーっと「どくとるマンボウ航海記」の話しだ。
本書の読みどころは枚挙に暇がないのだが、りょーちとしては「当時(1960年頃)の一般的な日本人から見た諸外国の様子と日本とのカルチャーギャップ」と「船旅という閉塞的な空間での船員達の面白おかしい暮らしぶり」にあると思われる。
スエズで集り(タカリ)に会い、船内の品々を持っていかれる場面やドイツで玉が入ると電球がパチパチつき数字のでる機械で遊んでいる(おそらくこれはピンボールのことだと思うのだが・・・)のを珍しそうに眺めたり、パリの街では床屋をプロフェッサーと呼ぶことに驚いたりと、目にした新しいもを実に楽しそうに語ってくれるのだ。
船員や現地の人と直接触れ合い交流し、本当に生きた情報を元に書かれているのでその楽しさが読者により一層ストレートに伝わってくる。エッセイとはまさにこういうものを指して言うのではなかろうか?
そしてスバラシイことにこのオモシロさは今もなお世代や性別を超越して楽しめるのだ。当時の感覚で書かれているので幾分女性蔑視的な表現があるものの現代の女性が読んでも憤ることなく素直に楽しめる読み物になっている。

この年齢(どの?)にしてはじめて北杜夫を読んだりょーちは「何故もっと早く読んでおかなかったのか?」と後悔しまくりである。ただ、ありがたいことに北杜夫の本はどの図書館にもありそうなので、暇なときに是非借りて読んでみたいと思うのだ。


memorandum(マンボウ一覧)
どくとるマンボウ青春記
どくとるマンボウ追想記
どくとるマンボウ昆虫記
どくとるマンボウ途中下車
どくとるマンボウ小辞典
どくとるマンボウ医局記 など
posted by りょーち | Comment(5) | TrackBack(1) | 読書感想文
この記事へのコメント
こんにちは、TBありがとうございます。
そーなんですよねー結構古くからある本なんすよね!
今読んでもとても新鮮で軽快で。。当時読んだ人はどれほど斬新に感じられたのでしょう!
ときどき読み返したい本のひとつです。^^

(「兼高かおる世界の旅」・・・な・・なつかしい・・(笑))
Posted by martian(まーしぁん) at 2006年01月13日 19:20
すみません、

×「本なんすよね!」

○「本なんですよね!」

でした。^^;失礼致しました;;
Posted by martian(まーしぁん) at 2006年01月13日 19:24
まーしぁんさん、こんにちは。りょーちと申します。
コメントいただきありがとうございます。

>今読んでもとても新鮮で軽快で。
>当時読んだ人はどれほど斬新に感じられたのでしょう!
そうなんですよねー。私も出版年度を見てかなり驚きでしたー。当時ではかなり衝撃的な作品だったのかなーと思います。今読んでも十分楽しめますしねー。

>×「本なんすよね!」
全く問題ないですよ(^^;

わざわざコメントいただきましてありがとうございました。
ではでは。
Posted by りょーち at 2006年01月13日 19:40
こんばんは。初めてコメントさせていただきます。

私、この本で読書にのめり込んでしまいました。まだ18の頃。

りょーちさんがご指摘の通り、東海林さだおさんは北杜夫さんにも影響を受けているというのを著作の中で語っています。東海林さんの自虐的というか、そんな作風も北杜夫さんぽいといえばそうかも。

この本の中で「男より大きい女はゴリラと変わりがない」と今だったらとんでもない事になりそうな事を平然と書いていましたね。これが時代かと思いますが…
Posted by 自由人 at 2010年09月21日 23:05
こんにちは。りょーち@管理人です。こねとありがとうございます。
>東海林さだおさんは北杜夫さんにも影響を受けているというのを著作の中で語っています。
そーなんですかー。存じ上げませんでした。
大きい女性の件はやはり時代ですよね。その時代時代での表現に着目するのもオモシロイ読み方ですねー。
ではでは。
Posted by りょーち at 2010年09月23日 16:56
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Excerpt: 『どくとるマンボウ航海記』 ひょんなことから手元に来た本。結構おもしろい。夏になるとこんな本が読みたくなるのでちょうどよかった。藤原正彦さんの『若き数学者のアメ
Weblog: 生まれいづる悩みの種
Tracked: 2006-01-13 19:09