りょーち的おすすめ度:

こんにちは坊屋三郎です(嘘です)。
帰ってきてはいけない奴が帰ってきてしまった・・・
前作「溝鼠」で読者の脳にシンナーを直接撒き散らし溶かす勢いの残忍さを見せたあの溝鼠(ドブネズミ)こと鷹場英一が復活してしまった!
前作「溝鼠」では同性も羨むほどの美貌を持つ実の姉「澪」を愛してしまった英一が澪に利用され宝田組と死闘を繰り広げた。そして人非人である実の父親、源治と愛する姉、澪にも嵌められ絶体絶命の危機に陥った。
最終的にこの闘いで鷹場英一は宝田組のヤクザと父源治を殺害し、業火の中に置かれた澪をも助けず、最終的に一人生き残った。強烈な自己愛のみで生きていた英一、澪、源治の家族でただ一人生き残った英一はその後マニラへと逃げたのだった。
今回の「毒蟲vs溝鼠」はその2年後の物語である。
英一の東京での仕事は「復讐代行業」であった。「幸福企画」という会社を立ち上げ、依頼人からの依頼内容がどんなに理不尽な逆恨みであっても金さえ貰えば、殺人以外のあらゆる手法を駆使し相手が最もダメージを受けるやり方で任務を遂行した。
その手段を問わない残忍な復讐に誰もが震え上がり、日本の裏社会でさえ鷹場と係わり合いになることは避けられていた。どんなに暴力的な力を持つヤクザでさえ、鷹場の通り名である「溝鼠」を口にすることさえ憚られる存在だった。
溝鼠こと鷹場は宝田組との抗争で死んだことになっていたのだ。
マニラへ逃亡して2年後、溝鼠の存在も伝説として噂されるに留まっており、現在幅を利かせているのが「スペシャルサポート」という別れさせ屋であった。
スペシャルサポートを率いるのは通称「毒蟲」と呼ばれている大黒という男だ。毒蟲の呼び名は誰もがその存在を忌み嫌うことから名づけられてもいるのだが、大黒の場合は別れさせるための手段に文字通り「毒蟲」を使うのだ。「毒虫」ではなく「毒蟲」というところにより不気味さを感じさせる。
大黒は「サソリ」「ムカデ」「タランチュラ」をはじめとし、あらゆる毒蟲を自ら飼育し「彼ら」をターゲットに向けて解き放つ。蟲たちの持つ毒性は人を死に至らしめるほどの殺傷能力がある。彼らを操り別れさせ屋の任務を遂行し、のし上がってきた。
大黒が別れさせ屋という奇妙な職をはじめたのにはある忌まわしい事件がきっかけだった。大黒には数年前、志保という恋人がいた。その志保の様子がおかしいことに気づき、隠密裏に興信所に志保の調査を依頼したところ志保は木内という男と交際していたという事実を知る。自分以外の男と交際していた事実を突きつけられ愕然とする大黒。しかも木内という男は志保が5年前に婚約していた松田という男が婚約を解消させられ、志保を大黒に奪われたことへの腹癒せに、木内に金を渡し、大黒と志保の仲を引き裂かせたことを知る。
別れの原因を作った木内と自分を捨てた志保を許せなかった大黒は木内と志保に復讐することを誓い、富田が経営する「スペシャルサポート」に入ったのだ。しかし、復讐の対象となる木内はヤクザとの抗争で既にあっけなく命を落としたことを知る。自分の手で復讐できなかったことを悔やんだが志保と木内へ依頼した松田への復讐は忘れていなかった。志保と松田には覚醒剤中毒者を使い、重傷を負わせることに成功し、とりあえずの復讐を果たし自分の中でひとつの区切りをつけたのだ。そして自分を追い込むように大黒は更に非道な道を走り続け、今ではスペシャルサポートを富山から引継ぎ、「毒蟲」として裏社会からも畏怖されるまでにのし上がってきたのだ。
そんな中、大黒は富山から「木内が実は生きている」事実を聞く。そして木内という名前は偽名で本名は鷹場英一、通称「溝鼠」であることを知った。大黒は改めて木内こと鷹場英一への復讐心を再燃させた・・・
大黒は「別れさせ屋」のビジネスの現在のターゲットである豊島直美と佐伯の仲を引き裂く仕事を遂行しつつも鷹場への怒りで我を忘れそうになる。
一方鷹場は東京へ戻ってきて「幸福企画」の代わりに「青い鳥企画」という新会社を立ち上げ復讐代行業を続けていた。
「青い鳥企画」には国光というサディスト。元外科医の肩書きを持つ教授。兎に角人を殴らないと禁断症状に陥るタイソン。醜女の富子が主なメンバーである。
大黒率いる「スペシャルサポート」のメンバーはデッドボールを人に故意に投げつけることに快感を覚える元高校球児の球児。小卒でコンプレックスの塊で、相手を罵倒することにかけては異常な才能を持つ鉄吉。相手がどんな老婆だろうとレイプできるという大五郎がメンバーであった。
そして、大黒と鷹場が佐伯というどうしようもない男を巡り、相対することになる。それは壮絶な地獄絵図の幕開けでもあった・・・
いやー、恐るべし新堂冬樹。本書のタイトルどおり「毒蟲」こと大黒と「溝鼠」こと鷹場の一騎打ちである。相変わらず読んでいるだけで吐き気を催す描写が満載である。
きっと、この「毒蟲 vs 溝鼠」の任意の1ページを切り取ってGoogle Adsenseを表示させると公共広告しかでてこないに違いない。それほど、不健全な有害図書である。
暴力そのものに似た力を本書には感じる。
読みどころは一度は鷹場に敗れた大黒が鷹場を仕留めるために依頼した協力者の登場だろう。前作の「溝鼠」を読まれた方は意外な人物の再登場に驚くであろう。
そしてスペシャルサポートと青い鳥企画の各メンバー同士の対決も見ものである。鉄吉の罵詈雑言をあなたは受け止めることができるか?
相変わらずの新堂冬樹節を目の当たりにし、次回作が出たら再度買っちゃうなと思った。
■他の方々のご意見:(みなさん、気持ち悪がっている?)
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毒蟲vs.溝鼠|本を片手に徒然と・
吉本新喜劇Pルーム :エンヤコラ書評 新堂冬樹2連発!「黒い太陽」... (毒蟲vs.溝鼠にも言及されてました)