平谷 美樹
角川春樹事務所 (2000/11)
売り上げランキング: 195,567
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おすすめ度の平均: 




りょーち的おすすめ度:

扱われているテーマが非常に壮大である。未来の小説のようでもあるし、過去の小説でもある。主題は「神」についてである。本書は第1回小松左京賞の受賞作でもある。小松左京の小説から鑑みれば第1回に相応しい内容だと言える。
本書のテーマは「神は存在するか?」という「神探し」の旅についての物語である。
題名となっている「エリ・エリ」とは新約聖書で書かれているイエスが発したと言われる言葉で「我が神、我が神、なぜ私を見捨てたもう」(エリ エリ レマ サバクタニ)」 から来ている。
主人公の榊和人は東北の小さな町の教会の神父。時代は21世紀の半ば過ぎ。人類は神への帰依を忘れ、ありとあらゆる宗教が形骸化しつつあった。榊も神父の身でありながら神の存在を半ば疑い始めており、自分が神父として不適格であることに気づき始めていた。
地球の知的文明はとどまるところを知らず、他の惑星へとコロニーを増やしつつあり、近場である月や火星の基地を建設し木星にもその足を伸ばし始めていた。
人類は無人探査船による地球型惑星衛星の発見のためにデータ収集を行う目的の「ホメロス計画」は、アイデンティティを失った人類が地球外にそのよりどころを求める自然な流れであった。
と、序盤は非常にいい感じで話しが進んでいく。りょーち的には「お、これはあのダン・シモンズのハイペリオンシリーズに匹敵するほどの渾身の一作か?」と途中までは思った。
しかし、どうも後半の展開に疑問を持つ。主人公と思われた榊があっけなく死んでしまうところくらいから「むむむっ」と首を傾げ、更に、精神科医でインプラントを埋め込まれた記憶を持つタウト。お前、どーしてそうすぐに騙される? 8時だよ全員集合で、「志村ー、後ろー」と叫ぶ小学生並みに声を出して突っ込みたい衝動が湧き上がる。
天才科学者クレメンタインに至っては「恋人のことはもういいじゃん」と突っ込みたくなったりもした。
「レスレクティオ」「黄金の門」と続く3部作のはじめの作品。
「エリ・エリ」にのめりこむことができた人にはきっと続編を読むに値すると思うが、どうもすんなりと世界に入っていくことができなかったのは何故なのか。与えられた命題に対してあまりにも証明が長い数学の定理のような印象をこの作品に受けた。
比べるのは酷だとは思うが、先に挙げたダン・シモンズの「ハイペリオン」シリーズを再読したほうがよいのかなあとも思った。
#そのうち、気が向いたらもう一回くらい読むかもしれません・・・