マイクル クライトン Michael Crichton 酒井 昭伸 早川書房 (2006/03)
| マイクル クライトン Michael Crichton 酒井 昭伸 早川書房 (2006/03)
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りょーち的おすすめ度:

こんにちは、日色ともゑ,です(嘘です)。(本文と全く関係なしです)。
本書プレイではナノテクノロジーの脅威についてクライトンが警鐘を鳴らすって感じの一作に仕上がっている。
最近でこそナノテクノロジーという言葉を一般的な人々が耳にする機会も多くなってきているが、実際のところナノテクノロジーがどういうものなのか(りょーちを含めて)あまり分かっていないっぽいと思われる。
本書の中では血管を通り抜けることができるほどの微細なナノマシンがついに開発され、実証実験もほぼ終わり、実用化のフェーズにまでたどり着いているよーになってますってとこまで技術が進んでいる。
ザイモス社に勤めるジュリアはザイモス社のナノテクノロジー分野の事業部長。現在、ナノマシンの開発を手がけており得意先への大掛かりなプレゼンテーションが終了したところである。一方ジュリアの夫であるジャックはプログラマーであったが現在失業中の身で、小さな子供3人の面倒を自宅で見ているが職探しの方は相変わらず進んでいない。仕事が忙しいのもわかるが最近のジュリアの様子が何か変である。怒りっぽくなっているし、家族のことは全く無視されているのだ。
プログラマー時代にジャックが開発していたものはエージェントと呼ばれる小さなプログラムが創発的に動き、学習し処理を行うようなものだった。所謂人工知能のちょっと進んだようなプログラムだ。ジャックが手がけたプログラムが既存のエージェントと決定的に異なる部分はプログラムに「捕食者」と「被捕食者」の関係性を持たせることにあった。
ある事件をきっかけに会社をクビになっていたジャックは妻が現在携わっている大型プロジェクトのナノマシンに陽の目を見ることがなかったと思われた自分のエージェントプログラムのアルゴリズムが利用されていることを妻から知る。
妻はプロジェクトが大詰めの段階になり、日々かなり忙しくなり子供やジャックに構うことも殆どなくなり、性格も攻撃的になってきた。
ザイモス社のナノマシンは実は軍事目的として米軍で利用する目論見で作られたもので、周囲を「見る」機能も付加されていた。そんな中、ジャックはザイモス社より突然力を貸して欲しいと申し出を受け、砂漠に存在するザイモス社のプラントまで足を運ぶ。
そしてそこでジャックが見たものは、コントロール不能なナノマシン群であった。ナノマシン群は「スウォーム」と呼ばれていた。スウォームはザイモス社の人間が作り出したものより数段進化している。
しかもスウォームは人間を「被捕食者」と認識し攻撃を企てていたのだ。微小なナノマシンであるため少しの隙間でさえ容易にもぐりこむことができる。ジャックにはナノマシン自体が集合体としての集合意識を持ち始めているようにも思えていた。
次々と犠牲者が出る中、どうにかして、スウォームを駆逐しようと試みるジャックであったがこのプロジェクトを管理するリッキーは頑なに駆除ではなく「生け捕り」にしたがっている。
しかし被害は収まるどころかさらに拡大し続ける。製造プラントのプログラマーで生物学者のメイと共にジャックはスウォーム駆除に乗り出す。そしてついにスウォームの棲みかに潜入を始めるのだが、そこでジャックたちが見たものとは・・・
いやー、恐ろしい小説である。もしこんなことが起こったらもう絶対に人類は終了である。本小説でまともな登場人物はジャックとその子供達、そしてメイだけであろう。他の人々はスウォームに踊らされているっぽい感じ。
「バイオホラー&コンピュータウィルスの脅威&家族愛」ってわけのわからないジャンルだが、近い将来本当に起こりそうなリアリティのある科学小説を久々に読んだ。
本書を読んで、実際に人間vsナノマシンという戦いが起こってしまったら先ず人間には勝ち目はなさそうだなと痛感した。恐ろしい・・・
Foxmovies で映画化も予定されているという情報もあり、今後かなり話題となる小説だろう。
■作者のホームページ
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