マイクル コーディ Michael Cordy 内田 昌之
徳間書店 (2001/03)
売り上げランキング: 311,091
りょーち的おすすめ度:
こんにちは、仲谷昇です(嘘です)。
マイクル・コーディといえば
イエスの遺伝子 が印象深い。本書「クライム・ゼロ」も、イエスの遺伝子と同様に遺伝子工学をベースとした良質な近未来小説として仕上がっている。
「クライム・ゼロ」ってカタカナで書くとなんだかわからないが、「crime zero(犯罪ゼロ)」ってことである。犯罪がないってのはよいことだが、そこは作者がマイクル・コーディってことで一筋縄では行かない。
2008年、カリフォルニア州のパロ・アルトにある、バイロベクター・ソルーション社では、暴力犯罪の90%以上が男性によるものであるという調査結果を受けて、国家レベルのある実験を密かに行っていた。それは服役中の犯罪者に対する遺伝子手術である。本プロジェクトを統括するバイロベクター社のアリス・プリンス、FBI女性長官マディラン・ネイラー、カリフォルニア州知事パメラ・ワイスという女性3人が静かに進める極秘プロジェクト「良心」は男性の中にある暴力的な遺伝子を改変し「治療」することを目的としていた。
一方、FBI特別捜査官ルーク・デッカーは服役中の死刑囚であるカール・アクセルマンを取り調べていた。取調べ最中にアクセルマンはデッカーに「オレはお前の実の父親だ」と告白する。同様するデッカーはアクセルマンの言葉を無視した。あと僅かで死刑に処せられる身であったアクセルマンの戯言と取り合わなかったのだが、後日アクセルマンが自らの睾丸を切り取って自殺したことを知らされる。「父親である」という衝撃の告白が気になりバイロベクター社にいる元恋人のキャシー・カーに誰の髪の毛かを告げずにアクセルマンとデッカーの遺伝子調査を依頼する。キャシーの調査結果によると親子関係が認められ、そしてFBIの犯罪者DNAデータベースのうちの一人と一致したと告げられる。更にキャシーはこの中の遺伝子が改変されていることに気づく。
アクセルマンはアリスたちの実験として遺伝子を改変させられていたのだ。そして、バイロベクター社にあるスーパーコンピュータTITANIAの管理の下、プロジェクト「良心」の次のステップであるプロジェクト「クライムゼロ」に進み始める。
大統領選挙に立候補したパメラ・ワイスは遺伝子操作により暴力犯罪者を減少させることに手ごたえを感じていた。実際カリフォルニア州の犯罪率は激減している。パメラは選挙活動で今まで密かに実験を続けていたことをついに民衆へ告げる。食品安全衛生上も問題ないことを実証し、パメラは民衆から圧倒的な支持を受ける。
一見良いことばかりに見えるこのプロジェクト「クライム・ゼロ」だが、暴力犯罪を誘発する遺伝子を強制的に組み替えることにより、アクセルマンのように突然死んでしまう場合もあり、バイロベクター社が密かに経営するメキシコの孤児院でも思春期を迎えた少年が突然死する事故が起こり続けていた。
男性のみが感染するこの「クライム・ゼロ」は空気感染により次々と宿主を獲得していくのだ。アリスは全世界の主要空港に「クライム・ゼロ」を解き放ち世界中の男性を感染させることを画策する。そしてついに全世界に「クライム・ゼロ」が解き放たれてしまった!
キャシーとデッカー、そして全世界の人々はこの危機を如何に乗り越えるのか?または「クライム・ゼロ」に屈してしまうのか?
ネイラー達は暴力犯罪の9割は遺伝子の所為であり、それを改変することで、平和な未来を気づき上げようとしていた。そしてテロメアの長さにより時限爆弾的にウィルスを感染させ発症させるという記述は遺伝子学の全く分からないりょーちにも説得力のある説明のよーに感じた。
実際にまだ犯罪者でない人間の遺伝子をも変えて淘汰しちゃおうって発想は飛躍しすぎなんじゃないかなー。マイノリティ・リポートをちょいと思い出したよ。この話しの設定が2008年ってことを考えると、もしかして本当にそういう遺伝子組み換え技術も、直ぐに完成してしまうのではなかろうかと思う。で、これが完成しちゃったりするとどーなるか? 「暴力的思考を持つ犯罪者が全くいなくなるからよい?」。マイクル・コーディは最後の章でこの仮説についてひとつの可能性を提示している。このコーディの視点が実に素晴らしい(あんた、偉いよ)。
しかし、「クライム・ゼロ」って題名なのに、ネイラーとプリンスとパメラの行動が「犯罪」だと思われる・・・
更にどーでもいいが、作者の名前は「マイクル・コーディ」でいいのか「マイケル・コーディ」なのか微妙に気になった。(カタカナにしている時点で正解とかないんだけどね)
訳者:
内田昌之翻訳部屋
■他の方々のご意見:
・
スケールのデカさは流石なり! クライム・ゼロ|いい女・できる男は燃え尽きない!!・
つれづれ赤城山日記 : クライム・ゼロ