2008年12月06日

村上春樹:「ノルウェイの森」 このエントリーをはてなブックマークに追加

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りょーち的おすすめ度:お薦め度

今さらだが村上春樹のノルウェイの森を再読してみた。
ノルウェイの森といえば、超有名なのでストーリーはここでは書かない。
さらに感想文として理路整然とまとめるような文章としてもここには書かず、あくまでもノルウェイの森読書メモといった感じで場当たり的に記載してみる。

この年(?)になって再読すると、まあタイムカプセルを開けたような懐かしさがこみあげてきた。
僕(ワタナベトオル)と高校時代の同級生直子の物語は1970年ころという時代設定。今からもう40年以上前の話しということになる。なので、今の若い読者が「ノルウェイの森」を読むと違和感のある個所も多々あるだろう。
おそらくもっとも理解に苦しむ個所は「なぜ、登場人物のほとんどはひとつひとつの行動に理由づけをしたがるんだろう?」かも。勿論人間は自己の意志により行動するわけだが、物語の登場人物は「意志」というよりも「使命」に近い思惟により行動しているように思える。あるものは「学内デモで機動隊と戦ったり」「ひたすら学業に打ち込んだり」「読書したり」と。まあ学生運動以外は今の時代にも当てはまりそうなのだが、どうも人間の質というものが現代社会とはかなり異なっている。特にこの「ノルウェイの森」の登場人物にはそれが顕著である。

また、この小説ではいろんな人が命を落としている。ここから村上春樹の死生観について何か考察できるのかもしれんが「ひとつの小説で登場人物がこんなに自殺するってどういうこと?」
少なくとも、直子、直子の恋人だったキスギ、永沢さんの彼女のハツミさんの三人は自殺している。自分の周囲の人物が3人も自殺するって・・・
彼らの死はそれぞれ何らかの意味を持っているのだろうが、やっぱ死んでしまってはねぇ。自己の行動規範に沿って行動したアウトプットが自殺となるわけだが全くもって安易である。この点がどうも物語で納得いかない。

小林緑については(おそらく)直子との対極に位置する存在として登場させたのだと思うが、男性読者の多くは直子ではなく小林緑の方に共感する部分が多いことだろう。なぜワタナベは直子にいつまでもこだわり続けて小林緑をすんなり選ばなかったのか? まあ、直子の死後、放浪の旅を終えたワタナベは最後には緑に電話をかけるんだけどね。
りょーちもどちらか選べと言われれば小林緑を選ぶだろう。まあ簡単に言えば「直子=死」「緑=生」ということか。緑の行動が生に向かっているのに対し、直子の行動のすべてが死へ向かっている。そして直子は自殺した。それでも直子の方がよいという読者の感覚がよくわからん。そーいえば「1973年のピンボール」で自殺した女の子も直子だったはず。村上春樹の中でこの「直子」という名前は何か特別な思い入れがあるのかもしれないな。

また、直子が自殺後、阿美寮で同室だったレイコさんがワタナベの元を訪れるシーンがあるのだが、なぜそこでセックスしちゃうのか? まあ、社会復帰のための禊の意味合いがあるのかもしれんが、この行動も最後までよくわからんかったな。

ワタナベの行動で「そう来るか」と思った行動は多々あるが、直子に会うために初めて京都の阿美寮に行った際読んでいた本がトーマス・マンの「魔の山」って「ちょ、待て」。魔の山ってほとんど全編、阿美寮の生活が綴られたようなストーリーじゃん。それ、持って行くか?(ま、いいけど)

全編を通じて虚無感が流れ続け、何かほとんどの人が救われない話のようにも思えてきたな。こんな時は突撃隊のエピソードのひとつでも聞きたくなるな。
また、別の見方をすれば、全編官能小説としても読めなくはない。レイコさんがピアノ教師時代の教え子に陥れられる件とかね。つーかこの教え子、凄いわ。夢野久作の少女地獄に登場する姫草ユリ子と対決させたいな。
まあ、読む人によっていろんな解釈ができそうだねぇ。小説って本来そういうものかもしれんが。

と、まあ不平不満ばかり言っているようにみえるかも知れんが、小説全体としてはやはりよくできているんだな。さらに10年後読んでみるときっとまた違った印象を受けるんだろう。

なお、最近知ったのだが、この「ノルウェイの森」が映画化されるらしい。
アスミック・エース エンタテインメント:村上春樹原作「ノルウェイの森」 映画化決定!!
撮影開始が2009年2月ということなので配役もそろそろ決まるのだろう。
どういう映画になるのか楽しみだな。

参考:映画「ノルウェイの森」キャスト決定 | 2010年秋公開 | りょーちの駄文と書評
posted by りょーち | Comment(1) | TrackBack(2) | 読書感想文
この記事へのコメント
10年ほど前に読んだが、全編夢の中のような非現実感に侵食され、さらに基底には「ただ一つのうしわれてしまった恋」を回想するかのような喪失感にひたされているのが印象的であった。いや、それそのものか。おそらく重要なものがしかも手にいれることなしに失われてしまったというテーマを表現するために、あのような非現実的な舞台が必要であったのだろうか。

彼の音楽評論をよんでいる。(日本の音楽評論で読むに値するのは、村上春樹を除けば小林秀雄、武満徹、あと英文詩の自覚化された方法を音楽評論に持ち込む許俊光くらいだと思っている。)彼の素晴らしい隠喩能力には驚くが、そこに流れる気分も同様なのである。

Posted by gkrsnama at 2010年06月18日 06:58
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