りょーち的おすすめ度:
Google で検索すると「避暑地の猫」のテレビドラマは1988年の9月に放映されたようである。幼少の頃、そのドラマを全話みた記憶がある。その衝撃的な内容がりょーちにちょいとトラウマを残した。それほどインパクトの強い内容であった。
原作が宮本輝であることを知ったのは、かなり後になっての話しである。また、このドラマの主題歌も妖艶な雰囲気を手助けする要因であった。(ぐぐってみると「赤い華」錦城薫らしかった)
この避暑地の猫を最近再読したのであるが、やはり、ドラマ同様に衝撃的な小説であったことを再確認した。
避暑地の猫の冒頭部分は久保修平の独白から始まる。修平が話し始めたのは今から15年前の軽井沢の別荘で起きた忌まわしい事件についてだった。
今から15年前、修平の家族は別荘の管理人として軽井沢に住み込みで暮らしていた。修平の家族は父の卓造、母の加代、姉の美保との4人家族。
別荘の持ち主は東京の布施金次郎であり、毎年夏にはこの軽井沢へ妻の美貴子と娘の恭子と志津で夏を過ごしている。
卓造は足が不自由で通常の仕事に就けなかったところを金次郎に雇って貰ったという恩義があり、甲斐甲斐しく働いている。別荘番という仕事は非常に大変である。庭の手入れや部屋の掃除に始まり、別荘を維持するためのあらゆる仕事が存在する。
美貴子は使用人の布施家にあまりよい印象を抱いていない。特に母の加代には敵愾心を燃やし、ことあるごとに辛くあたっていた。
当然にして刑事達がやってきて、修平を問いただすのだが、事故ということでその場は何事もなく過ぎていった。
目撃者はいないはずであったのだが、別荘の窓から布施金次郎は修平の行為の一部始終を見ていたのだ。
金次郎といえば妻を失い落胆するもの思いきや、そんな素振りは見せない。そしてこの事件を機に、毎夏、この避暑地の別荘で布施家と久保家の間にある秘密が暴かれていくのだ。軽井沢の霧と姉の美保に心を狂わされる修平と修平を取り巻く布施家、久保家の見せるもう一つの顔が暗鬱な世界を作り出していく・・・
いやぁ、この小説、凄いっすよ。宮本輝の小説で「いい人」が一人も登場しない小説ってこの「避暑地の猫」くらいだな。一欠けらの救いもないほどのとした小説である。「青が散る」とは対極にあるね。
この小説の持つ妖しい空気を作り出しているのが修平の姉の美保である。ドラマで見た際にも、主役であるはずの修平(今は亡き高橋良明)よりも存在感があった。
美保の一挙手一投足に修平は目を奪われる。この年代の少年・少女が持つ負のエネルギーが読者に重くのしかかってくるのだ。そして、ネタバレになるが、この美保と加代が巡らす女同士の戦いは人間の醜さがストレートに伝わってくる。
この本を読むたびに「女性は恐ろしい・・・」と思ってしまう。
この「避暑地の猫」もりょーちの保有している小説の中でも再読率が高い一冊だ。
■他の方々の感想
・LOOSE RAP 避暑地の猫 / 宮本輝
・----- insomni@ ----- | BO: 『避暑地の猫』(宮本輝) 救いを感じたとのこと。(うーむ)
・oceanus: 避暑地の猫