貫井 徳郎
講談社 (2002/06)
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おすすめ度の平均:
貫井流アンチ本格?
私は結構好きです。
人間の書き方がイイ
りょーち的おすすめ度:
貫井徳郎の明詞シリーズの第一弾。「鬼流殺生祭」。こういうのも貫井さん、得意なんですねー。ちょっとビックリっす。
物語は日本の明治時代にちょっと似ている「明詞」という架空の元号の時代で起こる不思議な殺人事件の話し。京極夏彦を読まれている方はこんな感じで読み替えて貰えば分かりやすい。
・九条惟親 → 関口巽
・朱芳慶尚 → 中禅寺秋彦(京極堂)
または、藤木稟を読まれる方は「陀吉尼の紡ぐ糸」や「ハーメルンに哭く笛」「黄泉津比良坂」などに登場する下記の人物とキャラが一致するかもしれない。
・九条惟親 → 柏木洋介(新聞記者)
・朱芳慶尚 → 朱雀十五(盲目の探偵)
と、まあ、いずれにしても分かりやすい構図となっている。これはどーゆーことかといえば、コナン・ドイルで言うところのホームズとワトソンの関係がそのまま踏襲されていると言ってもよい。推理小説はこうでなくっちゃ!(ダメ?)
朱芳慶尚はちょっと病弱でひきこもりがちで書生っぽい生活を送っている。一方、九条惟親は江戸から明治(明詞)にかけてすごいスピードで変革している今の日本にワクワクしている若者といった感じであろうか? 九条は公家の出身で金銭的にも恵まれており、いわばおぼっちゃんである。朱芳も前相模藩主、朱芳慶斉の三男である。朱芳は医学および蘭学に精通しており、アメリカの医師ヘボン先生(あの、ヘボン式ローマ字の人かな?)の弟子として医術を学んでいて英語・ドイツ語・フランス語も堪能らしい。でも、医者の不養生ってわけでもないが病弱である(うーむ)。
事件は、九条の友人の武知正純の家で起こる。武知は結婚を控え留学先のパリから日本に戻ってきた。相手のお蝶は親縁で祖母の霧生カツが命じた許婚である。許婚とはいえ、二人は互いに好意を抱き、晴れて結婚することになっていたが、結婚直前に霧生カツが死亡する。霧生カツの葬儀に呼ばれた九条はそこで今まで見たこともない不思議な葬儀を目の当たりにする。
「なんと神様」「えれんじゃ」「おてんぺんしぁ」などと今まで聴いたこともない言葉が飛び交う中不思議な葬儀は終了する。そしてその葬儀が終わって直ぐに、なんと、正純が何者かに殺されてしまうとの情報が入ってきた。
正純の殺された状況を確認した九条はこれは密室殺人であると感じた。誰も侵入不可能と思われる部屋で正純は懐刀のようなもので刺されて絶命していた。警察の介入を拒む武知家から九条はこの事件の解決を依頼される。九条はこんなときに役に立つと思われる朱芳慶尚に相談に行くが朱芳は「関わりを持つべきではない」と事件の調査から手を引くように進言される。九条が調査を進めていく際にも武知家では次々と人が死んでいく。
事件解決のために動くのを頑なに拒んでいた朱芳慶尚は九条が「この事件に既に取り込まれている」ことを示唆し、重い腰を上げ武知家に乗り込む。
そこで朱芳慶尚が見せた超絶の推理とは? そして事件の背後に潜む武知家の謎とは?
そして更に朱芳慶尚は過去の隠蔽された驚くべき事件をも詳らかにしてしまう。
全てが明かされたとき、武知家は、九条は、そして朱芳はどのような行動を取るのか・・・
ちょっと気になったのは、朱芳慶尚がたとえ話として出したシュレディンガーの猫とかラプラスの悪魔の話し。朱芳慶尚の博学さをもうちょっと別のベクトルから示して欲しかったかも(地頭の良さって知識とは別のところにあると思うので・・・)。
でも、かなり面白く読めました。偶然にもこの事件の背後にある出来事は最近読んだある本と非常に近いところにそのヒントがありました。新しい○○も根競べ(?)で決まったようですし、
シンクロニシティを実感できたよーな気がしました(意味分かりますかねー)。