りょーち的おすすめ度:

こんにちは、少女隊でお馴染みの引田智子です(嘘です)。
「チームバチスタの栄光」で第4回「このミステリーが好き(通称このミス)で大賞を受賞したことでかなり話題となった海堂尊が早くも続編を書き上げた。(もう出たのかよって速さっす!)
本書「ナイチンゲールの沈黙」では「チームバチスタの栄光」でお馴染みの愚痴外来田口と厚生労働省唯一無二の奇人白鳥圭輔の最強タッグが殺人事件の謎に挑む。
事件の核となる人物は小児科病棟に勤務する看護士の浜田小夜。網膜芽腫(レティノブラストーマ)で手術予定の中学三年生、牧村瑞人。デビュー当時は売れない歌手だったが、最近リメイク盤が大ヒットしている歌手の水落冴子。そしてデビュー当時から冴子のマネージャーを勤めている城崎。彼らが事件にどう関わっていくのか。そして、田口&白鳥はどーやって事件を解決していくのか。
東城大学医学部付属病院の看護士の浜田小夜と如月翔子は忘年会の後、ホスト風の男に声を掛けられる。ホスト風の男に「今を時めく水落冴子のコンサートチケットがあるので聞いていかないか」と声を掛けられる。それが城崎だった。小夜たちは怪しいと思いながらも後をついていく。ホールには確かに水落冴子の姿がある。冴子の歌は予想を遥かに超えて素晴らしいものだった。歌が終わると城崎は小夜に「舞台に上がって歌を歌ってくれないか」とお願いした。そして先ほどまで歌っていた冴子も小夜に歌うように勧めるのであった。しかたなく小夜はステージに立ち歌い始めた。そのときである。冴子が舞台の袖で突然倒れた。小夜たちは救急車を呼び自らの勤める東城大学医学部付属病院へと一緒に向った。
冴子は通称ドア・トゥ・ヘブンと呼ばれるVIPの隠し部屋に緊急入院することになった。救急患者をドア・トゥ・ヘブンにいれる手はずを整えたのはたまたま病院に居合わせた田口であった。田口は不定愁訴の医師である。昼行灯、愚痴外来のグッチーと揶揄され、医学部のヒエラルキーの最底辺に位置する人物である。
水落冴子は極度のアルコール依存症であった。その冴子に田口はスペシャルアンプル(ミニチュアボトルのお酒)を与えたりした。もう滅茶苦茶である。
同じ頃、小児科ではレティノ(網膜芽腫)の牧村瑞人と五歳の佐々木アツシの手術前の対応に悩まされていた。レティノは眼の癌である。瑞人とアツシの手術は眼球摘出を伴う大きな手術だが、二人とも手術を拒否している。特に牧村瑞人に至っては保護者である瑞人の父と連絡さえ取れない始末だ。
主治医の内山聖美は瑞人の父を説得する必要があったのだが聖美はこともあろうに瑞人の父の説得を小夜に押し付けるのであった。そしてこのことが大きな事件に繋がっていく。
アツシと瑞人は手術前の検査のためMRIでの検査を受ける必要があった。大人でも検査には閉口するものだが、子供のアツシはMRIに入るのを極度に怖がった。アツシは小夜に「歌を歌ってほしい」とせがむ。MRIの担当の島津は子供の容態を落ち着けるために歌を歌うことを許可する。そして小夜のアヴェ・マリアの歌声はMRIのモニターに不可思議な輝点(ブリッツ)を光らせた・・・
小夜の歌には何か不思議な力があるようだった。
検査終了後、アツシと瑞人にメンタル面での不安を解消するため、小児科(オレンジ病棟)と病院長の総意によりメンタル面でのケアを田口に依頼することになった。田口としては仕事が増えるばかりであるが、上からの指示のため到底断ることはできず、渋々子供達のために愚痴外来小児科バージョンを開設することになった(トホホ・・・)ただ、アツシと瑞人のみではレティノのためということが丸分かりであるため猫田師長の采配で小学五年生の田中秀正と高校二年生の杉山由紀を加えることになった。
そしてその日、瑞人の父の鉄夫から小夜のケータイにどういった風の吹き回しか手術の承諾書にサインをするから来るようにと連絡があった。サインを貰うために待ち合わせ場所に向った小夜は鉄夫にこともあろうに陵辱されてしまう。息も絶え絶えにその場を逃れた小夜は偶然通りかかった城先の車に乗せてもらい病院へと戻った。
そして、牧村鉄夫がバラバラ死体となって発見されたのはその日だった・・・
この捜査に乗り出したのは警察庁刑事局刑事企画課電子網監視室室長(長いよ・・・)から桜宮署に赴任した加納達也とその部下タマこと玉村だった。加納は「デジタルハウンドドッグ(電子猟犬)」と呼ばれており、コンピュータを導入した新しい捜査「デジタルムービーアナリシス(DMA)」を駆使し解決に乗り出す。
そして時を同じくして、ついにあの男、白鳥圭輔が東城大学医学部付属病院にやってきた! (前回も遅ればせながらの登場だったねぇ)
白鳥は東城大学医学部付属病院の近くにある碧翠(へきすい)院桜宮病院に不穏な動きがあるとのことで隠密裏に(っていっても自分からペラペラとしゃべっているのだが・・・)予備調査のために、ここにやってきたとのこと。
そして何故だかまた、田口と白鳥が知らず知らずのうちにタッグを組み、犯罪捜査に乗り出すのだっ!
更に警察庁の加納と白鳥は大学時代の同級生でもあり、白鳥・田口に加え、加納も交えた綿密なのかアバウトなのか、常人には全くわけのわからない捜査が繰り広げられていく。
果たして犯人は誰なのか?
何故死体はバラバラだったのか?
瑞人とアツシのレティノ手術はどうなるのか?
小夜の歌と冴子の歌の秘密は?
このあたりが愉快な仲間達(本人達は至って真面目)のメタ(メタメタ?)推理によって見事に解き明かされていく過程がなかなか読み応えがある。ロジカルモンスター田口とデジタルハウンドドッグ加納の噛み合っているようで噛み合っていないけど、何だか先に展開が進んでいく「会話で読ませる」物語の運びは前作同様秀逸である。
しかし、加納のデジタルムービーアナリシスの捜査&操作はどー見ても一昔前のマジンガーゼットなどの巨大スーパーロボットを動かしているとしか思えない感じっす・・・orz
そこかしこに、お笑い的要素が散りばめられており、反射神経的なオモシロさは十分に楽しめる。(謎の「ハイパーマン」は「イカレスラー」とかのノリで誰か作って見て欲しいっす)
ただ、事件そのものは解決するのだが、いまひとつ後味の悪い結末だったことは否めない(情状酌量の余地は多分にあるが・・・)。
本来殺されてもしょうがないと思われる人でもホントに殺してしまえば罪として問われてしまう。これはしかたないことであろう。
本書に登場する人物の中で杉山由紀という少女が登場する。牧村鉄夫と杉山由紀の対比により、作者は何かを訴えたかったのではなかろうかと深読み(浅い?)してしまった。終盤に杉山由紀が登場する場面でトーマス・マンの「魔の山」の最後のフレーズを思い出した。
人が生きていくってのは大変なんだねぇ・・・ (しんみり)
それよりも何よりも、本シリーズで一番の謎は姫宮は何者なのかってことではなかろーか(全編このパターンでいくのもアリだよねぇ)。
■他の方々のご意見(やっぱりGood!っぽい)
・まったり読書日記
・はちみつ書房
・HONG−KONG−CAT
・絵本と子どもと色々