ラス・マンチャス通信
posted with amazlet at 09.01.06
平山 瑞穂
新潮社
売り上げランキング: 111723
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おすすめ度の平均:
不条理な世界へ迷い込みたいときにお勧めそんなにいいか?
なんじゃこりゃあ?
3月で絶版・文庫化未定!!
呪われた世界の呪われた家族
りょーち的おすすめ度:
装丁買いだったのだが結構面白かった。
あ、でもこの本の全ての意味が分かって「あー、面白い小説だった」ってことではないっす。面白かったのは「こんな奇妙な話しを書くひとがいるんだー。この人の頭の中はどーなってるんだろー」という意味での面白さだった。
装丁は「上田早夕里:火星ダーク・バラード」の田中達之氏によるイラスト。これがインパクト大だった。更に「 第16回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作 」という宣伝文句に目がとまったので、「あー、もうこれは買っちゃうんだろーなー」と思いながら本屋を一周して本屋から出たらやっぱり買っていた(^^; (まあ、いいのだが・・・)
で、読んで見たらやっぱり装丁どおりのおどろおどろしさが展開されていた。この奇妙な世界観はなんなのだろう?
ホラーなのかなんなのかジャンルも曖昧な感じであり、H.P.ラヴクラフトのクトゥルー神話のような「なんだこりゃ」感に、 H.R.ギーガ(H.R. Giger) のよーな「奇妙奇天烈感」をミキサーで引っ掻き回したような印象の小説だな、こりゃ。
ここで「ラス・マンチャス」は「ラ・マンチャ」の複数形で云々というよーな解説を述べてもしょーがない。
ストーリーもあるようでない。(いや、ないようであるのか?)
・畳の兄
・混血劇場
・次の奴が棲む町
・鬼たちの黄昏
・無毛の覇者
の5章からなるこの小説。
主人公の「僕」は5人家族で、父と母と姉と僕と「アレ」と一緒に住んでいた。「アレ」とはこの家族では「いないもの」として扱わなければならない。「アレ」のやることはいつも滅茶苦茶で、ある日姉と留守番していたときにうっかり「アレ」を殺してしまう。姉と一緒に裏の森へ「アレ」を捨てに行く。戻ってきた家族は「アレ」の存在を忘れてしまったかのように振舞うが「僕」は施設へと収容されることになった。
施設の中での生活は窮屈なもので、女の子とも出会えない。それなりに「良い子」にしていた「僕」はその後施設を出てレストランで働くことになるが、レストランの中でのいじめ(のようなもの)のため、ここも退職。
ほんで、どうも怪しい灰の降る町へ行き、「ゴッチャリ」と呼ばれるかくも怪しい灰を除去するお仕事をイナガワさんと始める。灰の降る町には人をも喰ってしまうよーな「次の奴」と呼ばれる巨大な蜘蛛がいたりする。住人達はみんな「僕」には無関心であるが、ひょんなことからこの町で一番綺麗な女の子の由紀子とイナガワさんとの共同生活が始まったりする。
更に、イナガワさんの始める新しい仕事でセールスをすることになった「僕」はひょんなことから別れた姉と遭遇する。しかし、姉はいとも恐ろしいモノと結婚していたよーである。更に姉や謎の画家「小嶋さん」などがまたもや登場し、物語はクライマックスへと向う。
ってストーリー話してもしょうがないんだけど。というのはこの物語はストーリー重視ではないような気がしている。「こうしてこうしてこうなってその結果こうなった」的な物語ではない。
非常に難解で、りょーちはおそらく作者の意図するところの47分の1も(中途半端だが)理解できなかった。でも、ちょっとヘンな世界観を覗くことができた気がする。
あれだ。中井英夫の「虚無への供物」や竹本健治の「匣の中の失楽」とか夢野久作の「ドグラ・マグラ」とかそういった本を読んで「うーむ、よくわからんかったが、凄い」って印象に非常に近いと思う。(でも、ちょっとディープなので一般ウケはしないかも)
そういう意味ではラストはぐちゃぐちゃのままで終わっても良かったよーな気がする(ダメ?)。
もしこれが漫画の原作になるのであれば、作者は諸星大二郎か梅図かずおか大友克洋あたりにお願いしたい(無理?)。
平山瑞穂さんは1968年生まれの立教大学卒業の
■1968年生まれの作家さん年代が近いので、ぜひとも頑張ってほしいところです。
ってことで、平山瑞穂さんは次回作をぜひとも読んで見たい作家の一人としてりょーちの中にインプットされちゃいました。次回作にも期待大です。