2006年10月03日

新堂冬樹:「鬼子」 このエントリーをはてなブックマークに追加

鬼子〈上〉
鬼子〈上〉
posted with amazlet on 06.10.03
新堂 冬樹
幻冬舎
売り上げランキング: 36,715
おすすめ度の平均: 3.78
1 やだやだ
4 面白いけど
5 崩壊しかかった家庭内の描写が秀逸

鬼子〈下〉
鬼子〈下〉
posted with amazlet on 06.10.03
新堂 冬樹
幻冬舎
売り上げランキング: 36,714
おすすめ度の平均: 4.67
5 上巻含めてレビューします
4 意外な職業の人間がキーになる
5 最高傑作!!


鬼子という単語を見て一番初めに思いつくのは鬼子母神だろう。鬼子母神は安産の神様と言われており、祖師谷かどっかに祭られていると記憶している(確か都電で行けるはず)。
本書のタイトル「鬼子」は「きし」とは読まず「おにご」と読むようである。文字通り「鬼のような子供」の話である。

袴田勇二の職業は恋愛小説作家である。その出す本出す本が全く売れない。本人は自分には才能があると勘違いしているので始末が悪い。何故世間は自分の才能を認めないのかと日々悶々として生活している。
妻の君江と息子の浩、娘の詩織の4人家族と同居する勇二の母の民子を養うためには、小説だけでは生活ができないため、昼間は警備会社でアルバイトをする毎日である。

収入なくとも、一家五人で平穏な家庭を築いていたはずだったが、母の民子が病気で身罷ってから、家庭の状況が一変する。
妻の君江は勇二にやけに冷たくなり、息子の浩が別人のように突然荒れはじめる。勇二は心理カウンセラーの志村に相談に行くのだが、志村は抽象的な意見ばかり述べるに留まり一向にカウンセリングは進まない。浩の父への攻撃は更に過激なものになる。
勇二は「何故自分がこんな仕打ちを受けなければならないのか?」「何が原因なのか?」皆目検討が付かない。

そして、浩の魔の手は父だけでなく、妹の詩織にまで及ぶ。不良仲間に詩織をレイプさせるという神をも恐れぬ行動に出る。そして、詩織はそのショックで自殺してしまう。

このあたりの悲惨な展開は新堂冬樹はお手の物なのだが、この「鬼子」では浩が何故ここまで「鬼」となってしまったのかについて、ある程度納得できる形で理由を提示してある。しかし、読者がその事実を知ったとき「鬼となった息子」を赦すことができるかどうかは疑問である。ちなみにりょーちは、この登場人物の誰も赦すことができなかった。

新堂冬樹の怖いところは、登場人物を完膚なきまでに打ちのめす設定、描写にある。
「鬼子」の中でその刃は袴田勇二に向けられていた。勇二に関する描写のひとつひとつに刺があり、救いようがない。
才能のない恋愛小説家、勇二のペンネームは「風間令也」。
勇二の小説が売れないのは、こんな小説を書いているからであろう。
唐突に明人が石畳に膝をつき、彼の漆黒の瞳と同じ黒いカシミヤのロングコートを脱ぎ去り、水溜りの上へと広げた。カフェでくつろぐムッシューとマダムの、トレイ片手に忙しなく動き回るギャルソンの驚いたような視線が、明人と華穂に注がれた。
『このコートは、君だけが立つことのできる僕の舞台だ。さあ、立つんだ。僕だけの舞台に立って、君の笑顔を見せてくれ』
『コートが汚れちゃうわ・・・』
『こんなもの、君の魅力に比べたら、ボロ雑巾と同じさ』
『ばか、ばか、明人のばか・・・』

「ばかはお前だろう」と「鬼子」の読者は思うのだ。そして勇二の行動の至るところで現れる「ちっちゃな自尊心」にも読者は嫌悪するような書き方がなされている。

もう一人恐るべきは、出版社「日の出舎」の芝野。こいつは出てきたときからちょいと危ない雰囲気を醸し出していたが、マジでこんな出版社の社員がいたら恐ろしい。本書は幻冬舎から出版されているのだが、幻冬舎の社員に芝野のモデルになっている担当者がいるのだとしたら、恐ろしい・・・

(つーか、本当の鬼は新堂冬樹だよ・・・)

■他の方々のご意見(やっぱ、袴田勇二はダメ人間?)
新堂冬樹/読書録/新堂冬樹、鬼子(表紙赤だったのはちょいと意外だった)
Very merry bookdays! | 鬼子/新堂冬樹(「爆笑問題のススメ」で紹介されていたらしい)
★月下精彩★esc.:鬼子 / 新堂冬樹 (後味悪しとのこと。そりゃそーだよなぁ・・・)
posted by りょーち | Comment(3) | TrackBack(0) | 読書感想文

2006年10月02日

ご本人からのトラックバック このエントリーをはてなブックマークに追加

りょーちを含め書評系のBlogなどを書いている人がいろいろいるので、たまに同じ小説を読んだりした場合にはトラックバックなどを送ったり、送られたりする。
Blogではこの「トラックバック」ってので別のBlogなどとゆるやかなつながりを持ったりできるのでちょいと嬉しかったりするのである。
といっても最近はトラックバックスパムとかコメントスパムとかかなり多くて困りものだったりするのだが、今日はちょいと意外なところからトラックバックがあった。
それはこの記事。



イントゥルーダーは高嶋哲夫さんの書かれた長編小説で、小説の内容などは上記リンクから見ていただければよいと思うのだが、このトラックバック元のBlogを書かれている方はどうも 高嶋哲夫 さん、ご本人からのよーである!

うーむ、こんな辺境の地にまでお越しいただき恐縮である。

りょーちは3流ブロガーなので、第三者が読むことを前提にあまり記事を書いた記憶がなく、しかも場合によっては読んだ小説を酷評したりもしているのでちょいと気になり自分の記事を再読してみた(オソルオソル)。

しかし、とりあえず杞憂に終わったっす。(結構絶賛していたので自分の記事を読み終わり、ちょいとホッとしたっす)。
確かに、イントゥルーダはあの時期に書かれた小説の中では、IT系のバックグラウンドがキッチリと書かれた読み応えのある一冊であった。今読んでもあまり古さを感じさせない良作である。

そんな素晴らしい物語を書かれた高嶋哲夫さんがBlogを公開されているとは全く存じ上げなかったのだが、ご本人のBlogによると、現在は新聞小説「決壊」をメインに力を入れていらっしゃるとのこと。

本当の技術者が手がける技術的な視点から書かれた小説は世の中にまだあまり出回っていないので今後とも高嶋哲夫さんに注目であろう。

posted by りょーち | Comment(2) | TrackBack(0) | 書籍全般